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何時か世界を束ねし者 ~~Tales of the Returner~~  作者: ヒマジン
第2章 あの日の事編

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断章 第3話 桜舞い踊る季節の出会い

 天桜学園高等部入学式当日。入学式で首席として入学証書を受け取る事になったティナは、リハーサル等の打ち合わせの関係でカイトよりも少しだけ早目に会場入りしていた。ちなみに、カイトもティナに引っ張られて既に登校はしている。

「む?お主が学生代表か?余はユスティーナ・ミストルティンじゃ!今年の主席じゃ!」

 入学式が行われる大学の会館のすぐ近くにある役員待機室にて、えへん、と胸を無い胸を張るティナ。自ら主席と公言するなぞ普通ならば嫌味と取られかねない発言なのだが、ティナの場合はともすれば小学生とも間違われかねないちんまい身体とそれに見合ったかなりの童顔で愛嬌のある顔立ちのお陰で、小さい子が頑張ったから褒めて、と何処かねだっている様な感じであった。

 ちなみに、彼女は全教科満点(フルコンプリート)という名門天桜学園の歴史上初となる圧倒的好成績により入試を突破した為、学年主席として、入学証書受け取りを任されたのである。

「はい。初めまして、私は新入生総代を仰せつかりました、天道 桜です。」

 ティナが自己紹介したため、桜も頭を下げて自己紹介を行う。ちなみに、桜のティナの初印象は変な喋り方をする可愛い娘だな、であった。当たり前である。

 桜が総代に選ばれたのは、次席が総代を務め、首席が証書受け取りを務めるという通例に従ったものであった。そうして、桜はティナの容姿が金髪碧眼であることを見て取ると、ちょっとだけ気になって問い掛けてみた。

「えーっと、あの・・・ミストルティンさんは海外の方なんですか?」

「む?そうじゃ。えーっと、どこじゃったか・・・おぉ、イギリス系アメリカ人じゃ。」

 短くない黙考の後、ティナが自らの設定を述べたので、桜はそれでいいのか、とかなり不安になる。そうして何処か不安そうな桜に、ティナが笑って更に設定を告げる。

「いや、すまんすまん。とは言え、実は帰化しておってのう。数年前二親を事故で失った際、余は此方に留学しておったんじゃが、そこのご夫婦の御好意での。親戚もおらんしの、日本も気に入っておったし、どうせなら帰化しておくか、と帰化したわけじゃ。で、今も居候させて貰っておるんじゃ。」

「え・・・」

 笑いながらあっけらかんと天涯孤独を語るティナに、桜が目を見開いて驚く。まあ、これは異世界との文化風習の差なので、仕方がない。

「あの・・・ご冥福をお祈りします。」

「む、すまんの。痛み入る。」

 どう反応して良いのかわからなかった桜は、とりあえずは社交辞令的な事を告げる。対して特段感慨の無いティナは、それを事務的に受け取った。

「あ、あなた達が今年の新入生?」

 と、そうして声をかけてきたのは、ショートカットで快活そうな上級生らしき少し小柄な少女であった。後に二人は知るが、彼女は今年の生徒会長―桜の一代前―との事であった。

「はい。」

「うむ!」

「はい、そっちの金髪ちゃんは元気があってよろしい。で、これからの流れなんだけど・・・」

 そうして始まった打ち合わせとリハーサルは、つつがなく終了する。そうして、残す所後新入生達の到着を待つだけとなった。

「はい、じゃあ、お願いね。」

「はい、承りました。」

 そうして、桜は生徒会長との会談を終了する。生徒会に新入生として所属して欲しい、と桜とティナは頼まれ、ティナが他にやることがあると断ったため、桜だけが所属する事になったのである。

 新入生を入れるのは次期生徒会役員の育成の為で、出来れば優秀な主席と総代の両方所属してもらいたかったというのが、実を言うと生徒会の本音である。

 実は天桜学園では生徒会長のみは選挙で選ばれ、その他の役員は才能で選ばれるのである。その為、一年次から優秀と思しき生徒は積極的に登用し、経験を積ませるのが通例となっているのであった。これは一条が率いる―この当時はまだ先代だが―部活連合も同じである。

