断章 3つの試練編 第15話 第一の試練
ペルセウスの部屋から戻る途中。カイトはゼウス達に呼び出されたというアルト達と出会った。
「ああ、カイトか・・・どうした?」
「試練で少しペルセウスに会ってきた・・・あ、そっか。ペルセウスには先に会ったのか」
「その様子だと、お前はゼウス神に先に会ったようだな」
どうやらアルト達はこれからゼウスとの会合に臨むようだ。おそらくアルト達にはペルセウスへ先に<<不死者殺しの鎌>>を返却させて、カイト達には先に試練を言い渡す事にしたのだろう。
「ああ・・・これから試練に向かう所だ」
「そうか・・・っと、そうだ。貴様に一つ伝え忘れていた事があってな・・・耳を貸せ」
「ん?」
アルトの何処かイタズラっぽい顔に、カイトが首を傾げる。とは言え、耳をかせ、と言われたのでカイトが彼の口元に耳を近づけると、彼はカイトにある事を教えてくれた。
「・・・え゛・・・マジ?」
「ああ。実はあれはそう言う意味でな。大切な事なのにすっかり忘れていた」
「いや、まあ、有り難いっちゃあ有り難いんだが・・・良いのか?」
「構わん。万が一の場合には俺の名代も務めてもらうつもりだったからな」
「はぁ・・・まあ、サンキュ。じゃあ、そっちも頑張れよ」
「ああ、貴様もな」
とりあえずカイトもアルトもお互いに話すべき事を話し終えると、二人は片手を上げて別れて歩き始める。そうして少し歩くと、すぐに待合室に戻ってこれた。が、中にはどうやら客人が一人、やって来ていた。それはクレスだった。
「おじゃましています」
「ああ、クレスか・・・どうした?」
「いえ、父達の事ですから、また無理難題を申したのだろう、と。一応アドバイスを」
「それは・・・良いのか?」
「ええ。助言程度ならば何も申されないでしょう」
クレスはそう言うと、カイトに試練の詳細を語る様に促す。どうやら来たばかりらしく、聞いている途中たったようだ。そうして、カイトは試練の概要についてを話す事にする。
ちなみに、この際にカイトが許可を取るかの様にチラリと大鷲を垣間見たが、何も言うつもりは無いのかそっぽを向いていた。この程度ならばやはり良いのだろう。
「なるほど・・・そういうことでしたら、ポセイドン様の試練には言うべきことはありませんね。父の試練も同様・・・が、ハデス様の試練ならば、アドバイスが出来るでしょう」
「助かる。実はあのケルベロスだけはどうすべきか悩んでいてな。下手をすると殴り殺しかねん」
どうやら案の定というかなんというか、クレスはケルベロスの対処法を知っていたようだ。それに、カイトも安堵の溜息を漏らした。実はここをどうするかが決まってから出発しようと考えていたのであった。
「手段は二つ。殴って殴って殴りまくって大人しく言うことを聞かせる。過日は私はこちらをやりました」
「意外とと言うかなんというか・・・結構暴力的だったんだな、やっぱり」
「ええ、まあ、お恥ずかしながら・・・」
カイトからの評に、クレスが少しだけ恥ずかしがる。とは言え、常日頃はやはりこの丁寧で紳士的な姿なのだろう。まあ、そうでなければケイロンに預けられた意味が無い。
「っと、それは別に致しまして・・・実は同時にもう一つが取れぬ故の非常手段だった、という事もあります」
「うん? ヘラクレス程の大英雄に無理な事があったのか?」
「ええ・・・実はお恥ずかしながら竪琴や音楽の類は出来ないのです。師を殴り殺してしまいまして、その所為でどなたからの師事を受ける事が叶わず・・・歌は歌えるのですが、そのトラウマもあり、どうにも音楽だけは苦手でして・・・」
クレスは恥ずかしげに、唯一の不得意を上げる。
「・・・なんか微妙に気持ちわかるな・・・」
「ご理解いただけて感謝いたします」
