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いつかの穏やかな夜

作者: アダマ

 彼は私にとても冷たかった。それでも彼は私にとってとても魅力的だった。彼はニヒリスティックで彼を追う私を冷たくつきはなしていた。私はなぜ彼を追いかけたかったのだろう?


 私の記憶が正しければ彼と出会ったのはあるコーヒーを出しているようなカフェ。たしか、室内は薄暗く、カウンターがあってその上に電球の小さなものがいくつもぶらさがっているぐらいしか思い出せない。


 なぜ彼も、そして私もそのカフェにいたのかは知らない。



 私と彼は実はたった今、出会ったばかりであった。それでも私は彼とカフェで出会った事を覚えていた。


 私は彼の姿を見つけると彼に話しかけた。私の知っている通り、彼は私にそっけなかった。冷酷な眼差しで私を見つめている。が、私は傷つかなかった。穏やかだった。彼は私に冷たい言葉を吹きかけた後で踵をかえして夜の中に出て行った。


 彼の追う先に光の玉が三つ。私はその玉があの薄暗いカフェへと行くことを知っていた。私の師はその光の玉を追う。


 光の玉の行く先は死だった。カフェには死があった。


 師はそれを追っていった。私も続いて追う。


 私は師についていったのか死についていったのかわからないが、私も死のうとしていることに気が付いていた。


 光の玉は夜の美しい道をポンポンはねるようにして進む。私はやすらかな気持ちで夜の道を歩いて行った。


 そう、私が追いかけていたのは彼ではなく、死。

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