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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
第二章 佐藤花子
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#03 女はやっぱりお金が好きなのかね

深さ5メートルの穴へ誰かに睡眠薬を飲まされてから入れられて埋められることがあっても脱出できるくらいの魔法は使える。


なので魔法の力で会社に入って四角いボタン約100個を10本の手の指の先端でプッシュする人生を送ることもできる。


そして魔法の力で細長くて四角いボタン約60個を10本の手の指の先端でプッシュする人生を送ることも出来る。


でも大好きなパソコンのキーボードを押すことや大好きな楽器のキーボードを押すことよりも稼げることを見つけてしまった。


それは魔法で日本銀行券を増やすことだ。


試しにやってみると諭吉さんが部屋に大勢で押し掛けてきた。


色々試したが魔法を使って増えるお金は円周率と同じで無限みたいだ。


僕はお札をばらまいて部屋に出来た諭吉海で諭吉まみれになって遊んだ。


土に埋もれるのは嫌だがお札に埋もれるのは悪くはない。


今までの人生で1回しかやったことがなくて途中で遊ぶのを止めたモグラ叩きの次にこの遊びが好きだ。


ちなみにモグラ叩きは好きな遊びランキングの第1位である。


僕にはお金があったらやりたいことが2つある。


1つ目はふ菓子を腹一杯食べること。


2つ目は半ライスを2つ以上頼むこと。


そして3つ目はキャバクラに行って金でキャバ嬢と仲良くなって最終的に金で支配すること。


キャバクラは全国穴堀り大会と同じくらい興味があってずっと行きたいと思っていた。


なので髪の毛と眉毛とまつ毛と髭と腹と服装が真っ黒な僕はキャバクラに遊びに行った。


店の中に入ったが慣れていなくて女性専用車両にエイリアンが間違えて乗ってきたくらい場違いだと感じた。


でも僕は落ち葉が腐ってできたとても優秀な土の『腐葉土』と似ていて根性は腐っているが魔法が使えるとても優秀な男なのだ。


魔法使いとしてはまだ未熟でセミでいうとまだ地中にいる幼虫だが魔法使いになってから自信がついた。


なので消極的という言葉の対義語で行動的という言葉の類義語である『積極的』で行こうと思う。


待っていると可愛くて可愛くて可愛い三拍子揃った女性がきた。


「楓です」


顔はチワワにチワワを足して2で割ったような顔で僕の好きな顔だった。


僕を見てから楓ちゃんは口角に釣り針を引っかけられ釣り人のおじさんに上へ無理矢理引っ張られたような不自然な笑い方をしていた。


確実に絶対に必ず間違いなく不細工な僕のことが生理的に受けつけないのだと思いそうになった。


なので笑わせようと『久慈調べ』で最も笑いがとれるパターンを試すことにした。


「僕ハーフなんだ。ドコとドコのハーフか当ててみてよ」


楓ちゃんが国名を答えたら『栃木県民と広島県民のハーフだよ』と言って笑いがおこる予定だった。


でもその予定は怪獣によって破壊された。


「生ゴミとヘドロのハーフですか?」


その楓ちゃんの言葉は僕が寝起きで急に立ち上がったら立ちくらみがして豪快に倒れて肘でスリッパラックを壊してしまった時くらいの破壊力があった。


もしもここが家でカップアイスをスプーンで食べ終わった後だったら動揺でスプーンをゴミ箱に捨ててアイスのカップを流しに持っていってしまっていたと思う。


生ゴミは肥料に変身できるので良いイメージだがヘドロは悪いイメージしかないので本心ではなくて冗談であって欲しかった。


黙っているとひとりのヒーローが怪獣に立ち向かっていった。


「生ゴミとヘドロはないですよ。


あと、都道府県と都道府県のハーフというパターンもありますけどこれを言っている人がいたらかなり引きますね。


私は日本と韓国のハーフだと思いますよ」