カイトの同情と言うか共感に、クレスが苦笑気味に頭を下げる。カイトも一部楽器を除いては音楽は苦手だ。これは彼の欠点の一つと言える事だった。
ちなみに、間違いの無い様に言っておくが、二人共音痴というわけではない。苦手意識を抱いているが故に、苦手というだけだ。
「っと、それで、ですね。そのもう一つの方法というのが、音楽を聞かせて眠らせる、という事なのです。どうにも子犬時代の癖なのか、冥府の番犬であるケルベロスは音楽を聞くと寝る癖があるらしいのです。しからば、眠らせている間に、横を通り抜けてしまえば良い。私の際には一人で行く事が義務付けられていましたので、どうしようもなく、という事です。ハデス様には許可を取りましたからね」
「なるほど。それなら、こちらには最適な人財がいるな」
カイトはクレスの言葉に、チラリとエルザを流し見る。彼女は人魚。天性の詩人だ。そして今でも時折竪琴を爪弾き、歌を歌っていた。特に最近は里全体の雰囲気が明るくなってきた事から、色々な歌を歌う事も多かった。練習は十分だろう。
そうして更に幾つかの助言を受けたカイト達は、いつまでも立ち止まる必要も無し、と立ち上がって出発することにした。
「じゃあ、助言、感謝する」
「いえ、ご武運を」
見送りに来てくれたクレスに対して、カイトが頭を下げる。そうして、一同は再び空を飛んで、山を降りる事にするのだった。
とりあえず山を下りたカイト達4人だが、すると麓に一つの神殿が見えた。それは屋根部分にハデスの紋章が掲げられた神殿だった。
「あれかな?」
『うむ。あれが、ハデス様の神殿よ。冥府に続く道を管理する祭壇でもある』
「ということは、あの先が、所謂あの世とこの世を繋ぐ三途の川、というわけね・・・」
大鷲の言葉に、カイトが降下しながらつぶやく。人が死んだ後には魂はそのまま輪廻転生の輪の中に還るわけではない。ああいった冥府や黄泉、ヴァルハラと呼ばれる所へと送られることになるのである。何処に送られるのかは時と場合による。近くの場合もあれば、その当人の想いに応ずる場合もある。
一度その一生で魂に刻まれた様々な想いを洗い落としてやらねば、次の魂として使えないのだ。洗い落とさねば魂に刻まれた記憶として、次の人生でもそれに影響されかねない。そうなれば、何時かは魂は記憶に押し潰されてしまう事になるだろう。
それは世界の望む所ではなかった。本来ならば無から有を創り出すかのように魂を新規に創り出せれば良いのだが、物質が魂や魔力であっても有限であることから、仕方がない事だった。
「それ以上近づくな! この先はハデス様が治められる神聖なる冥府への道ぞ!」
降下を続けたカイト達に対して、神殿の神官が大声で制止する。冥府への門に門番が居るとはいえ、神殿がある以上管理者が居るのは不思議ではない。と、そんな神官達に対して、大鷲が声を発した。
『神官たちよ。彼らは構わん。ハデス神よりの試練を受け、冥府へと入る所だ。それ故、儂を監視者として配された』
「ゼウスの聖獣様!? かしこまりました・・・ですが、番犬ケルベロスはどうなさるおつもりですか?」
『それは彼らが考えている』
「わかりました・・・では、お通りください」
どうやらカイト達が試練を受ける英雄だ、と理解した神官達は丁寧に頭を下げて道を譲る。神の試練に挑む者達は須く英雄として扱うべし。後に聞いた所によると、神官達はそう命ぜられているらしい。
『この先、しばらく進んだ所に、冥府と神界を別つ門がある・・・あまり騒ぎ立てるなよ。目には見えぬとて、死者達の魂が進んでいる』
「見えてたらどうなんでしょね」
大鷲の言葉に、カイトが少し悲しげに答える。確かに大鷲には見えないし、ティナ達にも見えていない。だが、カイトの目には死んだ者達の魂が捉えられていた。
