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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
第十一章 宇野真帆
50/110

#50 幸せとはラーメンと心が満ち足りていること

パック牛乳1000mlというあんなに重いものが空になってしまうとヤバイくらい軽くなっちゃうのだから、今日は特に頻尿がヤバイ僕もヤバイくらい軽くなってしまうかもしれないけれど、コンビニでカップラーメンを買った後にスーパーマーケットに寄ってまたカップラーメンを買おうとしている宇野真帆さんの付き添いの僕の手はこれからヤバイくらい重くなってしまうかもしれない。


スーパーマーケットの自動ドアを抜けてお目当てのものへと普通に進んでいるところだが、もしこのマーケットの部類の名称がスーパーマーケットではなく、ハイパーマーケットやウルトラマーケットやマーケットプレミアムだったら、ランニングマンを踊りながら楽しく進んでいたことでしょう。


宇野真帆さんは、宇野真帆さんによく似ているブタという動物が切られて売られているというのに豚肉コーナーには目もくれずカップラーメンコーナーへ一直線で進み、うがいをしている時に思い出し笑いより思い付き笑いをして水を吐き出してしまうことが多い僕だが、うがいの時のような思い付き笑いをしながら進んだ。


「どうでもいいものは世の中に溢れています。しかし、どうでもいいものも、やがて大切なものになります」


「うん」


まるで僕がスーパーマーケットのカップラーメンなんてどうでもいいみたいに思っていることがバレてしまったかのような言葉を僕に放ってきて、まるで僕がスーパーマーケットのカップラーメンなんてどうでもいいみたいに思っている顔をしてたかのような対応の仕方を僕にしてきて、口から心臓ではなくベロが飛び出そうになりかけた。


スマホやパソコンなどのデータを削除するときに『本当にいいんですか?』みたいなことを機械側が聞いてくれるが、最低五回は聞かれないと勢いで消してしまいそうな性格の僕だから『スーパーマーケットでカップラーメン買いますけど本当にいいんですか?』と何回聞かれたとしても勢いで『いいよ』と答えてしまうような性格でもあると思う。


カップラーメンコーナーに100m10秒台で来たわけではなく、ランニングマンを踊りながら来たわけでもなく、乗る電車にギリギリ間に合うくらいの時間で走れば間に合うけど必死に走る姿は見られたくないから涼しい顔ではや歩きするみたいな感じのはや歩きをしながら来たわけでもなく、普通に歩いてきただけなのに宇野真帆さんは疲れを見せていたのだが、このカップラーメンコーナーに着くまでの身のこなしは軽すぎだった。


新商品をグレーのカゴいっぱいに入れながら、『その時の流行りなどを織り混ぜた文章を書き溜めしていたら世に送り出すときにはもう古い』みたいな感じになっちゃうように、カップラーメンも生まれては消え生まれては消えを繰り返して数えきれないほどのものが忘れ去られていってしまうのだと、どこかの宇野真帆さんがどこかのスーパーマーケットで今、言っていた。


「あの有名なヌードルシリーズだって今までに発売した味の種類が100種類を越えてるんですよ」


「そうか」


鎖編み程度の知識しかないのに帽子が編みたくて何となくで編んでいったらベレー帽みたいなものが出来上がってしまったことがあったので、名言と蘊蓄とぶよぶよとした太い体型を全面に出してくる宇野真帆さんの名言や蘊蓄を何となく聞いていたら名言や蘊蓄が身に付いていくのかもしれないが、そんなことはどうでもいいので、はやくカップラーメンが食べたい。


カップラーメンを買って宇野真帆さんの家に向かおうとしているときにふと、油で揚げた麺はパッケージのところに『油揚げ麺』と表記してあるが、もし豆腐を油で揚げたあの『油揚げ』で出来ている麺が有名になってしまったら、どっちが『油揚げ麺』と名乗っていいのかみたいなことが分からないので宇野真帆さんに聞いてみたいと思ったが、蘊蓄ばかり言う宇野真帆さんでも分からなそうなので聞かないでおく。


「人は決まりが好きだから今日もいくつものナントカ記念日が存在します」


「今日は何の記念日なの?」


「今日は久慈さんと初めてカップラーメンを食べるということで『カップラーメン記念日』です」


スマホで録画したテレビドラマを観ていたら甲子園番組の重要なシーンみたいに7秒間くらい音が無くなってしまって、ドラマ側の演出だと思っていたら、メールが来たら音声が無くなる仕組みだっただけで、たった今制定された『カップラーメン記念日』も宇野真帆さんが僕に恋愛感情を抱いているから制定されたのだと勘違いしてしまうところだったが何とか勘違いせずに乗り切った。


僕が宇野真帆さんのことを欲しているのは事実中の事実なのだが、僕が宇野真帆さんを欲しているという事実の種類は、箱ティッシュの残りの枚数が分かるティッシュカウンターが欲しいと思っている事実とほぼ同じ種類の事実である。


ナンヤカンヤで宇野真帆さんの家に着き、ナンヤカンヤ買ってきた全てのカップラーメンにほぼ同時にお湯を入れて、ナンヤカンヤ食べようとしているところだが、白衣の天使よりも黒服の悪魔の方が目に入る色味からして優しくて落ち着くと思うように、ナンヤカンヤでやっぱり『遠くのカモシカより近くのブタ理論』は合っているのだ。


「待ってください。今、箸をお持ちしますから」


「うん」


「痛っ」


「大丈夫ですか?」


無駄にしっかりとした硬い素材で出来ているテーブルの角に膝をぶつけた宇野真帆さんは、僕の呼び掛けに一切答えることなくただただ痛がっていて、昔、賞味期限の下に書かれた製造年月日のせいで期限が過ぎていると誤解され母に流しに捨てられた牛乳のような気持ちになっていた。


「『全ての異常は痛みに通ず』と言いますからね」


豆乳ラーメンや沖縄そばやパクチーヌードルなどを今食べたのだがお店の味とまではいかないし、宇野真帆さんは質より量なのか?と思ったりしたし、戦隊ヒーローものが子供向けであるはずなのに最近見たドラマや映画の中で一番難解で、なんだか少し前から怖くなって来てしまっているけど、何か幸せ。


純日本人肌色の絨毯の上で、ラーメンスープライスのためのライスを宇野真帆さんに勧められて『大丈夫です』と僕は答えたのだが『大丈夫です』が『大ショックです!』に聞こえてしまったらしく、それでラーメンのスープにライスを投入するタイプの人間だった宇野真帆さんに僕が大ショックを受けたのだと勘違いされ、一悶着あった。


「ラーメンのように久慈さんとの時間ものびたらいいと思ってしまいました。このカップラーメン美味しいですね」


「うん」


その後『言葉遊びは脳ありゃ出来る』みたいな名言や『全ての五十音が友達』みたいな名言を宇野真帆さんが言ったり、ラーメン比喩を使ったり、空耳耳になっていて聞き間違いを探してる自分がいたり、ナンヤカンヤで『ナンヤカンヤ』という言葉ばかり使っている僕がいたりした。


厚化粧で、何でも話せて、僕が魔法使いだと唯一知っていて、僕が病気だったことも昔の僕のことも全部知っている宇野真帆さんを対象物として、二袋目のベーコンくらい開かない心の僕は、今までで一番誰かを好きになっている気がする。

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