怪獣をやっつけにきたヒーローが暴れまわって余計に被害を広げた形になってしまった。


フォローをしたつもりの『ミス平均顔キャバ嬢』の桜ちゃんと僕のタイプである楓ちゃんに引かれないために僕はこう言った。


「日本と中国のハーフなんだ」


親が栃木県民と広島県民で広島は中国地方なのであながち間違いではない。


桜ちゃんがいなくなった後に僕はマシンガントークでも火縄銃トークでもない普通のピストルトークをしたが楓ちゃんはマシンガン相づちをしてきてつまらなそうにしていた。


そこでいわゆる『魔法成金』の僕は一番高いお酒、いわゆる『イチオサ』を頼んだ。


すると楓ちゃんはドライアイが心配になるくらい瞬きを全くしないでこう聞いてきた。


「仕事は何をなさっているんですか?」


「IT企業の社長だよ」


IT企業はインフォメーションテクノロジー企業の略ではなくてITSUWARI企業の略のつもりで言ったので嘘ではない。


僕が社長だと知った後の楓ちゃんは高校に入った途端にメガネをコンタクトに変えて茶髪にして毛先を遊ばせた友達くらい僕への態度が変わってしまった。


「小指可愛い」


僕に興味がなかった楓ちゃんが僕の短い小指に食いついてきた。


小指に食いついてきたといっても実際にしっかり噛んで離さなかったわけではない。


そんな夢のようなことは起こるわけがないのだ。


「私の手と比べてみましょうよ」


もやし5本を山芋にぶっさしたような楓ちゃんの右手と僕の左手が合わさった。


「私よりも小指がかなり短いです」


僕は『アイドル握手会事件』以来初めて女性の手を触った。


『アイドル握手会事件』とは初めて行った握手会でのアイドルとの会話が僕の手の冷たさの話題だけで終了した事件のことである。


今まではお酒を避けてきたが今は『好きだよ酒』と叫びたいくらいだ。


酔ってしまった僕は『喋る声は可愛いのに歌い出したらカッコいい声に変わる歌手』みたいに別人になっていた。


「暗がりでさらに鏡越しなら僕は世界一カッコよく見えるんだよね」


「普通の明るさで直視しても十分カッコいいですよ」


これが本当に僕を生ゴミとヘドロの子呼ばわりしていた人なのだろうか。


お金は恐ろしい、お金は怖い、お金は恐怖だ。


『マッチ売りの少女』よりは可哀想ではないがお金にしか興味がない『媚売りの美女』も可哀想だ。


カッコいいと言った時に楓ちゃんは目がキョロキョロして眉と耳と唇と鼻がピクピクしていたが気にしていない。


冬眠から目覚めたばかりのクマのように楓ちゃんがフルーツにかぶりついているのを見ながら話を続けた。


プロ野球中継を見たい父とアニメを見たい子供のチャンネル争いのように僕が面白い話をしていると楓ちゃんはすぐお金の話に変えたがった。


「お金はいくらあるんですか?」


「世界中のイクラをいくらでも買えるくらいかな」


渾身のダジャレ[お金好きな人向けバージョン]を披露したが面白いくらい滑った。


「よく分からないですけどとにかく大金持ちなんですね」


ダジャレは回転寿司で明らかに長時間回っている『お局寿司』のようにスルーされてしまった。


もしも天然マグロの大トロのにぎり寿司と100万円の札束が流れてきてひとつしか選べないとしたら楓ちゃんは間違いなく100万円を選ぶだろう。


この店は焼き肉をタレではなく塩でもなくレモン汁でもなく青じそドレッシングをつけて食べる食べ方と同じくらい好きになった。


「ここ結構気に入ったよ」


「ニワトリのモノマネ似てますね」


始めは分からなかったが楓ちゃんは『ここ結構』を『コケコッコー』だと思ったみたいだ。


媚びるのに必死すぎて楓ちゃんは重大なミスをしてしまったがそこも可愛いからいい。


楓ちゃんより可愛い女性を見つけてきてと言われもタイムカプセルより探すのが難しいだろう。


部屋に蟻が来たりすることくらい在り来たりだが僕はキャバ嬢に恋をした。

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