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何時か世界を束ねし者 ~~Tales of the Returner~~  作者: ヒマジン
第6章 神無月の神々編

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断章 インド遠征編 第19話 神の目

 カイトが結界に捕われていた丁度その頃。インドラ達はそれを一望出来る場所に集合していた。そうして暫く待っていると、そこに剣神・上泉信綱が現れた。


「ああ・・・やはり剣神殿も来たか」

「<<雷軍神(インドラ)>>殿の求めとあらば、来ない道理は無い。それに、まだ何も教えてはいないが、我が弟子だ。どれほどの実力なのかは、興味がある」


 インドラの言葉に対して、信綱が静かな気配のまま、答えた。インドラはカイトが彼に弟子入りが認められたのを見て、カイトが客間に向かうと同時に彼に連絡を入れたのであった。

 信綱は人の世に出た時にこそ上泉信綱と名乗ってはいたが、その実は神様だ。ならば普通に日本の八百万の神様が使う超長距離転移術も使えたのである。なので、カイトの戦闘能力に興味があった事もあって、宴会を一時中座してこちらにやって来たのである。


「・・・剣神殿に敢えて問い掛ける。あの男の武芸はどうだ?」

「確かに、俺の下で秘奥を極める事の出来る程の腕前ではあるが・・・剣技という意味では、但馬守にも劣る。五郎や蔵人に比べれば、もはや見る影もない。あれらは人類でも稀に見る剣豪。それに比べるまでもない」


 インドラの真剣な眼での問い掛けを受けて、信綱はある人物を例に出して答える。但馬守とは、所謂、彼の流派である新陰流を受け継いだ柳生石舟斎の事だ。更に彼が続けたのは、彼の弟子の中でも四天王と呼ばれた疋田 景兼(ひきた かげとも)丸目 長恵(まるめ ながよし)の事だ。

 どれもこれもが、歴史に名を残した大剣豪達だった。それに、カイトは遥かに劣る、と言ったのである。だが、信綱は更に続ける。


「だが・・・剣術や戦術、こと戦事に関する事では、あれらを遥かに上回る・・・剣技と言う意味でならば、あれらには勝てん。おそらく試合ならば100戦やって、30戦勝ちを得られれば良い所だろう。だが、剣を使う術、戦いに勝つ術、生き残る術であれば、おそらくあれらでさえ、遠く及ばん。殺し合いでなくとも戦闘になれば、あれが100戦やって98の勝ちを上げる」


 信綱はたった一度の戦いで、カイトの武芸に関する才能を見抜いていた。それ故に彼は誰よりも、それこそカイトに十数年の月日の鍛錬を施した彼の師達よりも、正確にカイトの武芸を言い当てる。その上で、彼は歴史に名を残した剣豪達よりも、剣術家としての腕前が高い事を認める。

 剣術と剣技は違う。剣技とは、剣を用いた技だ。ならば剣術とは、剣を用いて戦う術、だった。この2つは彼にとって、似て非なるものだったのである。そうして、彼はその推測の理由を告げる。


「<<緋の房(ひのふさ)>>・・・あれはおそらく、あれが独自に編み出した技だ。源流となっているのは、宮本武蔵の二天一流と、かの姫君の巌流。それを魔力の扱いに合わせて更に発展させた武芸だ・・・それは確かに、俺でも感心する出来栄えに仕上がっていた。異世界に渡りどれだけの月日を重ねたのかは、流石に俺にもわからん。だが、優に100を超える年月で修練している事は理解した」

「俺達と同じく精神生命体となっていると見るか?」

「おそらく」


 インドラの問い掛けを聞いて、信綱は武芸の出来栄えから見た推測を述べる。彼らがまだ日本に居た時よりも遥かに、武芸の冴えが鋭かったのだ。そこから見た結論だった。そうして、更に信綱が講釈を続ける。


