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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
第五章 河合和香
17/110

#17 マイナスのポイントを貯めないためのポイントは何

男女5000人に河合和香ちゃんの写真を見せて『この人はアゴがしゃくれてますか?』と聞いたとしたら4890人が『はい』と答えるくらい河合和香ちゃんはアゴがしゃくれている。


豆腐は冷凍すると水分が抜けて食感が変わり別の食べ物になって元に戻ることはないが冷凍した豆腐のように一度しゃくれてしまった河合和香ちゃんのアゴも元には戻らない。


冷凍した豆腐には普通の豆腐にない良さがあるようにアゴが出ている河合和香ちゃんにも普通の河合和香ちゃんにはない良さがあるのだと信じたい。


5回アゴ関連の言動を河合和香ちゃんにしたら別れることになるが今のところ『あごだしを使ってるよね発言』の1アゴポイントだけなので別れまであと4アゴポイントとなっている。


小学生の時に道の端を歩いていたら自転車のおじさんが前から来てぶつかりそうになったので真ん中に避けたら「道路の真ん中を歩くな!」と自転車のおじさんに怒鳴られたことがあったが、今いる『喫茶ヨンソハダ』に長くいすぎたらその時のように怒鳴られるかもしれないのでまだ5分しか経っていないが怯えている。


あと数日で河合和香ちゃんと僕の記念日みたいなので『膝掛けは膝以外に掛けてもいいのか』について語り合うのを早々に切り上げて記念日話をする流れになった。


「もうすぐで初めて二人で喫茶店に来てから100日記念日ですね」


『初めて二人で喫茶店に来た日=初めて普通のビールのことをイエスアルコールビールと呼ぶ人がいると知った日=初めて僕たち二人が会った日』なので『出会ってから100日記念日』としても良かった気がする。


『出会ってから100日記念日』と言わずに『初めて二人で喫茶店に来てから100日記念日』と河合和香ちゃんが言った理由は喫茶店推進協会の会長に操られているのか、どんな場面でも喫茶店関連の言葉を入れて喋ってしまう効果がある薬を混ぜたコーヒーを飲んだかのどっちかだろう。


「お互いにプレゼントを渡そうよ。和香ちゃんは何がいい?」


「ハンカチーフください」


河合和香ちゃんの滑舌が悪いので『あなた私服ダサい』にしか聞こえなかったが話の流れからいって「ハンカチーフください」で当たっていると思う。


「雅人さんは何がいいですか?」


「じゃあ自転車くれるかい?」


「はいアゴ関連ワードを言ったので印鑑を押します。ポイントカードを出してください」


鶏肉と卵の親子丼だと思って注文したら鱈とタラコの親子丼が出てきた場合は「え、何で?」と思うが、今も「え、何で?」と思ってしまった。


「しゃくれと言いましたよね」


よく考えてみたら僕が言った『じてんしゃくれるかい』には確かに『しゃくれ』という言葉が隠れていた。


カレンダーを上の部分が少しも残らずに綺麗にめくれた後は全てが上手くいく気がするが今は全てが上手くいかない気がする。


今の不安は目覚まし時計の電池が切れたり、目覚まし時計のアラーム解除専門の侵入者のターゲットにされたりして、アラームが鳴らなくて遅刻したらどうしようという寝る時の不安によく似ている。


今、増やしてほしいものはアゴ関連の言動をしてもいい回数と僕が一番気に入っているジーパンのベルト通しの数である。


2アゴポイントが貯まってから『アゴ関連ワード』を言わないために口数が減ってオーケストラでシンバルを叩くのと同じくらいの間合いで喋ってしまっていた。


結構長い間沈黙していたが僕と河合和香ちゃんは長年連れ添った夫婦ではないのでかなり気まずい。


僕のおじいちゃんは耳が遠いのでいつもテレビの音量を最大の100に設定していたが、このような沈黙よりもテレビ音量100の方がましだ。


言わないように気をつけていたがよく考えてみればアゴ関連の単語なんて「胸椎と仙椎の間にある椎骨の『腰椎』の数」くらいしかないので何回も言ってしまうことなんて滅多に無いのだ。


だから喋って喋って喋って喋りまくって話して話して話して少し休憩して話しまくった。


「話聞いてよ。昨日Tシャツだと思って手を入れたらスボンだったんだよ。面白くない?それでね……」


小学生の時に友達を『からかった』ことで先生に怒られて僕は涙を流したがその涙が思った以上に『からかった』こととその時の先生が今の僕みたいにお喋りだったことを覚えている。


「こちらサーロインステーキです」


僕の足のサイズは24.5センチメートルと男にしてはかなり小さい方だが今、運ばれてきた僕の足の大きさくらいのステーキはステーキにしては普通の大きさだろう。


アゴが落ちるほどおいしいステーキだったが『アゴ』という言葉を言ってはいけないので「ほっぺたが落ちそう」と言うことにした。


「おいしすぎて唇が落ちそう」


「私も」


おいしすぎて言う言葉を間違えたがとても素敵なステーキでキャッチフレーズを付けるとしたら『ステーキ観念をぶち壊す敵無しのステーキ』である。


「こちらタコライスです」


喫茶店のタコライスをすごくなめていたけどかなり美味しかった。なめていたといってもペロペロの方ではないしタコライスといっても甘辛く煮たタコがのっているご飯の方ではない。


「おいしいね」


「はい」


さっき喫茶店の自動ドアに挟まれそうになったくらい『ついていない』が河合和香ちゃんの口の下の方には、ご飯粒が付いていた。


「あ、ごはん粒付いてるよアゴに。取ってあげるよ」


「はい。アゴと2回言ってアゴを一回触ったので計3ポイントです」


3アゴポイントはバスケットボールでいうと指定された遠い場所から得点を決める『3ポイントシュート』と同じ点数なのでかなり難しいことだ。


そして、ゴルフでいうとパーから数えて3打少なくそのホールを終了するアルバトロスと同じだと思うので滅多に起こらないことだ。


たまにしかないと思うが『全身に鶏肉をくくりつけられて動物園のライオンの檻に入れられた』時に眠くて寝てしまうくらいの油断をしていた。


「5ポイント貯まったので別れましょう。さようなら」


主人公が魔法使いなのに魔法をほとんど使わない小説と同じくらい『すぐに5アゴポイントを貯めてしまった僕』は河合和香ちゃんに期待外れと思われてるだろう。


サッカー中継があるのを忘れて他局のテレビ番組を見ていたらその局で後日放送するサッカー中継のコマーシャルをやっていて今日サッカー中継があることを思い出させてくれたのに違うチャンネルに変えてしまうことになるのでその局の人に『ごめんなさい、そしてありがとう』と言いたいが、アゴ関連の言動を5回言ってしまったもののすごく楽しかったので河合和香ちゃんにも『ごめんなさい、そしてありがとう』と言いたい。

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