そんなカイトに、大鷲が呆れ返った。神々でさえ死者の魂を見れる者は稀だ。ハデスがここを治めているのだって、彼が一番幽霊達が見えるからだ。
『ほとほと奇特な奴だ』
「わかってるくせに」
『やれやれ・・・では、殊更驚かせてやるな。すでに肉の器を喪い意志を持ち合わせているとは思えぬが、それでも生前は人の子であったのだ。労ってやれ』
「それはもちろん」
大鷲とカイトの会話が終わると同時に、一同は神殿の内部を歩き始める。そうして5分程歩くと、大扉の前に辿り着いた。そうしてこちらの姿を認めた扉を守る神官達が、口を開いた。
「英雄とならんとする者達よ。話は聞いている。心して、挑むが良い」
「あいよ・・・音楽なるけど、ちょっと我慢してくれ」
「!・・・かしこまった」
カイトの言葉に、神官達が少し苦笑に近い笑みを浮かべて頷く。おそらくクレスの入れ知恵なのだろう、と理解したのだろう。そうして神官たちが大扉を開けると、再び大扉があった。
とは言え、扉は別の部屋に通じているわけではない。この大扉は扉であり、同時に門だった。その先が、所謂冥府と呼ばれる場所なのであった。
そしてその前には当然、神話で語られる三つ首の犬、すなわち地獄の番犬ケルベロスがその威容を誇る様に、四足を踏みしめて立ちはだかっていた。大きさは20メートル程。体毛は黒。牙は鋭く、一噛みで人間なぞ両断出来るだろう。とは言え、やはり死者を慰撫する為か、その目付きは優しげだった。
『あれが、ケルベロス。冥府の番犬だ』
「でかいワンちゃんだな」
『抜かせ小僧』
「喋れるの!?」
カイトの言葉に応ずる様に、大鷲とは別の声が響き渡る。それは尊大ではあったが、同時に優しさも含んでいた。考えるまでもなく、ケルベロスなのだろう。
「えーっと・・・じゃあ、一つ提案。ハデス神の試練を受けたんだが・・・通してくれたりは?」
『ならぬ。我に下された主命は、主とその使者達、死者だけを通せという命だ。それ以外の命は受けていない。そして我に命令を下すのは主のみ。伝令でも受け付けぬ』
「ですよねー」
ケルベロスの言葉に、カイトがため息を吐いた。そもそも今回の一件ではケルベロスは自分でなんとかしろ、というのがハデスの命令だ。通してくれる命令は受けていなかった。
「じゃあ、エルザ。当初の予定通り、頼めるか?」
「はい」
カイトの要請を受けて、エルザが使い古された竪琴を取り出す。昔から愛用している品らしい。
『ほぅ。人魚か。見事な歌を聞かせてくれるのなら、オルフェの時の様に我もまた眠るやもしれん。やってみせよ』
「では、一曲差し上げます」
エルザは一つ深呼吸をすると、声と共に竪琴を爪弾き始める。エルザの口から出すのは言葉ではなく、音だ。澄んだ声同様の綺麗な音だった。
それは死んだ者達に安らかなる眠りを誘うための物で、穏やかであり、優しい音色だった。それはまだ人が言葉を持たぬ頃に歌っていた原初の歌とも言えた。
その原初の子守唄に促されて、ケルベロスがゆっくりとその身を地面に横たえていく。そうして10分もする頃には、ケルベロスの穏やかな寝息が聞こえてきた。それに、エルザは演奏を止める。
「ありがとうござました」
「・・・眠ったか」
「はい・・・では、起こさぬ様に密かに行きましょう」
一同は眠るケルベロスの横を、ゆっくりと起こさぬ様に進んでいく。と、そうしてカイトが通り過ぎる瞬間、三つ首の一つが小さく彼にだけ聞こえる様に声を発した。
『後で礼を言ってくれ。生者にも死者にも安らかな眠りを与えられる良き音楽だった、と』
「あいよ」
カイトが少し小さく苦笑して、その言葉に応ずる。ケルベロスが眠っていたのは事実だ。だがやはり癖で眠っただけだからなのか、眠っていたのは音楽が奏でられる間とその後少しの間だけ、なのだろう。