「・・・あの技の源流となる技は、おそらくそれだけで完成されている。おそらく片方は万を超える剣撃を一つに纏め上げた斬撃。もう一つは、斬撃を手繰り茨となす武芸。これらは単体で完成し、発展しようのないほどだろう。だが、あれはそれら2つを組み合わせた<<緋の房(ひのふさ)>>なる技を使ってみせた。あれはおそらく、万を超えた斬撃を茨で強引に収束させ、ただ一撃にのみ、特化させた技だろう。武器への影響を考慮せず・・・いや、自らの刀匠を全幅に信頼したが故に一切考慮せず、一撃に全てを込めた繊細に繊細を重ねた秘技と言えよう・・・俺の刀が折れるのも道理だ。あれほど研ぎ澄まされた一撃ならば、破壊される。剣技として一つを完成させるのではなく、剣術として、発展させる。まさに、弟子にするに相応しい」


 少しだけ笑みを見せて、信綱が断言する。彼ら永遠にも等しい生命を得た者にとって、武芸を受け継ぐだけの普通の弟子は要らない。ただ単に、自らの武芸を受け継いでもらうだけでは足りないのだ。

 なにせそれなら、開祖たる自らが出来る事だ。彼らに時間の限りは殆ど無い。自らの武芸をそのまま継承させる意味が無いのだ。ならば本当の弟子に望む事は、ただひとつ。自らの武芸を彼ら独自に発展させてもらう事だ。

 何故、彼らがそんな事を望むのか。それは幾つか理由があるが、最も大きな理由は、自らの武芸を更に高める為だ。それは、剣聖として頂点に立つ信綱も変わらなかった。相手あってこその武芸である以上、自らに比する敵が欲しいのだ。おかしな話であるが、彼らは自らの手で、自らの敵を育て上げているのである。


「俺の武芸が如何な発展を遂げるのか・・・こればかりは、俺にもわからん」

「へぇ」

「剣神殿でさえ、か?」


 信綱の言葉を聞いて、斉天大聖が顔に獰猛な笑みを浮かべて、更にスサノオが驚愕を浮かべる。彼でさえ見通せない、という事は地球では誰にも不可能だ、という事だ。そんな事はこの数百年どころか、彼らの長い人生の中で初めてだった。


「・・・素直に今までの人生で初めて、俺は卜伝では無く俺の下に来た事を嬉しく思う。あれは発展させるということにおいては、俺をも上回る。手に入れさえすれば、おそらくとんでもない場所へと飛び立つだろう。これで、我が武芸は更なる発展を遂げられる。まあ、あれの下で武芸を学ぶのも見てみたくはあったが、な」


 ふふ、と少しだけ笑みを見せて、信綱が告げる。卜伝とは、唯一彼が自身に比する、と認める剣豪の名前だった。その正確な名は、塚原 卜伝(つかはら ぼくでん)。彼が気まぐれに人の世に出た時に、如何な因果か同じく名を残した剣豪の名前だった。彼は一説には信綱の師とも言われる事もある人物だが、信綱は知己こそあれど、彼に教えを受けた事はなかった。

 彼は信綱とは違い、元は人間だった。だが、神に比する剣技を修めたが故か、身体の方も人間の枠を超えてしまったのである。それ故に今では剣鬼と呼ばれ、今も日本の何処かで剣技を磨いていた。

 カイトのやっている事を考えれば、卜伝の方が先に出会う可能性が高かったのだ。そうなれば、彼に弟子入りしていた可能性は低くはなかった。信綱の方が早かったのは、ひとえにカイトが表に出てきたのが8月で、9月が忙しかったからこそ、なのだ。

 そんな奇妙な偶然に、信綱は思わず、笑みを零したのである。そうして、そんな信綱は、最後に断言した。


「あれは、人類史において最上の武術の腕前を持つ男に育つ。あれは剣聖では無く、武聖として、名を残す。ありとあらゆる武芸に通じ、ありとあらゆる武芸を混ぜた混色の戦士。言わば、虹色。混ざりながら、一つである唯一の色。あれの魔力の色と同じく、虹の戦士として、育つだろう」


