表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
最終章 久慈雅人
110/110

#110 もう恋なんてしないなんてもう言わないで絶対

自分がCDをリリースするとしたら、シングルでもアルバムでも、全て一曲も被らずにリリースするだろうけど、僕はそんな感じで新しいものを追い求めて追い求めて、過去より未来という考え方で生きてきた。


宇野真帆さんという人に再会して色々と思い出して、僕が昔魔法使いだったということも思い出したのだが、【英国の人は普通の言葉として英語を使っているのだから、かっこよさのために日本語を英語にするのはいかがなものか、何でかっこよくなるんだ、よく分からないな】と思っていて、そのことと同じで、魔法使いだったことがよく理解出来なかった。


スマホやタブレットのタッチパネル対応の手袋を買ったけど、人指し指と親指しか対応してなくて、中指を多用する僕には不便で仕方なかったが、魔法使いだったという情報がよみがえってしまったおかげで、不便な生活に少しだけ変わったような気がした。


メロン味で緑色をしたかき氷の白くまがあるのだから、ほうじ茶のものもあっていいと思っているのだが、そうなるとほうじ茶は茶色だから、ただのくまになってしまって、それと同じで、僕は昔は魔法使いだったらしいが、魔法を使えなくなったみたいだから、だだの人間でいいよな。


一人で部屋で即席のラーメンをすすりながら、『特技を聞かれたら、すごいと思ってほしくて、つい【クラシックバレエ】に寄せた発音で【チラシ配り】と言ってしまうだろうな』とか、『餅つきは一年の始まりで、嘘つきはナントカの始まり』という言葉があるから、まあナントカなるだろうとか、考えたりしていた。


思い出した方がいいけれど、思い出さない方がいいとも言えて、思い出しても思い出さなくても、どっちでもあまりよくないよ、みたいなあることを思い出してしまって、今は『AB型のなかにいるA型が作り上げた過密スケジュールに、AB型のなかにいるB型が苦しめられている』という状態に似た苦しさになっている。


僕は罪を犯した人間だと思い出してしまったし、僕は罪を犯した人間だと思い出してしまったし、僕は罪を犯した人間だと思い出してしまったし、僕は罪を犯した人間だと思い出してしまったし、僕は罪を犯した人間だと思い出してしまった。


ラーメンをすすっていると、部屋に宇野真帆さんが訪ねてきて、昔付き合っていたこととか、僕がボケ回答と真面目回答の二つのポイントで競う大喜利クイズ番組が見てみたいと言っていたこととか、感情言語のバリエーションでいうと日本語は世界一だろうと僕が言っていたこととか、eスポーツがオリンピックの正式種目になるまでに僕は変わりたいと、昔、僕が口にしていたこととかを、話してきた。


僕の好きなタイプは≪日本語での会話が何となくでもいいので成立する人・全生物を対象とした好きな生物ランキングで僕をベスト10に入れてくれる人・ニンニクが嫌いではなくていいが好きではない人・沈黙がないほど話し掛けてくれるお喋りだがTPOを守って喋れる人・何があっても好き度が5割を下回らない自信がある人・見てから一秒以内に女性だと識別出来る顔の人≫みたいな感じだが、宇野真帆さんはこれにほとんど当てはまらないとしたって、好きなタイプに入るだろう。


僕に入院するほどのストレスを与えない人とか、かなりの変人マニアが引くくらいのド変人とか、恋愛面のことを全て自分の意思でリードしてくれる人とか、幸が薄い系とか、一途のギャルとか、好きになると究極な自分磨きを開始する人とか、美人と親友のブスとか、そんな感じの人もタイプだが、これらと宇野真帆さんとは少しタイプが違うけど好きだ。


罪を犯したから宇野真帆さんとは付き合えないことは分かってるし、獄中で自分に恋愛を忘れる魔法をかけてあることをもう思い出しているし、みんなが幸せになる魔法をかけてあることも、魔法を僕が一生使えなくなる魔法をかけてあることも、もう思い出している。