「すまんの。どうしても私用の方で優先せねばならん事があってな。少々多くの者に関わる事じゃから、今辞めるわけにもいかんのじゃ。」

「ああ、いいわよ。何か知らないけど、大切なら、それを優先しなさい。」

「うむ、助かる。」

 詳しい理由を話せぬと言って断ったティナが少しだけ申し訳無さそうに謝罪したのを見て、生徒会長がジェスチャーを交えて軽く告げる。

「さて、じゃあ、入学式まではまだあるから、解散してていいわよー。」

「はい、では。」

「うむ、時間には戻ってくる。」

 許可が出たので二人は外に出て、そこで丁度桜は楓と出会った。

「あ、楓ちゃん。」

「桜、終わった?」

「ええ。あ、そういえば、今年の主席・・・あれ?」

 楓にティナを紹介しようとした桜だが、ふと目を話した隙に彼女が居なくなっていた。

「あれ・・・居ない・・・」

 桜が周囲を見渡すが、何処にもティナの影も形もなかった。実はこの時、ティナはカイトと合流して、学園施設を全て、魔術的に精査していたのである。魔術を使っている二人が見つからないのは当たり前であった。

「どうしたの?」

「いえ、今年の主席の方を紹介しようか、と・・・海外の方だったんですよ。」

「ふーん・・・」

 別に留学生は珍しくないので楓は対して興味が無い様で、そっけなく話が終わる。そうして、再びティナが戻ってきたのは、入学式の少し前であった。




『では、これにて新年度入学式を終わります。新入生の皆さんは、この後担任の教師について、教室へと向かってください。』

マイクを通して、入学式の終了を告げる生徒会役員の声が響いた。入学式では誰もが新入生総代である桜の美貌と、主席であるティナの可憐さに心奪われる事になったのだが、それは置いておく。そうして、一同は担任と名乗った雨宮に連れられ、教室へと向かうのであった。

「天音 海徒だ。よろしく頼む。」

 そうして、教室に入って自己紹介の時間となり、桜は驚愕に目を見開いていた。まさか、もう会うことは無いと思っていた男の子が、よもや普通に同じクラスとなっているとは思っても見なかったのだ。

「ど、どうしましょう・・・」

 自身の自己紹介が終わり、桜は珍しく、一人で大いに焦る。自分の趣味は秘密なのだ。それを見られた相手と再会すると思っていなくて、 パニックになってしまったのである。まあ、それでも自己紹介を難なく終わらせるのはさすがだが。

「えっと・・・どうしましょう・・・とりあえず、お礼、言いに行く、しかありませんよね・・・」

 若干頬を染めた桜は、意を決して立ち上がる。そうして向かった先は、何故か同じクラスになれた事を喜ぶカイト一同の所だ。

「あの・・・」

「ん?ああ、確か、天道さん、だったな。どうした?」

 桜が声を掛けた事で、クラス中の視線が集まる。まあ、カイトの周囲には学年でも有数の美男美女が複数集まっており、その上に名家天道家の令嬢の桜までが話しかけたのだ。注目が集まるのも無理は無いだろう。

「あの・・・先週は有難う御座いました。」

 ぺこり、と頭を下げる桜。それに、カイト達がきょとん、となる。

「・・・お前、何かしたか?確か本家筋だろ。」

 きょとん、となったカイトがソラに問い掛ける。そのカイトの言葉遣いというか、雰囲気に、桜が少しだけ違和感を感じる。

「いや、どう見てもお前じゃね?」

「いや、オレは記憶に無いが・・・と言うか、先週だとお前呼ばれたけど、サボったんだったか。」

「たはは・・・まあな。っと、そっか。一応、久しぶりになるのか。数年ぶり、天道。」

「・・・え?」

 平然と数年ぶりと言われた桜は、目を見開いて驚く。確かに、一週間前にあった所なのだ。もしかして絡まれている所を助けたのは無かった事にしたいのか、と思い二人の顔を見るが、そこには意味がわからない、という疑問しか無かった。