 信綱は二柱の神との戦闘を続けるカイトを見ながら、そう、結論付ける。言うなれば、彼もカイトの色の中に自らの剣技を入れたかったのだ。

 それは確かに自らとは方向性が異なるが、それでも自らでは到底到達出来ぬ武の頂き。それに憧れを抱くのは、やはり彼も等しく武芸者として、心惹かれたのであった。そうして、戦いに決着がついたのを見て、彼らは移動を始める。終わったのなら、説明ぐらいはしてやらないといけないからだ。


「と、言うわけです。いえ、父が非常に申し訳ない・・・」


 というわけで、それらの事を含めてインドラでは無く、その息子のアルジュナが簡単に語る。元々こんな事はやめて欲しい、と言うのが、彼の意見だ。とは言え、それを止められるか、というと、それは無理だ。なにせ相手は父親で、神々の長だ。如何に大英雄といえども、無理は無理なのである。


「出来ればこれで懲りてくれると良いのですが・・・無理でしょうね・・・」

「だろうな・・・」

「てめえらせめて下りて来るぐらいはしろや!」


 そうしてのんびりと成層圏付近で話していた一同だが、そこに雷が迸り、それに乗ってインドラが復帰してきた。少ししたら下りて来るかな、と思って下で待っていたらしい。


「あ、生きてた」

『ちっ・・・相変わらずしぶてぇ野郎だぜ』

「たりめーだ! あの程度で死ぬか! こちとらそこのデカブツの腹ン中入っても死なねえんだ! お前こそまた五行山の中に閉じ込めっぞ!」


 何処か残念そうなヴリトラと斉天大聖の言葉を聞いて、インドラが怒鳴る。まあ、この二人はそもそもでインドラのおかげで痛い目を見ているのだ。その恨みがあったのだろう。それに、少しだけ斉天大聖が振るえて答えた。


「やめて・・・あそこ暗くて怖い」

「じゃあちったー敬えや」

「まあまあ、インドラ殿。取り敢えずは、今は事の次第を終わらせる方が先だろう」

「ちっ・・・まあ、悪かった。これから先、西の奴らが動くにせよ動かんにせよ、どうしてもお前の実力を試しておく必要があってな」


 カルナの仲裁を受けて、インドラが取り敢えずは矛を収めてカイトに説明を開始する。やはり自らが心酔する相手の言葉はそれなりに聞ける様だ。


「ということなら、もう合格で良いのか?」

「ああ・・・お前もそれで良いよな、アンリ!」

「ああ」


 インドラの求めに応じて、今までずっと隠れていたアンリ・マンユことアンリが現れる。そうして彼は苦笑気味に、カイトに告げた。


「新たな英雄カイトよ。我らも貴様を認めよう・・・不意打ちとだまし討は我らの得手。非難してくれるな」

「敢えて悪神を名乗る相手に、それを指弾する程愚かでも無い」

「ほう・・・敢えて、と思うか?」


 カイトの言葉を聞いて、アンリが笑って問い掛ける。そこには自信があった様に見えたからだ。


「この世界に『悪』を決定する因子・・・つまり『悪の因子』は存在しない。唯一世界側が与える『神の因子』でさえも、そんな善悪は関係が無い。『悪』というのは人の見方に拠るものだ。『善』と『悪』なぞ世界が規定するはずがない。世界にとって『悪』なのは、自らを害する事だけだ。騙し討ち、殺人等のありとあらゆる悪徳。不倫、近親姦等のありとあらゆる背徳。全ては人が『悪』と見做しているだけのこと。世界がそんな些細な事を気にするはずがない。それは世界のシステムとして統一規格である以上、地球も変わらないはずだ」

「然り。それ故に、我らは神として、人の悪を誇る。それだけの事だ」


 カイトの返答を聞いて、アンリがまさに悪の聖者として、カイトの答えを非常に嬉しそうに認める。この世界に、『悪神』という存在は存在していない。いや、それ以前に、『悪者』という者さえ、存在していないのだ。それが理解出来てこそ、アンリが『敢えて』悪神と名乗っている、と言い切れるのであった。


