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そうしている間に夜が更けた。
夜気が身体を冷やし、誰もが身を抱えた。
「確かにこのままなら縄は要らないな」
皮肉を漏らしたのが誰なのかすら判然としない。何一つとして、正確な輪郭を保ち続けているものは無かった。言葉を返す気力は無いのに、義務的に足は動き続ける。
次第に負の感情が、右にも、左にも潜んでいる気がして、私は最後尾を任されているこの状況が嫌になる。
「おい」
怒声かと思うほどの低い声が落とされる。
「あ!」
続いたのは、感嘆だろうか。
「小屋がある」それが一番遠くから聞こえてきたことだけはわかった。「今夜はあそこで夜を明かそう。このままじゃ、みんなくたびれて死んじまう」
我々はとりあえずの目的地を見つけ、疲弊感を伴う安堵の息を漏らした。
今この瞬間に死ぬことは無くなった。