(4)
「雫はさ、キューピッドって知ってる?」
昼休みに真希奈は唐突に雫に問う。
「はい。絵画等で見たことありますわ。
子どもの天使ような体型で翼を持ち、
髪はブロンズでクリンとカールしていますね。」
「なるほど……」
雫の説明に真希奈は何となくイメージを
膨らませる。
「あと、キューピッドって言えば弓と矢ですね。
何でも恋の矢を射つとか。」
その言葉を聞き真希奈の目は途端に輝き始め、
嬉しさを隠しきれない様子である。
「でも急にどうされたの?まさか…この前
佐藤くんに交際を断られたショックで…」
「いやいや!佐藤くんのことは
吹っ切れているから!」
キーンコーンカーンコーン…
「ほら、授業始まるよ!」
真希奈は雫の背中を押しつつ
自分の席に戻るのだった。
◇◇◇
真希奈は家に帰るなり、驚くべき光景を
目にする。
おかえり、と出迎える母の横に
あのキューピッドが平然と
立って…いや浮いていた。
「何してんのー!?」
思わず大声を上げ2人の前に詰め寄る。
「「えっ?何って…」」
2人は奇跡的なタイミングでハモった返事をする。
「夕飯の支度よ〜!突然どうしたの?
そんな大声だして…?」
「お前を待っていた。話したいことがある」
……さすがに2人同時に違うことを言われたら
何を言っているか分からない…