「あれ?モチっと前に会ってた?」

 きょとん、となったソラが問い掛ける。とりあえず桜はこれを演技と思う事にして、それを肯定しておいた。

「あ、いえ!数年ぶりです、天城さん。」

 ソラの差し出された右手を握り、桜が努めて平然とした顔で告げる。実はあの後、ソラは洋菓子店とカラオケで総額1万近く奢らされた為、桜達を助けた事の印象が薄く、助けたのが誰か完全に忘れ去ってしまったのだ。それに、楓の荷物を持って行った為に桜とは殆ど話さなかったので、桜の方が印象に残らなかった事も大きい。

「なんじゃ、知り合いじゃったのか。」

「あ、ミストルティンさん。」

「うむ。おぉ、そういえば余の居候先というのが、コヤツ・・・カイトでな。既に数年来の付き合いじゃ。今は、コヤツの隣の部屋に居候しておる。」

 と、その居候、という言葉に周囲が一気に反応し、耳目が集まった事が察せられた。

「ちょ、何!お前ら一緒に暮らしてんの!」

 気になった一人が勇気を出して聞けば、そこから先は早かった。一気に雪崩れるようにカイト達の周囲に人だかりが出来、まれに見る美少女や美男子との接点、と質問大会似た集まりが開催される。

「あ・・・」

 質問大会は殆ど積極的な生徒だけが質問するに終わり、結局、桜は真相を聞けなかった。質問大会の間もカイトの口調や仕草を観察していた桜は、小さな刺の様な違和感を拭えぬまま、自席に戻る。そうして、この時から、桜はカイトを時折、観察するようになったのである。




「うんがー・・・授業むずい・・・」

「まあ、それが普通だろうな。何ならまた講習やろうか?」

「マジでやばくなったら頼むぜ、親友・・・」

 うだー、とソラが自身の机に突っ伏し、カイトがそれを見て笑みを浮かべる。その笑みは何処か傲慢な物で、桜が出会った過日の何処か人懐っこい笑みとは異なっていた。

 入学式から数日後。この日もカイトの言葉を盗み聞きして、桜は違和感を強める。入学式から暫く観察を続けた桜だが、話し方、仕草、その他幾つもの点に、過日の素の顔を覗かせたカイトとの僅かな違和感を感じたのである。

「双子・・・だったんでしょうか・・・」

 桜が小さく呟く。その端正な顔は顰めっ面で、必死に考えているようであった。

「でも、彼が長男で確か一人いる弟さんは小学校なんでしょ?双子なんて居ないはずよ。」

 と、クラス分けでは残念ながら別クラスになってしまった楓が、桜のひとりごとに反論する。

「うーん、にしても、良い題材ね。」

 カイトの口調や仕草があまり気にならないらしい楓は、どちらかと言うとソラとの絡みの方に関心を寄せていた。彼女は今も密かに二人を窺い見ては、時折小さなネタ帳にアイデアを書き込んでいく。

「・・・アイデアが湧くわ。」

 一瞬、桜は楓のメガネフレームが煌めいたのを幻視する。桜はまだこの時はこの域まで達せていなかったので、そんな幼なじみに苦笑するだけだ。

「あはは・・・でも、どっちなのでしょうね。」

「・・・確かに、気になるわね。天城ヘタレ受け・・・天城はあれで絶対何処かでへたれるわ。あ、でも天音が受けもありね・・・」

「・・・楓ちゃん・・・そう言う事じゃなくて・・・」

「冗談よ。」

 楓が真剣に呟いた言葉に桜が呆れるが、楓は平然と冗談と言い切る。目が冗談では無かった事を物語っているが。

「あの後はなんて?」

「やっぱり人違いじゃないか、って。」

 そう、あの質問大会の後も桜は気になってカイトに尋ねたのだ。しかし、返って来た答えは知らない、の一点張りである。

「でも、おんなじなんですよね・・・」

 そうして、桜はこの数日間で唯一の共通点を思い出す。それは、唯一つ。何処か知らぬ所で平然と人助けをやってのけることだ。それは、注視していればわかること。だが、注視しなければ、わからなかった。カイトは普通にそっと人助けをしている事が多かったのだ。助けられた側も気付かぬぐらいに、そっとである。