「じゃあ、これで良いわけか?」

「ああ、ヴリトラ殿も感謝する」

『はんっ・・・別に俺は俺が戦いてえから、戦ったってだけだ』


 あぐらを掻いていたヴリトラが、アンリの言葉を聞いて肩を竦めた。照れ隠しでもなんでもなく、彼はただただ戦いたいから、戦っただけだ。なので気にするな、とそのまま述べただけだった。


「じゃあ、全員納得がいったな? じゃあ、戻って飲もうぜ。そろそろ日が昇る。飲みはじめるにゃ、いい時間だ」

「父上・・・お願いですから、朝っぱらから飲みまくる、なぞやめてください・・・」


 全員が納得したのを見て酒瓶を取り出して告げたインドラに対して、アルジュナが非常に疲れた顔で告げる。彼らは仕事だから飲む気は無いが、仕事までにはその飲み会に付き合わされる事が目に見えていたのだ。そんな彼に対して、カルナが告げる。


「まあ、そう言うな。インドラ殿もこれでも仕事はきちんとしている。多少の羽目を外すぐらいは多めに見て差し上げろ」

「そういうことそういうこと。それにアンリだなんだ、と客も来てるしな。饗すのもまた、神々の長の務めだ。これもまた、仕事だ」

「はぁ・・・まあ、それは確かにそうですが・・・」

「ヴリトラ。てめえも飲むだろ?」

『おう。たまにゃ、てめえの城で飲むのも悪くわねぇ』


 ため息混じりにインドラの屁理屈を認めたアルジュナを放っておいて、インドラが更にヴリトラに問い掛ける。何故かは知らないが、父と子よりも、宿敵同士の方が波長が合っているようだ。そうして、そんな一同は本当のインドラの自宅に戻って、再び酒盛りを始めるのだった。そんな酒盛りは数日の間、続いたという。




 その数時間後。カイト達が酒を痛飲していた頃だ。アレクセイはようやく合流した妻と子供二人に断りを入れて、真の英国女王であるフェイから頼まれた仕事に取り掛かっていた。


『カクテルをお持ち致しました。それと、こちらが、お客様のご注文された物になります。他の物は総支配人が処分してしまいましたので、これが最後の一つになります。申し訳ありませんが、もう一度、とは・・・』

『ああ、助かるよ。悪いね、無理を言って』


 アレクセイはホテルの内通者から、擬装用に注文したカクテルと、インドラが賄賂を握らせて提出した4人の姿が無い偽りの監視カメラの映像では無く、生の監視カメラの映像が入ったUSBメモリを密かに受け取る。

 彼らも賭けをしようとしていた関係上監視カメラにも映る様に自分達の姿を出していたので、科学的に削除するしか無かったのだ。

 今受け取ったのは、インドラの指示で完全に削除される前に内通者がコピーした唯一のマスターデータだった。と言っても、流石にインドラの行動が早かった所為で全てのデータをコピーとはいかず、極一部のなんとかサルベージ出来た情報、という所だが。


『うん、美味しい・・・ああ、さっき電話があってね。これを飲み終えたら、僕はもういかないと。お金はここに置いておくよ』

『かしこまりました。では、ご息女の活躍を楽しみにさせて頂きます』

『あはは、有難う』


 この場でも映像を確認する手段をアレクセイは持ち合わせているが、流石に不特定多数の目があるここで映像を確認するわけにはいかない。なので、一杯だけを飲み終えると、用事が出来た、と告げて、その場を後にする。

 そうして、移動した先は彼の宿泊するホテルだ。フェイが用意した部屋なので、防諜等の対策は完璧に施されていた。そこで映像を確認しようと思ったのである。


『・・・これは・・・うーん・・・流石にわかりにくいな・・・』

『あら、また仕事? 飲みに行ったんじゃ無かった?』


 動画を確認していたアレクセイに対して、後ろから一人の妙齢の女性が抱きついた。彼女が誰か、なぞ考えるまでも無いだろう。アレクセイの妻のリサ・フィルマだった。

 風貌はエリナというよりも、今よりも数年後の瑞樹に似ていた。それをショートカットにして人妻らしい落ち着きを少しだけ醸し出せば、彼女に近くなるだろう。まあ、全員親戚関係なので、似ているのは当然といえば、当然だろう。


