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最悪だった。
間違いなく、この光景は四度目のものになる。
「またここに戻ってきた」
首吊り縄が私たちを出迎えた。いや、出迎えようと、口を開いて待っている。と言うほうが正確だろうか。
「樹海の迷宮はここを始点にしているのかどうか……」桜庭は独りごちる。「歩き回るうちにここの特徴を覚え、どうやったってここに戻ってきてしまうことに絶望し、また縄が増える……」
「まあ、誰かが引っかけた縄で括るのは不快ですもんね、お互いに」聞きとがめた泊は呟いてから、「あれ、そういえばこいつらの主って」
「居ないな。確かに、死体は見ていない」
「朽ち果てたか、消失したか、持ち去られたか」
或いは、ここでは死んでいないのでは。
加えると、四人の視線がいっせいにこちらに向いた。覚悟はしたものの死ぬところへは至らなかった、気力の限り歩き続けて出口を見つけたのでは、と続けた言葉は、虚勢に違いない。
「とにかく歩くしかありませんね」