 そうして、そんな人助けの後、助けられた側が違和感を感じている様を見ているカイトの顔は、何処か過日の人懐っこい笑みと同じ、柔らかな陽性の笑みであった。それだけが、桜に過日の人物がカイトと同一人物であると確信させていた。

「まあ、でも。一角の人物ではあるようね。」

 楓が言う。それに、何処かぼーっとしていた桜が現実に引き戻された。

「成績優秀で、眉目は十人並み。絡んでいる面子が面子だからあまり注目されないけど、あれも間違いなくイケメンに入る部類よ。と言うか、学園に提出された彼の実力テストの成績見た?」

 入学試験の成績が上から第8位だった楓も、ティナの空いた枠を利用して桜の誘いで新入生代表として生徒会に入会していた。その為、次期生徒会役員を探す名目で学園に提出された中学時代の成績表を閲覧できたのだ。

「全教科満点、でしたね。入試では明らかに間違えない様な問題で間違っていたらしいです。先生方が首を傾げてらっしゃいました。明らかに、意図して間違えている、と。」

 桜が楓の言葉でカイトの入試の採点をしたらしい生徒会の顧問の教員のぼやきを思い出した。それが、尚更カイトのプロファイルを困難にしていた。

 真面目そうで、不真面目。しかし不真面目かと思えば、真面目。冷酷かと思えば、優しい。甘いかと思えば、冷淡。そんな不可思議な二面性に、桜は知れず、心惹かれる。彼は一体どんな人物なのだろうか、桜は心の奥底で、そう思う。

「もう少し、観察してみます。」

 そう言う桜の声がちょっとだけ熱が入っていた事は、誰も・・・本人さえ気付かない。それに、楓が頷いた。

「そうね。C組にもちょっと面白そうな二人組を見つけたから、こっちはお願いするわ。」

 結局答えの出ない堂々巡りの疑問に、桜が観察を続ける事で決着を見たのである。そうして、その観察は結局、桜さえ監視する本当の理由に気付かぬまま、エネフィアに転移するまでずっと、続くことになるのであった。




「はぁはぁ・・・追い詰めたわよ・・・」

 時は変わって現在。校舎の屋上に魅衣が息を切らせてカイトの前に立っていた。何故か学園の半分程の生徒と、3割程の教師から追われる事になったカイトは校舎屋上のフェンス際まで追い詰められていたのだった。

「さて、な。」

 追い詰められている筈のカイトの顔には、何処か悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。

「良し!行け!」

 誰かの号令で、一気に包囲網が狭まる。そうして、カイトが捕えられようとしたその時、カイトはジャンプで後のフェンスを乗り越えた。そうして彼はフェンスを越え、更に向こう側の足場に着地する。

「おい!危ないぞ!」

「じゃあ、皆、部活棟で会おうぜ・・・頼みます!」

 目を見開いた教師の注意にカイトが犬歯を見せて笑い慇懃無礼に一礼すると、後ろを振り返りながら左手を振るった。

「あ、カイト!それ卑怯!」

 当然こんな面白そうなイベントを逃すはずがなかったユリィが、カイトの使った物を見て思わず叫ぶ。

 カイトが使ったのは、表面に奇妙な刻印がなされた鎖だ。鎖に刻まれた刻印は光輝き、それが魔術的な品物である事を伺わせた。それを隣の部活棟の屋上にまで伸ばして、カイトは鎖を足場に一気に校舎の間を駆け抜ける。

