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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
第十一章 宇野真帆
51/110

#51 熱々のラーメンのような関係をラーメンのように長く

1cm5mmも動じない心を僕は持っていると思っていたが、口の中の異物感に耐えられなくて歯磨き中に吐いてしまったこともあったし、一分以上ページを捲ろうとして捲れなかったこともあった、一分以上ページを捲ろうとして捲れなかったらそこの間にページはないというのに。


それだけ宇野真帆さんに頭や心や他のものへの興味を持っていかれているということで、スーパーで売っているラーメンの賞味期限の欄に9.30と書いてあると思っていたら製造記号のDが賞味期限に近寄りすぎていて本当は9.3Dで、そのことに随分気付かなかったことがあって、もうどうすることも出来ない。


宇野真帆さんといるとかなり落ち着けるのは事実で落ち着きすぎて他のことに集中出来ないというかなんと言うかとにかくそんな感じで、今は北海道へラーメンを食べに来ていて、宇野真帆さんと北海道ラーメン旅をしているという感じで、街中のラーメンと書かれた看板を見るたびに『ラーメンの賞味期限の欄に9.30と書いてあると思っていたら9.3Dだった事件』を思い出す。


ちょっと昔か少し昔かほんのちょっと昔かは覚えていないが、昔、『はい』と『いいえ』しか言わない友達も北に飛び立っていったなと少し思い出していて、説教くせえけど積極性がある親戚も北に住んでいるよなと少し思い出したりもしている。


宇野真帆さんに北海道の魅力を延々と脳に放り込まれ、最終的に『北海道に行こう!』みたいな言葉で誘われたときに『そっか、行こう!』みたいな言葉で承諾してしまったが、よく考えてみれば北海道に行くにしては返事が軽すぎるし、よく考えてみれば『北海道に行こう!』『そっか、行こう!』と繋げて読んだらラップの曲に出てきそうなフレーズになってしまっていて反省した。


今の気持ちはブタに恋する一時間前というような感じで、ここでいうブタというのは宇野真帆さんのことで、ここでいう今というのは、初めて二人でカップラーメンを食べた『カップラーメン記念日』から時間が結構たった真冬のことで、ここでいう恋というのは、異性として好きということで、この物語はこれから恋愛色強めの展開になっていくということだ。


「この有名な名言知っていますか?北海道はでっかいどう!っていう名言なんですけど?」


「知ってるよ」


「この名言深いですよね?」


僕の中の苦笑い製造工場の工場長が原料の『北海道はでっかいどう!』を苦笑いに変えて僕の顔面から送り出した。


今歩いている北の海がみえる道は寒いし、ダジャレは寒い。


長い文章は読みづらいし伝わりづらいし、あまり良くないことは分かっているけれど、長い文章にも長い文章なりの良さがあるし、文章は意識しないとどんどん長くなってしまうのでもう諦めていて、長い文章の間に急に意識して短い文章を入れても『時たま自分の星座だけやっつけ占いされてるのではないか』という違和感と同じような違和感を持たれると思うので、文章を書くときも宇野真帆さんといるときもありのままが一番だろう。


知り合いの徳井さんに苦手なものはほとんどなくて誰の手でも躊躇わずに舐めることが出来るが、舐めた時にちょっとだけ苦味を感じる手は少し苦手であると言っており、僕にも宇野真帆さんに対する苦手なものがないかと探してみたが仲の良さがかなり上昇している昨今苦手なものなど存在しない。


『恋をしたことがないのがおかしいみたいな風潮があるけど、自ら恐怖を感じる蜂に向かっていきますか?向かっていかない!よけるの!』というネタのモノマネを宇野真帆さんにしてもらいたいほどだが、今は魔法を使わなくてもやってくれるのではないかと思っているくらい仲が良くなっている。


今は『竹屋ー竿竹ー!』が『好きや!顔だけ』に聞こえてしまったり、『ご注文を繰り返します』が『お中元送り返します』に聞こえてしまったり、『カラダがガリガリじゃん』が『カラダがザリガニじゃん』に聞こえてしまったりするかもしれないと思ってしまうほど幸せな雰囲気に包まれながらラーメン屋へと入っていった。


僕はラーメンを宇野真帆さんにほぼ毎日食べさせられ、心も身体もラーメン色に染まっていて、金髪を見るとラーメンの細麺にしか見えなくなってしまっていたので、いかにもラーメン屋みたいな服装をして僕たちに対応してくれた店員が金髪だと分かった瞬間はヤバかった。


僕の中のラーメン記憶呼び覚まし工場の工場長が原料の『金髪店員の金髪』をラーメンの細麺に変えて僕の脳へと送り返したのだ。


あの宇野真帆さんが、千円する丸首のTシャツが欲しいって言うからプレゼントしたら聞き間違えだったことがあったのだが、今いるラーメン屋の店員が来ている服は、僕が宇野真帆さんに欲しいと言われた方のTシャツではなく、僕が間違えて買った方のTシャツによく似ていた。


「何を食べましょうか?」


「北海道といったらやっぱり味噌ラーメンかな」


「いいえ。北海道民はジンギスカンが大好きで一家に一台はジンギスカン鍋があると言われているほどのジンギスカン好きなんです。ここはジンギスカンラーメンも美味しいみたいですし、ラーメンを全種類頼みましょう」


「そうだね」


軽くフードファイター気質が溢れてきた宇野真帆さんを見て『私、会社を立ち上げました。大所帯アイドルグループの人数にも満たない小さな会社ですけど』と宇野真帆さんが最近、僕に言ってきたときの姿が僕の中から軽く溢れてきて、ギャップに萌えた。


僕の中の幸せ製造工場の工場長が原料の『このなんかどうってことないんだけど、なんか安らげて、なんか本当の自分でいられるっていうか、なんか穏やかになれる宇野真帆さんといるこの感じ』を笑顔に変えて僕の顔面から送り出していた。


元魔法使いの僕は一般人の宇野真帆さんの魔法にかかってしまったかのようで僕の中の工場長は生き生きとしていて、まるでハイテンション芸人のような『うがい』を意識しないでしていたあの頃の僕みたいだ。


頼んだラーメンが狭いテーブルにぎっしりと並び、僕らは本場のラーメン食べ、宇野真帆さんは本場のラーメン蘊蓄や本場のラーメンあるあるやラーメンの名言『ラー名言』を言ってきたり、『ラーメンは勢いよく啜って噛みきらずに口の中に入れるのが美味しいけど、久慈さんとの関係も噛みきりたくない』みたいなラーメン比喩を披露されたり、ラーメンを目にも止まらぬ速さで冷ましまくるなどのラーメンお節介も目立っていた。


僕の中にあるブラック企業『ストレス製造工場』の工場長は今日は休みで、近々工場閉鎖の話まで出ていて、中学生の時に英語の授業で特技のジャグリングを披露することになってしまったことがあったが、その頃そうなることと今こうなっていることは予想さえしていなかった。

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