#53 紙切れに精一杯の愛を込めて
私は取材というものが初めてなので、とても緊張していますけど、どれくらい緊張しているかと言いますと、街で怖い人とすれ違ったときに私は怒っていないのにビールケースに躓いてしまい怒っているように見えてしまうみたいなケースにもしも遭遇してしまったらと考えたときくらいの緊張感です。
私が彼と出会ったのは私が働いていたキャバクラでしたが、何をやらかしたかは知らないですけど彼が何かをやらかして捕まったと聞いて『CMでカッコよく生き生きと踊っていたタレントさんが、ダンスドラマに出演したときにはダンサーの方ではなくて、踊らずに裏方に回っていたこと』くらいショックでしたね。
今、魔法で金儲けした容疑で捕まったってことを知ったんですけど、そうなると私は魔法で造り出されていたお金を湯水の如く使っていたってことになりますし、不正なお金を私は普通のお金として渡されてたってことにもなってしまいますし、お金が死ぬほど好きなキャバ嬢だけど、それは許せませんね。
取材を受けるのは初めてですけど、蚊に刺されていない場所が皮膚にはもう残されていないのではと思うくらい蚊に刺されまくっていると思っている私は考えが後ろ向きと言われることが多くて、初めての取材も私みたいに後ろ向きではなくて、もっと前向きな感じの事柄のヤツが良かったです。
私は魔法で造られたお金だって知りませんでしたけど、もし魔法で造られたお金だって知っていたとしたら、その彼と共犯者とかになって、悪人扱いされて、『街で怖い人とすれ違ったときに私は怒っていないのにビールケースに躓いてしまい怒っているように見えてしまう』みたいな状況に陥ったと想像したときに私の頭に浮かんだ『街で擦れ違った怖い人像』みたいなオジサンに連れてかれるとかはないですよね?
たしか私にはIT企業の社長だと名乗っていたはずですけど『テレビで毎日やっているラジオ体操を見ていたら【状態を愚痴りながらほだす】と聞こえてきしまったこと』や『青首大根が青首代官に聞こえてしまったこと』と同じで、もしかしてそれは聞き間違いだったということですかね、それとも普通の嘘ですかね。
社長だったことが嘘だったってことは、何かの『長』しか付き合わないって決めてた私からすると『CMでカッコよく生き生きと踊っていたタレントさんが、ダンスドラマに出演したときはダンサーの方ではなくて、踊らずに裏方に回っていたこと』とは比べ物になら無いくらいショックで、『台風の数を今年からメジャーに挑戦している日本人メジャーリーガーのホームラン数が追い抜いてほしいなと願っていたのに追い抜けずにシーズンが終了してしまったこと』くらいショックでした。
何かの『長』としか付き合っていないという記録が彼の嘘のせいで途絶えていたわけですから誰だって怒りますし、私はその事をいろんな人に喋ってしまっているので私まで嘘つきで私までヤバイ人に仕立てあげられちゃっている訳ですよ。
ヤバくないですか?ヤバイほどヤバくないですか?ヤバイと本気で思っちゃうほどかなりヤバくないですか?彼がもし町内会長をやっていたり、個人的にやっている部活動の部長だとしたら話は別ですけど、たぶん違うだろうしヤバくないですか?あっ、もう敬語じゃなくていいよね。
私はお金のためなら何でもする人で、『確かに僕はエロすぎる妄想に辿り着いたとき、くしゃみが出てしまうことがあるけど、これはエロのくしゃみではないからね』というのが口癖の人とデートしたこともあったし。
キャバ嬢をやっているから、一応顔もそれなりで、話すときのテクニックもそれなりにあって、頭もいい方なのに、くるぶし好きの蚊に両くるぶしを刺された時みたいなむず痒い視線はやめてよ。
ちなみに、くるぶしは一文字で表せる漢字が存在していて、くるぶしというのは、足首の関節の骨が左右に突き出ている部分のことをいうんだけど、私が『くるぶし好きの蚊』に刺された部分は内くるぶしじゃなくて、外くるぶしの方だからね。
そのくるぶし好きの蚊はね、ママの外くるぶしにも吸い付いてしまったみたいでね、私のくるぶしを3吸いして、ママのくるぶしは4吸いして、結局、合計で7吸いもされてしまったんだからね。
『お尻で潰しても大丈夫なことをアピールするために故意で立て続けに商品を潰していくCM』みたいなものをよく見るけど度が過ぎていて、いかがなものかと思うし、くるぶしを刺してきた蚊はそれと同じくらい度が過ぎてるよね。
ちょっと待ってよ、『お金が大好きすぎるキャバ嬢の私』と『くるぶしが大好きすぎる蚊』が一緒だっていうの?確かに私はお金だけしか見えてなくて蚊はくるぶししか見えてないけど、くるぶし好きの蚊と私を一緒にしないでよね。
彼はかなり不細工なところがあって、かなりオジサンなところがあって本当に気持ちが悪かったけど、お金のためならって『赤い色をしているのに【金魚】』と呼ぶように、『緑色をしているのに【青リンゴ】』と呼ぶように、私は彼を『不細工な顔かたちをしているのに【イケメン】』と言ってしまってたの。
彼をイケメンと呼んだときの周りの反応は、『剣道の腕前は一級品だけど、顔につけている面を外すと超不細工で女性人気はないよっていうブサイク男性剣士』に向かって『得意な面を決めてくれ』みたいな意味で「イケ、面!」と叫んだと仮定した時と一緒の反応で、凍り付いただけだったの。
お金のために頼まれてもいないのに手の大きさを比べるために自分から手を合わせにも行っちゃったけど、手を合わせるのでも気持ち悪く思っちゃって、ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル震えたからね。
顔を見なければキスだってできると思って上瞼と下瞼がくっついてしまうくらいに思い切り目を瞑って、『クイズ寸劇の劇中や薬品CMのラストでピンポンと口で言うのは違和感がないけれど、家を訪ねて扉の前でピンポンと叫ぶのはおかしいな』みたいな彼とは結び付かない別の事柄を考えながら彼とキスをしたことを覚えるわ。
歯磨き中に必ず一回は嗚咽しちゃうことでお馴染みの私が、もし女優をして、もし歯磨きのシーンがあったなら、嗚咽シーンしか撮れないと思うくらい歯磨き中に何度も嗚咽してしまうだろうけど、私は歯磨き中以外で初めて嗚咽したのが彼とのキス後だったわけよ。
彼とキスをしたときは気持ち悪すぎて動けなくなって、その後キスはすぐに無理矢理忘れたんだけど、『会いたくて会いたくて震える人』もいるけど私はあの瞬間は怖くて怖くて震えたね。
あっ、取材の休憩に入るのね?ちなみに串カツのソースと一緒で私の唇は二度付け禁止で、一日に一人一度付けって決めていて、彼は二度付けしてないけど串カツ屋でいうところの出禁状態にするって決めたから、最初のキス以来一度もしてないの。