エルザ以外は気付いていたのだが、実は通り過ぎる頃には目は閉じたままだが、ケルベロスは目を覚ましていたのである。一人が竪琴を奏でたまま、他が通るのが本来の方法だった。
まあ、それでも通してくれたのは、綺麗な音楽のお礼、という所だろう。そうして、一同は門を潜って薄暗い岩の足場の上に出る。冥府に入ったのである。
「・・・死を撒き散らす吸血姫と呼ばれ、それでも冥府に行った者は居ないわ」
「怖いか?」
「・・・ええ」
カイトの問いかけに、エリザが頷く。当たり前だが冥府とはあの世の事だ。どんなオドロオドロしい所なのか、と怖くても致し方がない。
「生者と死者は分かたれている。死者が悪さをしてくることはないさ」
「それでも、あの世とは怖いものよ」
「まあ、それはそうか」
エリザの怯えを見て、カイトが苦笑する。ティナは冥府へ足を運んだ事があるので怯えは無かったし、エルザは逆に死者は労る為に恐れる事をしなかったが、やはり誰よりも死に近かったエリザには怖かったようだ。
「まあ、そう言っても・・・ほら。下とかは綺麗だぞ?」
「あら?」
カイトの言葉に促されて、エリザ達が岩の道から横を覗き込む。すると、下は花園で、更に先には川――ステュクス――が見えた。上だけ見れば闇の中に岩の足場があるだけだったが、少し下を見れば一変する幻想的な光景だったのだ。
「あの岩の前・・・誰かおるのう。竪琴を弾いておる様じゃな」
「神話通りならば、オルフェウスだろうな」
この花園の中に竪琴を持つ男となると、もはやオルフェウスしか居ないだろう。というわけで、カイト達はそこまで歩いて行く事にする。幸いにしてこの岩の足場は花園に続いており、迷う事はなかった。そうして歩いてそこまで行くと、竪琴を弾いていた男が竪琴を止めて、こちらを向いた。
それは優しげではあるが、同時に深い憐憫を湛えた男だった。だが、その憂いの表情が彼の美を高め、この場に相応しい幻想的な美しさを醸し出していた。その前にあった石は綺麗な女性の石像で、これがオルフェウスの伝承に名高きエウデュリケの成れの果て、なのだろう。
「私へのお客人。こんな所に、如何な御用ですか?」
「ギリシア神話に名高きオルフェウス殿とお見受けする・・・違いませんか?」
「ええ・・・それで、如何な御用ですか?」
「ハデス神よりのご命令により、貴方をオリュンポスの大神殿へと召し出す為に参りました」
「では、先ほどの音色は貴方の・・・」
どうやらオルフェウスにも先ほどのエルザの音楽は聞こえていたらしい。やはり音楽家として少しの興味はあったようで、憂いとは別の感情が顔を覗かせる。とは言え、それもすぐに消えると、彼は首を振った。
「・・・申し訳ない。私はもう二度と、妻の側を離れる事は出来ません」
オルフェウスはそう言うと、再び石化した妻に向き直って竪琴を爪弾き始める。その音色は悲しげであるが、同時に妻への深い愛情を含んだ美しい音色だった。
「・・・これが、神話に語られるオルフェウスの竪琴・・・」
思わず心奪われて涙を流したエルザが、その見事さを称える。誰かを愛した事のある者ならば、涙を流さずにはいられない音色だった。そうしてしばらくの間、一同はその場に佇む事になる。あまりに綺麗な音色に動けなくなったのだ。
「お客人。何時まで待たれても、私はここから動く事はありません」
「・・・いや、すまない。あまりに見事な音色故、動けなかった」
「そうですか。ありがとうございます・・・貴方達も、愛する人を大切になさってください。私と妻の様にならないでください」
カイトの言葉に、オルフェウスが苦笑混じりに感謝を述べる。とは言え、動いてくれる事はない。そしてカイトも先の音色を聞かされては、彼を動かす事は憚られた。
