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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
最終章 久慈雅人
97/110

#97 一人でも遊べる園がある地へ

一人で行くところではない所にあえて一人で行くという、今までに一度もしたことがなかったことを、今一人でやってのけているが、【線香に火を付けることに苦戦して、火で間違えて手を焼いてしまって、こんな普通のことに手を焼いてしまったな】みたいな状況にならなければいいなと思っている。


遊園地にお一人様ばかり溢れているわけなんてなくて、カップルカップルカップル、とカップルの波がザバーンザバーン押し寄せてきたり、寄せては返したりしていて、カップルに憧れたりしないと言ったら嘘になり、カップルに憧れていると言ったら本当になるくらいの心持ちで今いる。


遊園地の床が素敵だなって思ったり、この木は何の木だろう、気になるな気になるなと思ったり、リンボーダンスは膝から進むといいみたいな感じだから、【貧乏暇なし】という言葉に対抗して、【リンボー膝出せ】みたいな言葉があってもいい気がしてきたりしていたが、そのリンボーを含めたすべての考えに素敵が溢れていた。


素敵だな、ステキだな、ステキだな、と思えば思うほど、昔を思い出し、高級なステーキ肉をあえて包丁で叩き、細かくバラバラにしてから、再び繋ぎ合わせてハンバーグを作るみたいに、自分の本名の文字をバラバラにしてから、再び繋ぎ合わせて名前を変える、高級ハンバーグスタイルの偽名の作り方をしたことも昔はあったなと懐かしんだ。


100円ショップで長い棒状のものとカゴを持っている人がいたので、清掃員かと思っていたら、清掃員風のファッションをして、売っているホウキと山盛りの買い物カゴを持った買い物客だったけど、ある女性みたいなドジと、昔の僕みたいな馬鹿の違いは、本物の清掃員と清掃員風買い物客くらい違うものなのだろうかと思ったことも昔はあった。


今、目の前で園内を、いかにも清掃員という格好で、いかにも清掃員という身のこなしで、いかにも清掃員という系のゴミを拾っている人がいるが、あの人は清掃員だと断定してもいい人なのか、そうでない人なのか、よく分からない。


今ハヤリの弾力のあるボールをお茶やら牛乳やらを混ぜ合わせた液体に沈めて、ぶっとい筒で思いきり吸い上げるあの飲み物の販売車的なものがあったり、シュワシュワしている飲み物があったり、虹色の飲み物もあったりしているのだが、シンクに悪影響を及ぼすかもしれないという不安から、食器に残った全てのものを飲み干す癖がある僕は、今は全然なんにも飲みたくなかった。


もう何か乗り物に、何がなんでも乗らなくてはいけないと思っていて、色々な乗り物を、首を1280度旋回させながら眺めていたが、【俯いている女性のある写真が、ふとした瞬間に、こちらをガッツリ見つめているように見えたこと】が昔あったように、すべてのアトラクションがこちらを見ている気がした。


野球観戦をする子供目線で、歌詞が書かれたTシャツを着た大人の背中が次々と入れ替わりながら映り、はける度にグラウンドの状況が変わるみたいなミュージックビデオが見たいなと思ったり、手で顔を仰いでいる人を見かけたので、扇子や団扇くらいの大きさの手がないと涼しくないだろうよと突っ込んだりしていると、ジェットコースターが現れた。


RETと言っていた人がいて、なんだろうなと思っていたら、それは【歩いて】の間違いだったことがつい昨日あったばかりなので、ジェットコースターという言葉が英語である確証は何処にもなくて、僕はジェットコースターが日本語であるかもしれないという、フワフワした考えを腕に抱えながら、ジェットコースターの敷地に足を踏み入れた。


ビジュアル系バンドが、本当はイジワル系バンドだったり、カモメの鳴き声だと思っていたら、本当は鼻から息を吸い込む度に、カモメみたいな海鳥みたいな鳥の音が鼻から鳴っていただけだったり、そんなこともあるので確認したが、これは水中から見ても、下から見ても、横から見ても、上から見ても、斜め上から見ても、宇宙から見ても、正真正銘のジェットコースターだ。


ジェットコースターはかなり好きなときもあれば、かなり嫌いなときもあって、まさにジェットコースターのように上下動が激しいというか、とにかくジェットコースターはなんかヤバくて、今はジェットコースターに乗ってジリジリとテッペンを目指しているところなので、落ちたらテンションも落ちるかもしれない。


ジェットコースターに乗ったら目がトロンとしてきて、目がくっついたときにちょうどジェットコースターの車体は落ち始めてボーンと音が鳴って、ジェットコースターはジェットコースターなりの、ジェットコースター走りを続けていた。


ジェットコースターという言葉を文字数稼ぎに使う人もいれば、ジェットコースターという言葉を響きの美しさに浸りながら使う人もいて、ジェットコースターに乗っている今、大きな口を開けて乗ってる人が近くにいて、自己紹介のときに、『新潟出身です、。北の方で、ちょうど山形県さんという名の人間に食べられている場所出身です』という言葉を発していた人がいたことを思い出した。


目がトロンとして、ボーンという音で目が覚めたことであることを思い出したのだが、それは『嘘つきはトロンボーンを始めがち』という架空のことわざがあるのにもかかわらず、ある町がセレブシティーだと嘘をついてしまったある女性と僕で、トロンボーンを演奏している全ての人に謝ると共に反省したいと思ったこともあった、ということだ。


九九の二の段を言ってくれと誰かに頼んだとき、【2×1=2(にいちがに)】【2×2=4(ににんがし)】【2×3=TANSO (にさんがたんそ)】と言って来られたら、笑わずにはいられないと思うが、今、ジェットコースターに慣れてきて、冷静になって周りを見たら、思ってた以上のボロボロの車体で驚いて、遊園地側の人間を頭に浮かべずにはいられなくなった。


僕の名前を聞かれたら、「申し訳ありません」か「申し上げられません」という、似て非なる言葉のどっちかを言って乗り切ろうと決めかけていたが、「申し訳ありません」と「申し上げられません」ではなくて、「堂島の有馬健」や「帽子だけくれません?」という似てかなり非なる言葉が、頭の中にへばりついて離れなかったことが昔あったのを、遊園地側の人間を頭に浮かべていたら思い出した。


平仮名の<の>を①という記号の代用として使おうとしたことがあって、何とかイケそうな気はしていたが、さすがに①は普通に使った方がいいなと気付き、使わなかったことがあって、今はジェットコースターがボロくて、もう一回は乗らない方がいいなと気付いたが、気付いたら一捨二入すると10回も乗車していた。

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