#106 レンタル落ちとかいう優秀な落ちこぼれ
もしも仲間とケンカをして、仲直りがしたいという状況になったときは、仲間に飲み物の『ジンジャーエール』を渡して、僕たちは【シンジアエール】ということを、それとなく伝えたいなと思っているのだけれど、それもレンタル映画の影響かと聞かれたら、否定も肯定も出来ない。
肯定という言葉を頭に浮かばせてから、エンペラーという意味の皇帝しか頭に出てこなくなってしまったし、否定という言葉から尾てい骨に連想がいってしまったりしている。
最後に愛を分かつよ!みたいな曲が流れているレンタルビデオ店を歩き回っていると、レンタル落ちコーナーのところに何となく自然に足は運んでいて、気付けばCDやらDVDやらの背表紙を凝視していた。
レンタル落ちコーナーに来て数分がたった頃、帽子にサングラスで、アロハシャツに短パンで、ビーチサンダルを履いた、ハワイにピッタリのスタイルをしているオジサンが、隣にガッツリ近付いてきて、かなり焦った。
ハワイで思い出したけど、コーラって何から出来てるのかなみたいに思ったが、コーラよりもかき氷のブルーハワイの方が謎で、調べたらコーラノキみたいのがあるらしくて、ブルーハワイはオレンジらしくて、僕は『俺ん家』でも『僕ん家』でもない家にいるときが一番快適かもしれないと思ったこともあった。
昔、超人気アニメの主題歌をテープで聞いたときに、ぶっ壊れているような音になって、ぶっ壊れているのかなと思ったら、それは曲上の演出だったことがあって、今見ているレンタル落ちCDのパッケージの割れも演出か何かかなと思っていたら、ただの割れだった。
レンタル落ちコーナーは宝の山だな、と改めて感じて、最近はキノコにハマっていてスーパーマーケットのキノコ売り場も、同じく宝の山だなと思うことがよくある。
『【撒いた毛を拾う仕事】と【舞茸を拾う仕事】のどっちかやらなくてはならないと言われたら僕は「まぁ痛ければどっちもやりたくないけど、痛くなければね」と言うだろうけど、この映画のクライマックスの『部屋に舞茸』ではなく、部屋に撒いた毛が大量にあるシーンはいい感じだった』といつかどこかで思ったこともあったみたいだ。
映画やドラマなんて様々なジャンルのものがあるから、レンタルビデオ店が情報の宝庫であることは間違いなくて、その情報が僕の中に眠る昔の記憶を呼び起こし過ぎそうで困っていて、そんなときに、果物の名前がついた超人気曲の語尾辺りで鳴る【ヴェッ】みたいな音が、僕のお腹からした。
水を見て「この無色透明な液体は何ですか?」と聞いてくる人の総称である『水知らず』ではなくて、一度も会ったことがなくて全然知らないという意味の『見ず知らず』に近かった人と数時間後にはこんな状態になっていて驚いているが、二人のことは好きではないし嫌いでもないな、と昔に思ったことを思い出したけど、今はアロハオジサンとキレイに重なり合いながら商品をチェック出来ていて、相性がよくて驚いている。
『あの娘とは一緒のベッドで寝ています』とか言われたら、添い寝とかではなく、あの娘と同じ製造会社の全く同じ製品のベッドを使って寝ているのだと、思い込みたくなる人間の僕だが、正直言うと、オジサンが僕に早くここをどいてほしいのだということを思い込みたくない人間でもある。
まだこの店では、あまり見たことの無い部類の雑貨のコーナーに足を踏み入れる決意をして、足を踏み入れたけど、インドネシア雑貨とかベトナム雑貨とかあまり見たことも聞いたこともないものばかりだった。
ある女性がインドネシアをぎゅっとしてない方の『インドア』が好きなのかと勝手に思っていたのに、『北海道沿岸で逢うトドは……』という文章から抜き取った『逢うトドは』ではない方の『アウトドア』が好きみたいだということで、運動だけに「うん、どうでもいいけど」と思った過去を、インドネシアという言葉で思い出してしまった。
インドネシアというのはインドという国に何かしらのものが加わったことによって出来た、インドありきの言葉だろうけど、僕の名前にネシアを付けたらカッコいいかもと思っている。
僕の名前は今も昔も中間の時も、久慈雅人だったと思うので、そこにネシアをプラスするとマサトネシアになるが、豆腐を湯で沸かすと【湯どうふ】となり、【と】が【ど】に濁るように、ネシアを加えると【と】が濁る方式で考えると、【マサドネシア】になってなんかいい感じだ。
テレビ番組のバラエティー番組のセットの後ろに飾ってありそうな、置物とか色々とあってかなり興味は出てきたが、買うまでいくほどではなく、雑貨よりも、この店のどのコーナーの隅にも置いてある、ちょっとしたお菓子コーナーのお菓子に釘付けになった。
今考えていた【テレビ番組】という言葉に【グミ】という言葉が隠れるみたいにさりげなくはなく、堂々と隅にお菓子がいて、『御駄賃という言葉は【御】で十分に持ち上げて、【駄】で一気に落としていたことに気付いたとき』くらいアッてなった。
思い出したのだが、ギャルは僕が言った「おかしいな」が「お菓子いいな」に聞こえたみたいで、僕にチョコレートをくれようとしたが、僕は路上でチョコを貰おうとする変な人ではないし、独り言で言った「おかしいな」だと伝わらないのはおかしいなと思ってしまって、また「おかしいな」が口から出そうになり、必死で抑えたことが前にはあった。
ここがレンタルビデオ店だと忘れるくらい、雑貨屋気分でいてしまっていて、田中エルというモデルがいたとして、もし改名して田中エノレに改名しても、ぎゅっとすればエルだし、姓名判断的にも意味ないけど、レンタルビデオ店という肩書きも意味はないので、変えてしまえばいいのではないだろうかと思っている。
部屋でイヤホンをしてスマホでドラマを見ているとして、そこでBGMとしてクラシックを聴くとしたら、音の割合はどれくらいにしたら良いかで、いつも悩んでいるけど、レンタルビデオ店の店内で今流れているBGMの音量は、今の段階では最適な音量をしていて、そこにイヤホンをしてスマホでドラマを見てるイメージを加えていって、想像に浸っていった。
大所帯グループやその大所帯グループの系列グループが、音楽番組にいっぱい出演していたときに親が、まるでその大所帯グループの系列グループだけでアーティスト人口の3分の1を占めているかのような言い方で【人数多すぎないか?】と言っていたけど、ここの店の店員の数についても、その言葉を使いたいくらいだ。