「これはダメだ。動かすのが無理だ」
『では、諦めるか?』
「というよりも、ハデス神に文句言っとけ。アホか、ってな」
『くっ・・・』
カイトの言葉に、大鷲が笑う。実はこれはハデスの目論見通りだった。実はこれは知恵を試す試練と言いながら、試しているのは人情の方だった。
もしこれでオルフェウスを強引に連れてこようものならば、その時点で失格だったのである。悪辣だし後出しも良い所だが、こういった我が儘を許されるのが、神様だ。諦めるしかない。が、ここで予想斜め上を行く行動を見せた女が居た。まあ、ティナである。
「ふむ・・・であれば、妻も連れて行けばよかろう」
「・・・はい?」
「別に解呪ぐらい出来るじゃろ。多少厄介じゃし薬を使って内部を賦活させてやる必要もあるじゃろうが・・・所詮これは呪いの類。解呪すれば済む話ではないか」
「・・・え?」
全員――大鷲とオルフェウスさえ含める――が言っている意味が理解出来ず、首を傾げる。
「なんじゃ、考えた事もないのか・・・これはそもそもお主に下された試練であろう? であれば本来、妻であるこの女の身を封ずる事は無理があろう。それは神々と言えどもルールを違えておろう。お主の身が封ぜられるならまだしも、コヤツが封ぜられる意味がわからん。若干ルールを恣意的に使っておるだけじゃな。であれば、今までの超過分を含めて、もう一度やり直すぐらいは出来るじゃろ」
『この女・・・何を言っているのだ?』
ティナの言葉にぶっちゃけるまでもなく意味不明だ、と言う大鷲に対して、一筋の希望が見えたオルフェウスは違った。眼の奥にあった闇が消えて、光が戻っていた。
「本当・・・ですか?」
「解呪は兎も角、薬を調合出来れば、の話じゃぞ? その薬にしても作るのは簡単じゃが、材料を手に入れられるかどうか、というレベルじゃ。そして残念ながら、行けるじゃろうコヤツは難しい。些か難しい話じゃから、もう少し先になるじゃろうな。それで良いのなら、やろう」
「・・・私が手に入れてみせましょう。その暁には、貴方方の望み通り、オリュンポスの神々の前で我が琴の音を響かせてご覧にいれましょう」
ティナの言葉に対して、オルフェウスは自らが行くと志願する。愛する妻の手をもう一度握れるのだ。あれだけ綺麗な音色を奏でる彼がためらうはずが無かった。
『出来るのか?』
「んー・・・ぶっちゃけ、出来る、って言ってるんだから、出来るんじゃね? 正直、こいつルール無視のチートも良いところだからな。で、手段は問わないんだろ?」
『・・・む、むぅ・・・』
神々の課したルールを無視するのも甚だしい事だが、その神々自身が手段は問わない、と言っているのだ。それ故、大鷲は笑顔のカイトに何も言えなくなる。流石に神様でもない彼が前言撤回です、とは言えない。認めるしかなかった。
「まあ、それなら良かろう。ゴルゴン三姉妹はコヤツ一人で行くだけじゃし、別に問題無いしのう・・・うむ。であれば、エリザ、エルザ。お主らも材料集めに助力せよ」
「ああ、そうしておいてくれ。オレはちょっと行ってゴルゴン三姉妹をなんとかしてくる」
「その頃には、解呪の用意を整えておく事にしよう。解呪だけはお主の力を借りねばならんからな」
「はいよー」
ティナの言葉に、カイトが背を向ける。解呪にカイトの力が必要、というのは彼の持つ武器の中には解呪の力を高める道具も存在していて、それを使うのが一番確実だからだ。
というわけで、主体となるのはカイトであるのだが、そのカイトにはゴルゴン三姉妹との対決がある。一緒に居るわけにはいかない。そうして、カイトは大鷲を連れて、一人冥府から脱出する事にするのだった。
お読み頂きありがとうございました。




