#83 好きになる魔法に自分からかかりにいった訳で
久慈さんが魔法でガンを治したことはだいぶ後になってから知らされました、だいぶ後でしたけど【ガーン】という気持ちには一切なりませんでしたし、魔法と私の名前の真帆は発音が瓜二つといいますか、とにかくよく似ているので、魔法ですごく驚くことはありませんでした。
お見舞いの日からはしばらく会わない日が続きましたね、しばらくという言葉の解釈は人それぞれで1ヶ月と思う人もいれば、5年と思う人もいると思いますけど、ここでは辞書の解説を参考にしまして、ある程度の長い時間が経過した時ということにします。
お見舞いをしてからずっと会わなかったんですけど、その日から何を見ても心が舞うことなんて一切無くなりましたね、お見舞いってなんで【お見舞い】って書くんですかね?お見舞いした人の表情が暗かったら心舞い踊るなんてこと一切考えられないんですけどね。
それで結構経ってから久慈さんとメールを頻繁にしました、【結構】という言葉の解釈や【頻繁】という言葉の解釈は人それぞれ分かれるところだと思いますけど、【結構】は予想以上と考えてもらえればいいですし、【頻繁】は【頻繁】という漢字が書けない人くらい多いと考えてもらえればいいです。
『風邪だった』と久慈さんから送られてきたので『「カゼだった」という事実が「ガセだった」に変わればいいですね』と返したんですけど、それで勇気が出たみたいで、それでなんやかんやあって、なんやかんやでそれから久慈さんと距離が縮まった感じです。
久慈さんは魔法使いという特殊なものを扱う人ですけど、魔法と同じ感覚で私のことを頼りにしていただいたことはとても感謝しています、魔法使いが『真帆を使い』色々するのは大歓迎ですから。
私の周りには『ティッシュは食べ物です』って言ってくる知人や、『ハヤシライスは飲み物です』って言ってくる親友がいますけど、久慈さんは久慈さんで『僕のことを好きになる女性が挙動不審ではないはずがない』って言ってまして、本当に変わってますよね、思い出したので、なんか、とりあえず言ってみました。
私は久慈さんがその時から好きでしたけど、友達を紹介してほしいみたいな感じだったので紹介してあげることにしました、カラオケが好きでよく行って同じアーティストばっかり歌うんですけど、そのアーティストは、一番を普通に歌って二番になると語尾をうねる系のアーティストでして、採点にもそのうねりが反映されていて少々手こずってしまうんですよね、そのアーティストの曲を歌うくらい友達を紹介するというのは大変なことなんですよね。
紹介したのは飯田啓子さんという名前の女性で、言い訳はしますけどとても頭の良い人なんですよ、『喧嘩するほど仲がいい』という言葉風に変換すると、【言い訳するけど頭いい】になりますね、あっ、ここでは実名を出しても大丈夫でしたよね、【飯田啓子さん】ではなくて【飯田啓子氏】や【I田K子】とした方がよかったんですかね、すみませんね、私、携帯電話の充電器が3ヶ月しかもたないくらい適当な性格なものでね。
紹介することになって三人で会ったんですけど、会ったら久慈さんは魔法でカッコいい顔になっていまして、すごくカッコよくなってましたけど、前の方が好きだなって思いました、久慈さんは魔法使いだということと、顔を魔法で変えたことは私だけにメールで報告してくれていました。
低い椅子に座るときに、蔦が何かに絡まるように複雑に足を組んでしまう癖がある私なんですけど、そこは低い椅子とかではなかったのでセーフでしたし、ウエストが細すぎて正面のベルト通しの場所を通過した後のベルトの布が多めに余ってしまってジーパンのベルト通しをその後二、三回も通さなくてはならなくて大変みたいな【痩せあるある】も私には全く当てはまらないので、何がセーフかはよく分かりませんけど、とにかくセーフでした。
そうですか、飯田啓子さんのことも取材されたんですね、飯田啓子さんはすごかったですよね、飯田啓子さんは【飯!田!啓!子!】っていう感じを全面に出してくるといいますかね、まあ、その、とにかくすごい方でしたよね?あのう?いつもの呼び方で呼んでもいいですか?飯田啓子さんのことは普段は啓ちゃんと呼んでいますから。
E田K子とは言ってないです、今はイニシャルトークはしてませんから、あなたが前に取材した飯田啓子さんのことを言ってますよ、違う人のことは言ってません、【E田】だと【江田】とか【江古田】とかになってしまいますからね、あっ、それよりも久慈さんのことで話したいことが沢山あるので先に進めてもよろしいですか?
滅多に曲などをダウンロードしない私がケータイで音楽をダウンロードしましたら、友達とダウンロードした曲が被ってしまいまして、なんとその音楽のタイトルが【宿命】だったんですよ、なんだかすごく運命を感じました、それが今の啓ちゃんです。
私の体重ですか?そんなものが知りたいんですか?今は測ってないので分かりませんけど、昨日は100キロくらいあって、久慈さんと啓ちゃんを会わせたときも100キロはあったと思います、体重って5キロなんてすぐ変動しますからね、【重】という漢字はいかにも重そうな姿カタチをしていますけど、私も重そうだと思われることが多いんですよね。
足は象のように太いので疲れますし、手が太いのに腕筋はないんですよね、私が紹介した啓ちゃんと久慈さんはとても合っている気がしたんですけどね、盛り上がりは低空飛行を続けていましたね、ほんの一瞬だけ最高潮になりまして、笑いすぎて喉からカスタネットみたいな音がしたこともありました。
啓ちゃんは誰がどう見ても、誰がどこから見ても、誰が写真や映像で見ても、猿が見ても、目が悪い人が見ても、一目で美人だと分かるくらいの美人ですので、三人で行ったそのお店で啓ちゃんは『美女割引』をされていて、魔法イケメンだった久慈さんは『イケメン割引』をされていたのですが、私は『デブ&ブス割り増し』をされてしまったんですよ、おかしいと思いますよね?
結婚相談所には何回も行きましたけど、私に好意を持ってくれる男性なんて全くいませんでした、やっぱり顔や体型なんですかね?結婚相談所がダメならもうダメだろうなと思ってましたが、久慈さんにはずっと好意を抱いていまして、諦めきれませんでしたので、結婚相談所の力を借りずに自らの力で思うがままに行動しようと思いました。
えっ、いやっ、あの、その、違います、結婚相談所は行きましたけど、そこには全く行ったことがないですよ、聞き間違いですよ、私が行ったのは結婚相談所ですよ、【鉄砲襲うダンジョン】には行ってないですよ、そもそも【鉄砲襲うダンジョン】というのは何なんですか?相当危ない場所というのは想像がつくのですが、詳しく教えてもらってもいいですか?あっ、休憩ですか、分かりました。




