#90 ドラマの回想ハッキリしすぎ
散歩をしていて気付いたことがあるのだが、今、目の前にある駄菓子屋に置いてあるあのふ菓子という駄菓子は、【大きさが大きいのに軽さが軽すぎる部門】では第一位だろうということと、あんなに素晴らしく美味しいお方に【駄】と付けるのは、いくら冗談だとはいえ良くないのでは、ということだ。
駄菓子屋のふ菓子で、昔のことを段々と思い出してきている気になっていて、【ふ菓子】の【ふ】が、フォーゲットの【ふ】である可能性は否定できないとも思い始めていて、とにかく、ふ菓子が頭の思い出しボタンを押してくれた気がした。
僕にはお金があったらやりたいことが2つあって、1つ目はふ菓子を腹一杯食べることで、2つ目は半ライスを2つ以上頼むことで、3つ目はキャバクラに行って金でキャバ嬢と仲良くなって、最終的に金で支配することだったことを思い出していた。
お金があったらやりたいことの1つが、ふ菓子を腹一杯食べることとなっているが、もうふ菓子に関する情報はすでに出切ってしまって、もうふ菓子情報は出てきたとしてもふ菓子のようにスッカスカなものしか出てこないと思うので、気分を切り替えて、散歩を再開することにする。
優雅な散歩を再開すると、見覚えのある顔が僕の目の前に現れて、誰だろうと考えていたが、全く知らない人だと分かり、『散歩を再開してすぐに誰かと再会する』という同音異義語のコラボレーションみたいな偶然は起こらず、高まった緊張感は次第に薄れていった。
今でこそ、緊張をある程度コントロールすることが出来るようになったが、昔は緊張を抑えきれなくなることが多々あって、緊張感を自由自在に変えられたらなと思ったり、【水仕事の時のように、指先が防水加工になって欲しいときもあれば、スーパーマーケットでの袋詰めの時のように、指先がおしぼり風加工になっていて欲しいときもあって、指先の水分を自由自在に変えられたらな】と思ったりしたこともあったと思う。
昔、緊張をほぐすために、手の甲に『入』と33回書いてなめ回したことはなんとなく覚えていて、落ち着くために3秒息を吸って「ブォーッ」と言いながら7秒かけて吐いたこともなんとなく覚えていて、そんなことを思い出していたら、空が段々と暗くなってきた。
【すり鉢に入った5キロのラーメンを50分で食べきる人よりも、大きなリンゴ飴を5分掛からずに食べきる人の方が尊敬に値する】、そんなことを心から思ったあの夏祭りがあったあの夏の日も、こんな何とも言えない曇り空だったと思う。
占いのラッキーフードがウナギだったので、もう諦めるしかなかったのだが、もし一画違いのウサギがメジャーな食材だったとしたら、誤魔化してそれで済ませていたことだろうと思ってしまったのも、あの夏祭りの、あの夏の日だったと記憶している。
【ちらし寿司と冷やしうどんのセット】と言おうとした人が間違えて『冷やし寿司』と言っていたことは、何にも関係なしに思い出してしまっていて、思い出したといっても、まだ一週間以内に起きた新しい出来事で、そんなことを考えていた短い時間に、空は黒の深さを増して、雨が降り注いだ。
大雨のなか、傘もささずに、雨が降っていない演技をしながら歩いていたら、友達に『お前の上だけ雨が降ってないみたい』と言われたことがあり、それくらいの演技力で何かを隠したこともあったなと、懐かしく感じながら、ある店の前の僅かな屋根みたいな部分で雨宿りを始めた。
ある店の前の僅かな屋根みたいな部分で、どこなんだろうかと、僕が振り返りよーく見てみると、そこは街のスポーツ用品店で、そのスポーツ用品店が繁盛しているか繁盛していないかと言われたら、【うん、どうだろう】と答えるしかなくて、【うん、どうだろう】と答えるしかない理由はスポーツが【運動<うんどう>】だからということでは全く無い。
色々なボールが外からも確認できて、小さいボールとか、中くらいのボールとか、少し大きめのボールとか、かなり大きめのボールとか、色々なボールが確認できたが、机の上に置かれたボールペンとか、隅に大量に置かれた段ボールの方が存在感強めだった。
ボール存在感ランキングでは、段ボールに圧倒的な差をつけられているが、店内にあるサッカーボールを見たときに、僕はあることを思い出した、それは、初恋は小学生の頃で相手はサッカーが上手くてカッコいい男の子と仲がよかったドッジボールが上手い女の子で『安定のキャッチ力』『絶妙な避け方』『最高の位置取り』『弾丸のように速い投げ』を彼女が持っていたということだ。
もしも【朝日太陽さん】がいて、【さん】を【SUN】に置き換えたとしたら、トリプル太陽が完成して最強だな、みたいに考えてしまうくらい太陽が恋しくなっていた雨の空の下の僕は、今は超退屈で、超スポーツがやりたいカラダになっていた。
僕は普通の服装で、普通の表情で、普通の気持ちで、散歩という行為をしてきたのだが、雨宿り中に通りかかった一人の女性は、平成の装いで、平静を装ってるよ、みたいな感じでやってきて、そのまま去って行って、超超超ヤバかった。
今使った【超超超】という言葉から思い出すことが出来たのだが、ある人に「社長や部長のように『長』が付く人としか付き合って来なかったんですよ」と言われたから「一番すごい人って誰?」と僕が聞いたら『すごい人』の意味を著名な方や有名な企業の重役と捉えていなくて、「長田長助工場長ですかね」と答えてきて『長』が3つも付いているのである意味すごいが、期待を裏切られたなと思ったことがあった。
ある人からお金を貸してくれと言われたりして、そのお金がいつまでに必要かを訊ねたとき、【しちがつじゅうに】と言われたので、7月末という意味の【7月中に】だと思っていたら、なんと7月12日までという意味の【7月12】の間違いで、アワアワと最近したのだが、今はお金のことはあまり考えたくないので、そっと考えをしまった。
考えをしまっても、お金が自ら出ようとしてきて、昔「お金しか興味がない馬鹿女!」と女性に言ってしまったことがあって、日本三大シツゲンは『釧路湿原』と『葦毛湿原』と『お金しか興味がない馬鹿女』という失言の3つだろうと気が付いた日もあったなと、思い返していた。
雨が止んで歩き出すと、小さい虫の大群が目の高さ辺りで大量に飛んでいて、旋回を1000回以上はしているような、そんな勢いを感じて、何ともいえない感じで歩いていたが、その虫のお陰で、昔あった虫にまつわるどうでもいい話を思い出してしまっていた。
車を運転していたら、信号のない横断歩道付近で、誰かがゆっくりと自転車を漕いでいるを見かけたのだが、目線を横断歩道の向かい側に向けたり、その横断歩道を渡りそうな雰囲気を10パーセントくらい醸し出していて、止まるか止まらないか迷ったことがあって、その昔あった虫にまつわるどうでもいい話も懐かしむか、その時くらい迷いに迷って、結局懐かしむと決めた。
女性に「さっき目の前にハエが飛んできてビックリして唇を噛んでしまったので何も考えたくないんです」と言われて、目の前にハエが飛んできてビックリして唇を噛んだというのによく帰らずにいられるな、と思ったりした覚えがあって、そんな思い出を噛み締めながら未来へと歩を進めた。




