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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
最終章 久慈雅人
104/110

#104 黄色い目玉がコチラをみてる

目玉焼きはハムをおいしくするし、ハムは目玉焼きを美味しくするけど、ハムがないと、目玉焼きの目玉はただの目玉になってしまって、あまり魅力を感じない。


卵は色々な種類の料理に生まれ変わるけど、ハムは加工食品であり、その先でカタチを変えて他の人生を歩むことはほぼ不可能に近くて、ハムに料理の他にカタチを変えて居場所があるとすれば、カタチを公に変えて、木の横に移動して[松]になることくらいだろう。


僕は最近、エッグとチキンとポテトくらいしか食べてないなとか、僕はポテっとしているチキン野郎だとか、マイナー文化人とは[同姓同名]だけどワープは[どうせ移動名]なんだよなと誰かが言っていたこととかを、思い出しながら卵をたまごポケットから取り出した。


昔、『有名人は楽じゃない』と実感した僕は、『ワイン売り場だけでは貧血を起こすな』という言葉を胸に、『ポテトチップス縦食いの刑』を受けた時のような苦しみを思い浮かべ、『骨付きチキンを骨無しチキンだと勘違いして思い切り噛んでしまった場合の痛み』を想像し、それを糧に明日に向かって羽ばたいていこうと思っていたのを、さっき頭に浮かんだポテトとチキンのお陰で思い出した。


目玉焼きを作ろうと思って、目玉の白目が紛れるような白いフライパンを使い、黒いフライパンで作った目玉焼きのような、暗闇で光る怪しい眼差しみたいな感じにならないようにして、火を付けて色々と道具を準備した。


昨日かおとといかその前か、そのまた前かそのまたまた前かに、たまごが割れなくて困ってしまって、最近の卵は殻が硬くなって割れなくなってきてるよなと思ってきていて、鉈があったら一発で割れて便利なんだけどなとか、思ったりなんかしている。


電話で僕が女優さんに「食べたいもの何?」と聞いてその女優さんが「ナタデココ!」と答えるが、その女優さんは僕の声に集中していなくて、電話をしながらやっている薪割りの指導で発した「鉈でここ!」だったことが判明するというオチのCMを撮ったのを覚えているが、僕がなぜそのCMを撮ったのかと、そのCMの重要性に疑問を抱いている。


スマホを長らく使い続けていて、久し振りにガラケーを使う機会がたまたま来たので使ったら、一瞬で目がシュバシュバしてきて、そのときくらい、フライパンに落とした卵の目玉もシュバシュバと音を立てながら焼かれていった。


耳にぴったりハマるイヤホンが見つからなくて、いつも外れてしまうのだが、ワイヤレスイヤホンをトイレの便器の領空で使っていて、もしそこでワイヤレスイヤホンが外れて落ちたとしても、ポチャリと音が鳴る直前にキャッチ出来る自信がある、ということをずっと考えていたら目玉焼き中なのにトイレに行きたくなってしまった。


でも、もしここでトイレに行ったなら、目玉焼きの白目が黒目になってしまうかもしれなくて、もし火を止めてしまったなら、ゲームをセーブせずに終わらせた時みたいな感じになってしまうかもしれないので、そのまま我慢した。


『しかしかしかいにはいらない』を『鹿しか視界に入らない』と読むか『しかし菓子買いに入らない』と読むかは前の文章によるが、CM撮影の合間のトイレで、今来ている場所に書いてある『TOILET』はトイレットと読んでいいのだろうか?と思ったことがあるなとか、最近の僕はもう昔のことを思い出しすぎている【思い出し人生】に突入している。


あれだけハムと目玉焼きの相性について考えたり、ハムについての思い出を思い出したりしていたのに、ハムを目玉に噛ませながら焼くことをすっかり忘れていて、目玉にあと乗せした。


古くなったビデオデッキを久し振りに使ったら、ビデオテープが機械に挟まってビローンってなるみたいに、ハムを忘れてしまった僕の心もビローンってなったが、ハムが『公』という漢字のように目玉としっかりと合体出来る予感がして、心が生き返った。


目玉焼きは適当に水を入れて蓋をして、蒸し焼きにすればいいと思っていて、目玉焼きはサーターアンダギーと同じ頻度でしか食べないなとかも思っていて、昔、母からクリスマスプレゼントを貰った時に言われた言葉は『サンタがあんたに』だったが、僕が今一番食べたい料理は大根おろし料理ではなく『サーターアンダギー』で、知らないおじさんが今僕に『サンタがあんたに』と言いながら『サーターアンダギー』を手渡ししてきたら受け取ってしまうほどだよな、みたいな日も昔あった。


黄身は固いよりも柔らかい方がいいと思っているが、黄身を君に変えて『君は固いよりも柔らかい方がいい』という言葉にして、誰かに言えたら良かったのになんて思いながら、蓋をして蒸し焼きにした。


完成した目玉に粉チーズを振り掛けるような案が持ち上がっていて、雪が降ったら目が喜ぶように、目玉の上に粉チーズが降ったら、喜ばないはずがないと思っている。


僕が前に、ある女優さんに話した、「パルミジャーノ・レッジャーノを菜にかけて」みたいな台詞が言いたいという夢や、『イルミネーション』に包まれて抱き合うカップルの横に突っ立っているだけの役をもっと有名になってからやって『いる意味無いでしょう』と思わせるという僕の夢は、実現に向けて動いてくれていて、それの報告が大事な話ということもないだろうと思ったことが昔あった。


目玉焼きに一番合うものは、カッタイご飯だと思っていて、ちょうどお釜に残っていたカッタイご飯を、しゃもじとお釜をぶつけ合い、カタカタと音を立てながらよそっていると、外でカラカラに乾いた【枯れ葉の中の枯れ葉】が風に押されて、アスファルトを滑り、予想以上に大きな音が鳴っていて、フライパン内からは完成しましたよ!の合図的な音が鳴った。


コンビニバイトの給料が今日に倍となることはもちろんなかったのだが、『コンビニバイト』という言葉を無理矢理変換すれば『今日に倍と』という言葉になることに気付くことが出来たので幸せは今日に倍となりハッピーだ、みたいな日もあったことを思い出したので、目玉焼き占いで大吉の『半熟状態』が現れなくても、ほかにハッピーが探せるのかもしれない。


今思い出したけど、話しかけるという常識がない店内で、テレビのCMで映った目のアップが僕の目と似すぎていて「もしかして知らない間に目のアップを盗撮されたのか」と怖くなったことのある常識がない僕は、標識のない道を猛スピードで走る車のように勢いのあるギャルに話し掛けられた過去があったみたいで、どんどん昔を思い出していくのに、目玉焼きの味は脳にも舌にもいなくて不安になった。


目玉焼きに粉チーズを掛けることも考えたが、目薬のようにオリーブオイルと塩を掛けて食べたら半熟で、 『今日、CDラジカセで聞いていた音楽が突然鳴り止み、CDラジカセの画面も真っ黒になったのでよく見たら、CDラジカセのコンセントが入ったボタン式の延長コードのボタンを背中で押してしまったみたいで』そんなことも吹っ飛ぶくらい目玉が旨かった。

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