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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
第三章 田村奈美江
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#06 合コンは合理的婚活パーティーの略称ではない

果汁0パーセントオレンジジュースと同じ類いの男っぽさ0パーセント男の僕はあることを魔法ですることにした。


それは僕の男っぽさを0パーセントから37.8パーセントに増やすことではなくて失恋で学習した『イケメン人気説』をビリーブして魔法でフェイスをカッコよくすることだ。


僕は早速魔法をかけて見事な黒トリュフ塩顔男子となった。


この顔なら女子にモテてそれに鍛えているこの体なら片手だけで女子を持ててその結果モテモテになるだろう。


僕は友達に99回目の最初で最後のお願いをして合同コンパに参加することになった。


「本当に久慈ちゃん?整形したのか?」


「そ、そうなんだ」


僕は顔を魔法でアレしたのに以前の僕の顔を知っている友達と会ってしまうという重大なアレをしてしまい整形したと嘘をついてなんとかアレした。


友達は昔、自転車に乗りながらきゅうりをかじっている人を一緒に見た時くらい驚いていた。


そして合コンが始まり友達のハイテンションが始まり女性たちの愛想笑いが始まり僕は黙り始めたが恋が始まる予感はない。


「田村奈美江25歳です。OLをしていて特技は理屈とハンバーグをこねることです」


リスに8を足して3を引いたような顔をしていて田村奈美江ちゃんはとても可愛らしい。


「久慈雅人42歳会社員。よろしくね」


全員の自己紹介が終わったが僕はその後緊張して喋れずにまるで酒飲み人形のようになっていた。


その時、田村奈美江ちゃんが右も左も麦茶もめんつゆも分からない僕に話しかけてくれた。


「雅人さん実年齢より若く見えてとてもカッコいいです」


いわゆる魔法整形をして若い顔になったので若く見えるのは夏が暑いのと同じで当たり前だ。


年齢の質問をされた後にその相手に年齢の質問で返すのが一般的だと死んでないおじいちゃんが言っていなかったが質問してみた。


「奈美江ちゃんは歳いくつ?」


「約9000日前に生まれました」


この回答は2リットルのペットボトル飲料を『2000ミリリットルだよ』と言うのと仲間だがかなり独特だ。


『サラダ取り分け女子』で『唐揚げレモン絞り女子』でもある田村奈美江ちゃんは僕に優しいので確実にイケメンの僕狙いだろう。


イケメンになると小銭を豪快にぶちまけなくてもぶちまけた時のように優しくされるのだと分かった。


「久慈ちゃん。食べ過ぎて痩せた鉄板の話してよ」


友達がそう言うので仕方なくかなり仕方なくとてつもなく仕方なく話すことにした。


「その日はご飯をどんぶりで何杯も食べてしまいすぐに胃が痛くなって気持ち悪くて吐いてしまい、その後は何も食べられない日がずっと続いてその結果げっそりしたんだ」


この話を聞いていた田村奈美江ちゃんはテレビショッピングのおばさんたちと同じくらいわざとらしい『えーっ』をいっぱい使ってきた。


「ねっ、鉄板の話でしょ。ねっ、鉄板の話でしょ」


なぜか、なぜだか、なんでだか、なんでなのか重要でもない言葉を友達は2回繰り返した。


「同じ言葉を2回繰り返す人苦手です。同じ言葉を2回繰り返す人苦手です」


なぜか田村奈美江ちゃんは苦手なことを宣言しながら同時に自分が苦手なことをしてしまっているが天然ではなくて計算なのかもしれない。


今思ったのだが田村奈美江ちゃんは2時間ドラマでいうと最初に殺人の犯人だと疑われるがその後すぐに殺されてしまうタイプだ。


その後僕は「坊主にしたことあるけど髪が伸びるのが早くて三日で坊主では無くなったんだ。まさに三日坊主だよね」という面白い話をした。


あとは「豆知識を言う」と言って『お豆はおいしい』という、しょうもない豆の知識を言ってしまうボケをしたりした。


田村奈美江ちゃんは笑ってくれたが煮出したらいいダシが出そうな肌が昆布色の女性はつまらなそうにしていて元気がないみたいだった。


飲みかけのペットボトル飲料をテーブルに置いておいたらがポコッと何回も鳴った時くらい何でなのか疑問だったので聞いてみた。


「元気ないね」


「はい。さっき目の前にハエが飛んできてビックリして唇を噛んでしまったので何も考えたくないんです」


僕は目の前にハエが飛んできてビックリして唇を噛んだというのによく帰らずにいられるなと思った。


元気のない昆布色の女性とは真逆で田村奈美江ちゃんは『イケメン評論家』なのかと思うくらい僕の顔について熱く語ってきた。


田村奈美江ちゃん曰く、目が大きくて色黒でポッチャリしている昆布色女性とは真逆のシャープな目で色白で細マッチョな僕がタイプらしい。


その後、ニコニコしながらラーメンの麺を吸引力のいい掃除機みたいに勢いよく吸い上げる昆布色女性の横で僕は田村奈美江ちゃんと連絡先を交換した。


あれだけ元気がなかった昆布女がラーメンが出てきた途端に電話に出た時の母くらい変わったので引いてしまった。


昆布女は可哀想な女アピールのために元気がない演技をしていたが昆布女の大好物のラーメンの登場で油断して元気になってしまったみたいだ。


本当に元気がないのかと思っていたくらい演技が上手いので僕はこれからは昆布女のことを『劇団昆布の看板女優』と心の中で呼ばせてもらう。


演技は上手いが罪のないハエさんを唇を噛んだ犯人にしたてあげた罪は重い。


これは急に元気になるのがオチの劇団昆布の舞台『唇を噛んだ女』の居酒屋公演という可能性は全くないだろう。


不自然に元気な人間になってしまい演技がバレたのに昆布さんは焦らないで憎らしいほど平気そうな顔でラーメンを食べていた。


すると田村奈美江ちゃんは手の指の第二関節を曲げて第一関節から先を軽く押した時くらいプルプルしているプリンを食べながら僕にこう言った。


「ふたりともイケメンですね」


田村奈美江ちゃん曰く、僕は『イケてるメンズ』略して『イケメン』。昆布さんは『いけしゃあしゃあと麺をすする女』略して「イケメン」ということみたいだ。


その後は酔って昆布さんが僕に投げつけてきた唐揚げと田村奈美江ちゃんとの会話が思っていたより弾んだ。


僕は普通ではない人が好きなので昆布さんのことを好きになるのが普通だが田村奈美江ちゃんのことを普通に好きになっていた。


美味しいものを食べた時『美味しい』と言わずに『美しい味がする』と言っていたりして意外に田村奈美江ちゃんも変わっている。

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