#91 タクシーに足の痛みを託し
散歩をしすぎて、もうかなり散歩をしすぎてかなり遠くまで来てしまったのだが、歩いて帰るのには相当の時間が掛かるし、足が痛いからタクシーで帰ろうと思っているのだが、ドラマなどの回想や夢のシーンが夢なのに鮮明すぎだよな、と何度も思ったり、カラビナみたいに腕が細い男性に命は預けられないよな、と何度も思ったりしながら、とりあえず帰る方向へ歩いた。
「久慈さんは今まで見てきた中で一番タイプの顔をしてますよ」とタクシーで女性に言われて、【弁当箱を開けたら[焼きそば/ウインナー/唐揚げ/卵焼き/煮物/鰹節ご飯]という全部茶色いおかずだった時】と一緒で嬉しくないわけがないな、と感じたり昔していたなと、タクシーを手をあげて止めたときに思った。
タクシーに乗り込むと、タクシーの運転席の人のミラー越しの目がクリクリしていて、いま【タクシーの運転席の人の】という言葉を脳内に映し出しているのだが、その【タクシーの運転席の人の瞳】は【の人の】という文字のようで可愛いキャラクターのようだった。
家に帰ったら「なんでこんなところに水が流れるの」という超人気刑事ドラマのセリフみたいなことを母が言っていたことがあって、今はひとりで暮らしているのでそんなことはないだろうが、それと同じような衝撃が起こる予感がするので、とりあえずどこかに寄ることにした。
風上で胡椒を振られても動じなかったのだから、恋人に振られても動じる訳がないし、雨に降られても動じないのだが、タクシーで左右に振られるのは、もうどうすることも出来なかった。
考え事の連続で気付いていなかったのだが、タクシーの車内で流れている音楽が、ヘビメタ気味で、もうヘビメタ気味というよりも【ドヘビメタ】で、頭の中はメタリックのヘビがずっと居座り続けていた。
またひとつ思い出したことがあるのだが、昔カラオケに女性と一緒に行ったとき、その女性は歌っていたヘビメタが2分くらいの長い間奏になったその間に、塩ラーメンを一気に全部平らげていて、そんな女性が僕の身の回りにいた気がすることを、今、思い出した。
ヘビメタがそれなりの音量で流れ続けていたせいなのかは分からないが、頭にそれなりの痛みが走っていて、頭の中では【イタイイタイイタイイタイ】という言葉がエンドレスで流れ続けていて、かなりの頭痛で、それでも【イタイイタイイタイイタイ】という言葉は回文であるという判断ができるほど軽いものだった。
回文で思い出したのだが、ヘビメタが2分くらいの長い間奏になった時に、塩ラーメンを一気に全部平らげていたのを見てしまったのと同じ時期に、「カルアミルクとクルミあるか?」という上から読んでも下から読んでも同じになる【回文注文】をした女性がいたことを何となく思い出していた。
タクシーを降りて、スーパーマーケット付近を歩いていると、袋らしきものを大量に買ったマダム的な人が歩いていて、袋に入った日用品の袋を大量に買って、レジ袋に入れて持って帰るという、袋しかない奇妙な光景はもうかなりヤバイとしか言いようがなかった。
遅刻とか何かをやらかして女性に急いで駆け寄り謝ったけど、山に持っていくと気圧でパンパンになるポテトチップスの袋のようにほっぺを膨らませて僕に怒り出した、ということも昔はあったなと、袋でパンパンのマダムのスーパーマーケットの袋を見て思い出した。
どこかに寄り道することにしたけど、頼道っていう知り合いがいたかな?とか、頼道っていう有名人がいたかもしれないな、みたいなことを考えてしまって、気付いたらショッピングモール的なホームセンターという、僕にとってホームかアウェイかと聞かれたら【ホーム】の場所の敷地のど真ん中、つまり【ホーム】のセンター付近にいた。
フードコートみたいなところは人が多くて、なんか知らないおじさんみたいな人に声をかけられたり、意外と迷路のようになっていたりして、【WHO?】【どこ?】と、ずっとずっと思ったりなんかしていた。
更新料という人生最大のテーマをやっと忘れられていたというのに、フードコートみたいなところで香辛料の香りが風にのって鼻に入ってきてしまい、香辛料で更新料を思い出してしまったし、【風】という単語を脳で発した結果、【課税】という言葉も思い出してしまっていた。
あんなに好きだと言ってくれていたのに、永遠に一緒にいるのが嫌かもしれないなんて『あなた達には日曜日の夜に毎週カレーを食べてもらいます』と母に言われた時くらい『嘘でしょ』と思ったりショックだったなと、カレーの匂いで昔を思い出していた。
横顔を二つ並べて、思い切り合体させたような顔をした女性が横を通り、僕のタイプである、普通に綺麗な顔をしていて、普通に背が高くて、普通にお洒落で、普通になんかいい感じの女性も目の前を通り、【お金がない7月11日に、賞味期限が昨日までの納豆を冷蔵庫で見かけたら、少し悲しいがニヤけてしまう】そんなことと一緒で、その女性に変な感じで見られて少し悲しかったが、かなりニヤけてしまっていた。
何故か無性にラーメンが食べたくなってきて、カレーの匂いなんて、ただ通り抜けるだけという感じになっていて、気付けばラーメンを啜っていて、【鍋の手前側の内側は死角の代表格】だが、このラーメンどんぶりは滑らかな傾斜をしていないので、丸い形をしているが、手前が死角だった。
ラーメンを済ませて、惣菜売り場辺りをタッタッタッタッと、動く歩道くらいのスピードで歩いていると、僕の大好きな鮭ハラスと、僕の大好きな正統派清楚美女店員がタッグを組んで、僕を誘惑してきて、そのofficialハラス弁当は食べたいと思ったが、セクシャルハラスメントという言葉に敏感すぎる僕は、その美女店員に近づくことも躊躇っていた。
広いホームセンターを歩き回り、ハンコの大群に出会った時に僕は、【『インク内蔵型はんこと、スティックのりと、リップスティックが無くなったのでホームセンターへ買いに行ったら全部同じフォルムをしていた時』くらい偶然に女性に会った】という思い出を思い出しかけていた。
家電売り場みたいな場所に着いて、テレビでニュースやバラエティーなどをやっていたのだが、そこに出ていたトランプで、僕はあることを思い出していた、それは、七並べの次に人気のあるトランプゲームみたいな名前の『はち合わせ』というものをしてしまった過去が僕にはあるということだ。