『あはは・・・ギルは眠ったみたいだね。エリナはどうだい?』

『あの子なら、問題があるはずが無いわ。私と貴方の娘で、栄えあるフィルマの娘。何時何処にお嫁さんに出しても、おかしくない娘よ?』

『じゃあ、安心だね』


 リサの言葉を聞いて、アレクセイが微笑んでキスをせがむ妻とくちづけを交わす。そうしてリサもまた、アレクセイの見ているパソコンの画面を垣間見る事になった。

 そこに映っていたのは、顔の全貌も殆どわからない程に粗い映像だ。なんとか分かるのは、複数人の顔が映っている、という所だろう。それにしても顔は正面を向いておらず、その殆どが何処かの監視カメラの映像を切り取った物の様だった。

 これでは4人目が目的の人物、と判断出来るわけもなく、情報部が大々的に動くはずが無かった。それでも実物を見ているアレクセイなら何かわかる事があるかも、ということでフェイは彼に頼んだのであった。


『あら・・・粗いけど、多分元は良い男ね。エリナの彼氏にでもぴったりかしら』

『あはは・・・えっと、もしかして、ど真ん中のじゃ無いよね?』

『あら、そうよ? ちょっと俺様のぐらいが、あの娘には丁度良いわ。あの子もきっと、数年後にはガツガツしていくと思うもの。このぐらいの男でないと、逆にエリナがつまらないと思うわ』

『あ、あはは・・・』


 娘に対してはっきりと明言したリサに対して、アレクセイは苦笑するしかなかった。なにせ彼もがつがつと来られて、結婚する事になった――決して、リサの事を愛していない、というわけではない――のだ。

 アレクセイはそうはならないと思いつつも、真ん中の男ことカイトに哀れみの視線を送る。


『まあ、でも、父親として、彼はやめて欲しいかな』

『あら・・・見た目からして、彼が噂の<<深蒼の覇王(ディープ・ブルー)>>?』

『ああ、うん。多分そうだと思うよ。流石にどれも一瞬だけで全貌を捉えていないし、黒髪だからわからないけどね。もしかしたら、日本の別の神様かもしれない。まあでも、取り敢えず僕はそうだと思うかな』


 アレクセイの言葉を聞いたリサが少しだけ目を見開いて問いかけると、アレクセイは特段隠す事でも無い、としてそれを認める。リサは神宮寺家の女だったが、だった、という過去形だ。ここから、実家への流出は無い。

 それ故に、アレクセイは妻とは殆どの情報を共有していた。仕事柄もし万が一何か自分にあっても、エリナももう一人の子供である息子にも不具合が無い様に、という判断だった。


『・・・間違っても、戦ってみたいなんて思わないでね?』

『わかってるわよ』


 アレクセイの言葉に、リサが少し拗ねた様に答える。元々リサは気が強い上に、武芸の腕もかなりの物だ。おそらく近接戦闘で言えば、魔術含みでアレクセイを超えている。だが、それでも子持ちの親だ。無茶をしようとだけは、思っていなかった。


『まあ、取り敢えず陛下の見立ては正しいかな・・・まあ、ここまで画像が粗いと、僕の主観が入っている可能性は無くはない、かな』


 更に映像を確認していたアレクセイだが、何度かカイトが映ったカットを何度も確認して、取り敢えず一般人では無いだろう事を確証する。何故こんな所に、とは思うが、そこについてはさすがにわかることは無い。


『さて、じゃあ僕はこれを陛下に連絡すれば、仕事は終わり、かな』


 今回彼が命ぜられたのは、映像の人物がカイトか否か確認しろ、という事だけだ。本格的な調査をする為に、というだけの片手間仕事で良いのである。というわけで顔も殆どはっきりしていない粗い数カットからその可能性がある、という事で十分だった。

 なのでアレクセイは部屋に備え付けられた通信機を起動して、所定の手筈で、遠く英国に居る自らの主へと、情報を送信するのであった。

 お読み頂きありがとうございました。

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