宇野真帆さんを忘れ去る魔法は、その時かけていなかったが、恋愛を忘れる魔法を自分にかけてしまったので、宇野真帆さんとの恋愛ごと忘れた気になっていたみたいで、今は宇野真帆さんが魔法を突き破ってきた形になったと思われる。


宇野真帆さんにかなり影響されていることは間違いなくて、例えば、全く流行らなかった誰も知らない50年以上前の曲を、今という時代に合わせてロック調にアレンジして、自分の曲が如くリリースしたいと思っていたり、お笑い賞レースを観ているだけで嗚咽が止まらなくなってしまうのだから、出る側なんて一生出来ないと思っていたりするところだ。


ラーメンと鼻水を啜ったり啜らなかっりしていると、意志をもった100㎏くらいの人形が人間の気配を察して、地面に落ちるように元の人形に戻った、みたいな音が上の階からして、その数秒後、宇野真帆さんに『青みがかった黄色いピンクのような人だね』と言われた。


色んな色を持っていてよく分からないとか、想像もできないものを持っているとかそういうことで、たぶん、様々な面を持っているという意味もあるかもしれないと思ったが、宇野真帆さんはいつも変わった例えをしてくれるので、なんかスガスガスガしい。


昔の僕は、世界中の相容れない大人たちのために頑張らなくてはならないとか、小説を書いても読者に3分の1も伝わらないなとか、再放送でも思いきり笑える人間になりたいとか、今地震があったけど時計見たら04:22:19【死にに行く】だったなとか、少し暗いこと考える人間だった気がする。


今もそうだけど、前とは少し変わってきていて、どのくらい変わったかというと、【6メートルの幅がある川の向こうに、大事な人が取り残され、今にもその場所が無くなりそうなとき、手元に長いものがなかったら、8メートルくらいはあるらしい自分の腸を伸ばして、お助けロープとして使うだろう】と思えるくらい成長した。


横断歩道で立ち止まっている人がいたから、車のブレーキを踏んだら、ただ立っていただけで渡る予定がない人で、そういう状況が何度かあったから、何も信じられなくなった時期もあったけど、今は宇野真帆さんという存在がいる。


人見知りの人は、人見知りはするけど親しくなりさえすれば、普通に接することが出来るみたいだけど、僕は誰にも心を許せず、人見知ることしか出来ないから、人見知りに変わる他の呼び方を探していた時期もあった。


自分のために何かをしたいと思っていた僕から、誰かのために何かをしたいと思う僕になって、トンネルとかトンネル気味のところを通ったときに、トンネルを通ったらAMラジオは聞こえなくなるけど、FMラジオはずっと聞こえ続けるんだなって思える僕になった。


その時、今にも壊れそうで不安定なんだけど力強さもある歌声を持つ人が大好きだという宇野真帆さんに、夢でも考えたことのなかったことを言われて、【うどんと一緒に輪切りにした竹輪を入れたら、その穴にうどんが入るくらいの確率】でそれはなくはないとは思ってなかったから、驚いた。


「私と結婚してください」


宇野真帆さんは僕にそう言ってきたので、パニックでパニックで、僕のスマホスタンドはスキージャンプの綺麗なテレマークのカタチをしてるなとか、白黒で撮ったビル写真の空の白い部分が、カクカクした数字の5みたいになっていたら、カレンダーの5月の写真に使えるのになとか、他のどうでもいいことを考えて逃げていた。


でも、心は決まっていて、もちろん【おててのシワとシワを合わせようとしても左右でシワの形は違うから、合わないだろうけど幸せ】みたいに思っていて、僕は宇野真帆さんに変わった返事をしたくてこう返した。


僕のタイプは、お酒が飲める年齢であり、数え年で45歳以下の人、そして、一度でもいいので男性に可愛いと言われたことがある人なんだ、恋と激辛料理はすぐにドカンと来ることが少ないものであるけど、宇野真帆さんはドカンと来たよ。


という内容のことを脳内で広げながら、一言「ははい」と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