「あ、待て!足場があるなら行くわよ!」

 そう言って魅衣が一気にジャンプして、カイトが渡る鎖の前に着地。そうして着地して、カイトが平然と鎖の上を渡るのを見て、自分も行けると踏んで一気に鎖の上に踊りでた。

「あ、魅衣!ダメ!皆も行っちゃダメ!」

 そこで、更に魅衣に続こうとした生徒たちを、ユリィが必死になって止める。

「え?」

 そうして、勢い良く飛び出した魅衣だが、鎖の上を数歩も行かない内に足を滑らした。

「あ・・・」

 悲鳴を上げることさえなく、魅衣は真っ逆さまに落下していく。終わった、彼女は走馬灯を垣間見ながら、そう思った。だが、落下は直ぐに止まった。

「カイト!」

「っつ!行け!」

 ユリィの言葉より少し早く、魅衣の落下に気付いたカイトが後を振り向くや、左手に巻きつけた鎖を勢い良く射出。魅衣の身体に巻きつけて、落下を阻止した。

「ふぅ・・・」

「カイト!ちっさい子が真似するからダメ、って何時も言ってるでしょ!」

「いや、わりわり。つい、熱中しちまった。」

 鎖の上で、ユリィの小さな怒号が響く。それにカイトは魅衣を引き上げながら、謝罪した。そうして魅衣を引き上げたカイトは、真っ青な魅衣をお姫様抱っこの要領で抱えると、再び校舎側の屋上に戻った。

「あ、ありがと・・・」

 涙目で真っ青になり、腰を抜かした魅衣がカイトに礼を言う。

「今度からは足場を確認してから、駆け出せよ。」

 ぽんぽん、と魅衣の頭を優しく叩くカイト。その顔は、かつての桜が見た陽性の笑みであった。

「で、オレはなんで追っかけられたわけだ?」

 さすがにこの状況から逃げようと思わなかったカイトは、魅衣に事情を問い掛ける。それに、魅衣が事情を説明するのであった。




「桜が、オレを?何の話だ?」

「あ、やっぱお前気付いてなかったのか?」

 説明が終わり、ソラがカイトに問い掛ける。それにカイトは少しだけ呆れて答えた。

「普通に考えて、オレを監視してたならオレに気づかれないように細心の注意を払うだろ。お前が気付いてオレが気付かない、という事があり得てもおかしくない。」

「んー、まあ、それもそっか。」

 言われたソラは少しだけ釈然としないが、それもそうかも、と納得する。それにカイトが頷いて続けた。

「はぁ・・・で、なんであんな大人数になってたんだ?」

 カイトが追いかけっこを停止したので、この一件の本来の目的を知らない面子や興味ない面子は既に立ち去っていた。なので、過去形なのだ。

「いや、成り行きで・・・つーか、そうだ!天道さんと付き合ってるのか!」

 カイトの問い掛けに、クラスの男子生徒が照れて答え、更に身を乗り出して問い掛けた。

「は?何故そうなる?」

「あの反応を見たら誰だってそう思うよ!」

 カイトの小首を傾げる様を見て、女子生徒が同じく身を乗り出して告げる。それにカイトは若干引きつつも、平然と嘯いた。

「そんなの知るわけないだろ。まあ、救った時に近くに居たから、ちょっと色々な。それで赤くなったんだろ。」

「え・・・あ、そっか。そういえば天音達が迎えに行ったんだっけ・・・」

 表向き、カイト達のパーティは街で宴会をしていた為、連絡を受け取って桜達を迎えに行ったという事になっていた。なので、カイトの言葉を聞いた生徒たちがはっとなって勘違いだと思った。服がボロボロになっていたから、うっかり着替え等を覗かれたのだろう、と思ったのだ。

「はぁ・・・今度からは先に桜に聞いてから、追っかけてくれ。」

「あ、あはは・・・み、皆帰りましょ。」

 カイトの呆れた表情に、若干済まなさそうな女子生徒一同が我先にと立ち上がり始める。そうして、去って行く生徒たちを見送り、最後にカイトとユリィが残った。

「ねえ、カイト。なんで付き合ってますって言わなかったの?」

「まあ、日本だと一夫多妻はあまりいい顔されないからな。桜の風聞にも関わる。」

 カイトはそう言うが、実は桜を考えてが大きい。そもそもで関係を明かすかどうかはまだ話し合っていないので、勝手にバラすのはやめたのである。

「ふーん、まあ、日本だとそうなのかもね・・・でさ、ホントに気付いてなかったの?」

「さて、な。」

 ユリィの何処か楽しげな笑みを浮かべた問い掛けに、カイトははぐらかして立ち上がる。そうして立ち上がったカイトの顔は何処か、悪戯っぽい笑みが浮かんでいたのであった。

 お読み頂きありがとうございました。

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