5
シャッターを切る音がやんだかと思うと、泊は怖気づくこともなく、
「ひとまず歩くしかないですよ。ここに居たって誰かが来るわけでもない。まっすぐ進めばどこかには出るでしょう」
円陣を組み、捗らない会議を開いていた私たちは、内心がどうであれそれに従うしかなかった。都合のいい伝令は訪れない。
首吊り縄の一帯を抜けると、また只管に木々が続いていく。
目新しいものはなく、全てに既視感を覚える。しかしそれは却って不安を煽ってくる。見たことのあるような景色だが、それに確信が持てない以上は、見知らぬ道を歩いているのと変わらない。
「目印でも残しておくべきだったか」
野間口が漏らすと、
「悪かったな」
加美西が噛み付く。先陣を切り、行き先を決めていた自分への非難と感じたのだろうが、目印を付けるくらいならば並んでいる誰にでも出来た。それをしなかったのは誰のせいでもないし、或いは誰のせいでもあるが、少なからず野間口の発言に誰かを責める意図は無かったように感じた。
隊列が変わったものの、間に桜庭を挟んでいたため、すぐに掴みあいの事態に陥ることは無かった。
「俺、腹減ってきちゃいましたよ」
能天気な発言に、最後尾は溜息を吐くしかない。