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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
第四章 冬野香織
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#12 ホラー映画の見すぎに注意しよう

秒給0.3円だった冬野香織ちゃんの給料は志望した会社に正社員で採用されて月給25万円になったみたいだが計算が苦手なので減ったのか増えたのかよく分からない。


僕が言ったことが全て現実になったので冬野香織ちゃんは僕に永久脱帽したみたいだ。


夜に自転車で走っていたらライトの調子が悪くて明かりがついていなかったようで警察に呼び止められて生年月日を聞かれたが年号を間違えてしまい未来人みたいになってしまったことがあったが冬野香織ちゃんは僕を未来人だと思っているだろう。


これは嘘だが僕は冬野香織ちゃんが大嫌いなので正社員になろうがアルバイトのままだろうが僕には関係ない。


これは本当だが冬野香織ちゃんにとって仕事は趣味で休みが苦痛だと言っていたが「これは食洗機に対応していますか」が口癖なのに家には食洗機がない友達くらい変わった人だ。


僕・久慈は9時にクジラ並に大きいスーパーのくじ売り場の近くで待っている孔雀のように美しい女性のところへ頭の傷が絶え間なくジクジク痛むのを我慢しながら会いに行った。


持ち合わせがないのを待ち合わせ場所に行く途中で気が付いたが魔法で何とかなるのでそのまま向かった。


普通の待ち合わせ場所に普通に着いて普通に歩きながら普通の顔をして普通の声で普通の冬野香織ちゃんに普通に話しかけた。


「香織ちゃん」


「キャッ!」


満員電車でウトウトしていたら隣に座っていたおじさんに耳元で爆発したかのような大きいくしゃみをされてすごくビックリしたことがあったがその時の僕と同じくらい冬野香織ちゃんはビックリしていた。


「ホラー映画のDVDを見すぎて少しの物音でもビックリするようになったんです。だからいちいちビックリするけど気にしないでください」


冬野香織ちゃんがビックリすることとガスの元栓と玄関の鍵と大好きな漫画の34巻を間違えて2冊買ってしまったことは気にしないでと言われても無理だ。


「ビックリさせないようにするね」


「ハッ!」


僕は『ビックリさせないようにするね』という言葉で冬野香織ちゃんをビックリさせてしまった。


床が抜ける夢を見たばかりなので僕が現在一番気にしているのは床が抜けないかどうかだ。


ここに来る途中に床を気にして下ばかり見ていたので頭を電柱にぶつけてケガしてしまったがケガは気にしていない。


一番経験したくない回文は『がけでケガ』なので『電柱でケガ』はましな方だ。


ケガの具合を大袈裟にいうと誰にも治せないほどの重傷で、小袈裟にいうと一時間経ったら忘れるほどのケガで、普通にいうとごく普通のケガだ。


「ねぇ?」


「ワッ!」


「どこ行きたい?」


「ハッ!ボ、ボ、ボウリング行きたいです」


「このままビックリするのをやめないと視聴者の怒りのエピソードを紹介する番組に『彼女がビックリしすぎて怒っています』という投稿をするよ?」とは言っていないのに冬野香織ちゃんは怯えていた。


怯えている理由はたぶんホラー映画の見すぎで僕のことを幽霊だと勘違いしているからだろう。


なれ寿司は何度食べても慣れないし馴れ馴れしい人も全然慣れないが『ビックリ人間・冬野香織』のビックリする時の声には慣れてきた。


『名字をカッコよく言い換えると「ウインターフィールド」となる冬野香織ちゃん』も音に慣れて欲しいものである。


「今すぐ見た方がいいホラー映画を占ってください」


水族館で『ほらっエイが』とジンベイザメを指差していた父親とビックリしなくなる方法ではなくオススメのホラー映画を占うように言ってきた冬野香織ちゃんに『何でだよ』と言いたくなった。


ボウリング場にやって来たがボウリングといっても『立ててある棒にリングを投げて遊ぶ「輪投げのようなもの」ではない。


ボウリングとは重たいボールを恨みを込めて投げて遠くにある大嫌いな人たちに見立てた10本のピンをぶっ飛ばすストレスを解消するための遊びである。


僕は床が抜けないか確認しながら準備をして冬野香織ちゃんは『ボール落下音』と『ピン倒れ音』と『拍手アンドハイタッチ音』と『喜びの声音』にビックリしながら準備をしていた。


その時、僕が大好きなコマーシャルなどで大活躍中の女優さんの声を一度も聞いたことがないことと誰かが僕たちに近づいてきたことに気付いた。


「香織、何してるんだ?」


「ハッ!お兄ちゃん」


冬野香織ちゃんのお兄さんはクリームパンみたいな手、メロンパンみたいな丸い顔、食パンみたいな質感の肌、そしてカレーパンみたいな肌の色をしていた。


『このTシャツダサいですか?』とプリントされたTシャツを着ているのでお兄さんは悪い人ではなさそうだ。


「お兄ちゃん、今日もボウリングしているの?」


冬野香織ちゃんのお兄さんはニートで全てが自由時間なので十字架のネックレスをして毎日10時間ボウリングしているのだとか。


僕たちのレーンはお兄さんと隣だったが昔友達と同じ時期に機種変更した携帯が『僕たちは何もかも一緒だからね』という気持ち悪いことは言っていないのに同じ機種で同じ色だったことくらい偶然だ。


夢ではボウリングボールを投げる途中で床が抜けたので投げる前に片足でタップダンスをするみたいに何回も床を足で思い切り叩いて確かめた。


「ドンドン」


「ハッ!」


「ドンドン」


「ヒッ!」


今になって抜けるかもしれない床のことより周りの人にどう思われているかの方が気になってきた。


「まともな人間、俺しかいないじゃん」


ニートでボウリングを一日10時間やっているのにスコアが100以上いったことがなくて着ているTシャツに値札が付いているお兄さんには言われたくない。


第一投の前に全部繋がっていて長さが70メートルくらいあるラーメンの麺を一気に全部すする時のように思い切り息を吸い込んで吐き出した。


ボウリングは一度もやったことがなかったが何回もやったことがあり慣れている『スイカ転がし』の感覚でボールを勢いよく投げた。


『「何で?」が口癖の年下でイケメンの元同僚』に見立てたピンだけが残ったように見えたが『僕にだけティッシュを渡さないティッシュ配りのお姉さん』に見立てたピンが壁にぶつかり跳ね返って『元同僚ピン』に当たり倒れた。


ヘタなお兄さんの前でストライクをとってしまったので若々しいことで有名な女性に「何歳に見えますか?」と聞かれて60歳と予想したら63歳だった時くらい気まずい。


お兄さんの腕の筋肉は盛り上がっているがこの場の雰囲気は全然盛り上がっていなかった。

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