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no.a  作者: ビックアロー
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第一話 ノアの一日

数話完結の短い小説を書いてみたいと思い、実際に近未来ものとして書いてみました。

「ですます調」の小説はあまりないので、書きながら新鮮な気持ちにはなりましたが、読者の方に受け入れてもらえるのか不安です。

不安がある小説ですが、皆さんに楽しんでもらえたら嬉しい限りです。

 宇宙。それは深い闇が覆う世界。空気も水も存在しません。

 その世界に何かが漂っていました。何が? 宇宙船が。

 

 部屋の窓から宇宙船が時折、噴射口から白い光が漏れたのが見えました。

 今いる部屋はわたしの部屋で、その部屋に「失星人しつせいじん」という星人がいました。そして、わたしはいつものルーチンワークをこなしているところでした。

 

「あなたはノア・プロジェクトのチームの一員で、隕石が来たら迎撃する担当なんです!」


「私は会社員?」


「違う! って…よそ見するな!」


 わたしは失星人さんの顔を強引にもわたしの方へ向き直しにかかります。

 すると、失星人さんは不満を露わにしていましたが、わたしに言わせれば、これは教育です。


「いいですか、あなたはノア・プロジェクトのチーム、チームの一員なんです!」


「OKー」


「本当に分かりました?」


「YES! YES!」


「YESは一回でよろしいので。あっ、そうそう。隕石の迎撃方法はマニュアルに書いてありますから。後で見てくださいねー!」


「OK―!」


「はぁ、毎度毎度同じことを繰り返すのは心と体に良くないよね…」


「そりゃそうだ。まぁ、あいつは記憶が一日しか保てないからな」

 

 わたし以外誰もいない部屋でその声を聞くと、白い壁と対峙しました。

 乙女の部屋に勝手に上がりこむとは…なんという不埒者。


「どちら様で?」


「……」


白い壁は返事をしません。それは至極、当然のことのように思えます。


消星人しょうせいじんさん。暇だからって姿を透明にして、わたしの部屋にいないで下さい。空気が汚れます」


 すると、消星人さんは白い壁に寄り添ったまま、姿を現しました。


「よっ!」


 わたしはその呼びかけに無視して部屋を出ました。


 今いるところは操縦室。

 ノアの搭乗員の命を預かる大切な場所です。

 前方には特注の強化ガラスの窓があって、操縦席に一人の星人さんが座っていました。彼は派星人はせいじんさんです。

 

 ノアの操縦は基本、自動運転に任せているので、操縦桿に一切、触らなくても良いのです。

 なんて快適。なんて優雅な旅。ああ、これがクルーズ船であれば良いのにと考えてしまうこともしばしばあります。


「おーい、知星人ちせいじん


 知星人、これ、わたしの名称です。名前ではないのであしからず。


「えっと、派星人さんではないですよね?」


「ああ、オレじゃないぞ」


 操縦席に座ったまま、男性向けのグラビア雑誌を読んでいた派星人さんはわたしに背を向けてそう言いました。


「では、誰?」


 わたしは怪訝な顔をして、首を傾げました。


「俺っちだよ!」


「ああ! 微星人びせいじんさんでしたか」


「俺っちはどこにいるか分かるかな?」


「えっと、探してもしょうがないか…」


 わたしは微星人さんを探すのを諦めました。ここには特に用はないので、暇つぶしにジムで運動しようと思ったところ…。


「ちょっ、しょうがないとか言うな! 傷つくぞ。その言葉!」


「なぁ、知星人?」


 派星人さんはわたしを呼び止めました。


「何です? 派星人さん」


「ああ、すまん。えっと、何だ。忘れた」


「失星人さんみたいな台詞はよしてくださいよ。本当に帰りますよ」


「ああ、思い出した。いつも、微星人は顕微鏡にいると思うのだが…」


「あっ! そうだ。忘れてた!!」


「おいおい、お前こそ失星人だよ。俺っちは仲間だろ!」


「派星人さん、顕微鏡ってどこにありましたっけ?」


「えっと、知らん。どっかにあるんじゃないの?」


「話聞けよ!」


「派星人さん、ないですよー」


「忘れ物って近くにあるものだな…」


 雑誌を閉じた派星人さんは目の前に顕微鏡があったことに気付きました。

 派星人さんから顕微鏡を受け取ったわたしは顕微鏡を覗くと、微かに動いている物体をキャッチします。微星人さんです。


「おはようございます。微星人さん」


「おっす。おはようさん。でどうよ最近は?」


「WHAT`S?」


「男だよ。どうよって言ったら男しかないじゃん」


「男なんていませんよ。っていうかこんな状況で作れるかー!」


「悲しいね」


「そうですね。悲しいですね。旅が終わったら、私たち永久凍結保存ですから。現世とはおさらばです」


「ノア・プロジェクト、いっそのこと、破綻にならないかなーなんて」


「そんなこと言っちゃマズイですって。すぐさま、永久凍結ですよ」


「悲しいね」


「ええ。悲しいです。いや、切ないです」


「ええっと、もうすぐ隕石群入るけど、準備いいかな?」


 派星人さんは船内マイクを使って、船内にいるノアの搭乗員たちに向かってそう伝えると、宇宙船は厳戒態勢へと突入しました。


「隕石にうじゃうじゃがいなきゃいいな…」


「知星人の言う通りだね。船内の電気が吸い取られてしまうから大変さ」


「おや、輝星人きせいじんさん? いつからいたんです。気づきませんでしたよ」


「いや、ずっといましたけど…」


「いつからです?」


「あなたがここに来てからずっと!」


「すいません。ずっと光っているのに気付かなくて…」


 わたしはそう言いかけ、謝罪の言葉を言う前に輝星人さんは頭で壁を叩き始めます。

 それを間近で見て、輝星人さんを勇気づける一言をかけなければならないなと実感しているわたしなのでした。輝星人さんがいるから、ノアは動いているんですよ。でも、もう手遅れか。


 隕石群を回避した後、皆それぞれ思い思いの時間を過ごします。

 食って寝て、食って寝ては体に悪影響を及ぼすため、六時間置きに食事を摂ります。

 そして、日課である運動マシンで日々、身体を動かします。

 無重力という環境は何もしていないと過酷な運命に遭わされるのです。

 各自、眠ければ自由に就寝してもよく、基本、ノアの操縦は自動運転なので、快適な宇宙の旅を満喫できます。あなたもいかがですか? 何もないところですけど、住めば都ですよ。

読了ありがとうございます。

感想やコメントをいただけたら幸いです。

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