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青みがかった黄色いピンク  作者: 高嶋ともつぐ
最終章 久慈雅人
101/110

#101 料理の料をたまに科にしてしまう

今は一人寂しく料理をしているところだが、みんなでワイワイ料理してる人なんて、極僅かしかいないと思っていて、一人寂しくとまではいかないが、一人で料理をすることは普通のことだろう。


[コメント力がスリーパットですね]という言葉がゴルフ中継をやっているテレビから聞こえてきたのだが、実況の人が解説者に言った言葉にしてはあまりしっくり来ないので、他の言葉を聞き間違いしただけだろうと思ったけど、実況の人が言おうとしていた言葉は分からないからどうしようもなく、黙々と野菜の切断に狂気染みるくらい興じていた。


今は外出先で食べられるようにと、食べやすいような箱に詰めて食べる、例の弁当というものを外出しないのに作っているところで、このキッチンという名のキチンとした場所からは退室するので、『退室先で食べるもの』という意味を辞書の【弁当】の欄に付け加えて欲しいと思った。


弁当という言葉を頭に浮かべたら、【弁】という漢字みたいなポーズをしながらいつも僕の前に現れる【当】という漢字みたいな髪型をしている人のことを思い出したりして、他にもあることも思い出したりしていた。


『点数が100点上がること間違いなし』というオーバーな塾のチラシで包んだ弁当箱を学生時代に持たされたことがあって、あるお店の内装も、その塾のチラシも斬新の一言だなと思ったことが昔あった。


数種類の野菜や息絶えた生き物の切り身をクツクツと、そしてフツフツと煮ていて、この換気扇は換気せんな!と思うくらいのムシムシムンムン状態になったので確認すると、換気扇は僕が【テレビショッピングを消音で見ていて、[腐っている時間はどれくらいですか?]みたいなテロップが出たので、意味が分からないなと思ったが、[座っている時間はどれくらいですか?]の間違いだった時】に出た一瞬のフリーズがずっと続いているように、ずっと止まっていた。


時間が確認できるものを何も持たずに、外に出掛けてしまい、道からお店の中の時計を探しながら歩いていたら、時計みたいな四角いものを見つけたのでよく見てみたら、それは換気扇だった、という近々に起こってしまったことを思い出して浸りながら、出汁に浸っている食材たちを上から見下ろしていた。


何かを飲みながら料理することに憧れがあって、テレビで昔そんな光景を見てやりたいと思った覚えがあって、早速グラスに氷を小盛にして、高二のテンションで水道からの水をグラスに注いで飲んだ。


グラスに氷を入れ損ねてひとつ落としてしまい、その氷を拾い上げて流し台に捨てたとき、『隣の小鬼はよく氷放り投げる小鬼だ』という早口言葉と『この小鬼に氷放り投げたのは氷放り投げたかったから氷放り投げた』という早口言葉を同時進行で練習しながら、お酒を嗜みながら、気長に待ったことも結構前にあったなと思った。


冷蔵庫のなかに卵があるというテイで、様々な行程をこなしてきたけど、卵はひとつも存在しなくて、メイン料理にしようとしていたチャーハンの未来は突然絶たれた。


『これを買ってきて』と言われて渡されたリストの中に『あんみつ』と『ようかん』があって、その2つの間に平仮名で『せんざい』と書いてあって洗剤ではなくて『ぜんざい』だと思い込んでしまったことも昔はあったが、たまごがあるという思い込みはあんみつや、ようかんや、ぜんざいのように甘かったと反省している。


切った具材をチャーッと炒めて、そのなかに、飯と呼ぶものバッと放り込めば、もうそれはチャーハンなのだ!と言い聞かせながら、切り刻むことに専念し、ドラマに時系列や矛盾よりも面白さを求めてしまう人間の僕なので、普通に料理を進めていった。


僕が料理という漢字の【理】の右側の【里】になったと考えたときに、【理】の左側の【王】みたいなちょっとした棚があったらなと感じていて、今はそれが無性に欲しくなっている僕がいる。


卵がないことが未だにショックで、卵は色々な料理に変身するので、切らしてはダメなことを分かっていたのに切らしてしてしまって、卵は料理の分野だけでなくオールラウンダーになれる材料で、タマゴ絡みの昔の思い出的なものもバンバン引き出してくれる万能さなのを実感した。


うまい話と500円のうな重は疑えというし、芸能界は水着姿でスクランブル交差点を3歩で渡ることくらい簡単にいかない世界で、卵とタバコは1日1回は何処かで絶対口に入れているもので、1回も口に入れないのは至難の技で、芸能界で仕事を貰うのも至難の技だろうが、一生懸命に頑張ろうと思ったことが昔あったことまで、卵は引き出してくれた。


祭り系の行事の帰り道に、大雨よりもやや弱い雨が降り始めて、全力疾走で結構な道のりを五分くらいで走って家に帰ってきたら、顔と髪の毛がびしょびしょで、ジーパンと上着は少し濡れていたのに、靴と靴下は全く濡れてなくて、全力疾走したから濡れなかったのかなとか、色々と考えたのだが、そんなことより一番気にしなくてはいけないのが、雨の中を走っているときの人の目だったことに今気づいた。


でもこれは、たまごとかそういうのがキッカケになってなくて思い出した[たまたまご光臨された昔の出来事]なので、まあ特に他に何も言うことはないが、たまたまご光臨という言葉をたまたまご使用してしまった僕は、たまごという文字に愛されているのだろう。


未使用と使用済みの靴下が混ざってしまった場合はニオイで確認するしかないと思っていて、黒酢と醤油の違いもニオイで確認するしかないと思っているのだが、ある生物の切り身を煮込んだやつの未来も、ニオイで確認するしかないと思っている。


卵のないチャーハンを炒めて、もうかなり炒めて炒めて炒めまくって、最後の仕上げに取り掛かったとき、冷蔵庫を隅から隅まで見ても、キッチン全体を隅から隅まで見ても、普通の醤油はなくて、あるのは[たまごかけごはん用しょうゆ]と書かれたものだけだった。


[たまごかけごはん用しょうゆ]という文字を見て、平仮名の中にひとつだけいる漢字の【用】みたいな、下が駐車場になっていて、上が商業施設などになっている建物が家の近くに昔あったことを思い出したり、[たまごかけごはん用しょうゆ]という言葉に同じ平仮名は【ご】しかないことを見つけたりした。


中濃ソースをかける感覚でウスターソースをかてしまい、ビーンと勢いよく出てしまい、まさにウスタービーン状態という感じになってしまい、声も出さず顔と手足の動きだけでおどけて気持ちを紛らせたことがあったので、たまごかけごはんにかける感覚で、チャーハンの仕上げにその醤油を使ったら大惨事になる気がして怖かった。


そもそも別のもの専用なのに、ほかのものに使うということに抵抗がある人間なので、普段だったら使うことはないが、ここはチャーハンという特別なものなので、僕の周りで重力に逆らっているのは寝癖ぐらいだが、ほぼ二番手の逆らうものとして、チャーハンにたまごかけごはん用しょうゆを放ちたいと思う。


炒めたやつと煮込んだやつが完成して、炒めたやつと煮込んだやつを弁当箱に詰めて、炒めたやつと煮込んだやつを食べ進めて、炒めたやつと煮込んだやつを完食し終わり、炒めたやつと煮込んだやつが入っていた弁当箱を片して今ふと思ったのだが、野菜を切っているときに包丁で指を間違えて切ってしまったのに、傷ひとつ付いてなくて、傷が付かなかったということは、包丁の切れ味が鈍くなったということにしていいのだろう。

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