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気圧されるわけにはいかなかった。
いや、お前こそ、ここに入って早々、乗っ取られているんじゃないのか。
なるべく不敵な笑みを作り、挑発的に言葉を投げる。蝋燭が二人を挟み揺れている。
「そうだ、お前こそ可笑しい……」野間口はようやく、我を取り戻し、私に加勢する。「お前は昔から、みんなのリーダーだったじゃないか。泊と桜庭のとき、止めに入らなかったのも可笑しいし、こうして、今、不和を齎していることが、お前らしくない」
桜庭と泊は、思うところもあるのか、明確にどちらかに加わることはしなかった。
そうじゃない、と言える証拠はあるのか。
私が問うと、加美西はひとつ間を置いてから、目を見開いたまま、首を振った。
「わからないんだよ。入っていたって。周囲にも、本人にも。泊のときみたいに一瞬のことであれ、あとから思えばあれは誰かに乗っ取られていたのだ、と考えられるかどうか。それさえ、怪しい。何年も経ってようやく解放されて、見ず知らずの土地にいる場合だってある。それだけ、不可思議であれ自然に、受け入れようとするんだ、人の頭は、彼らを。別の主人のことを、な」さあ、と加美西は続けた。「俺はどうだ。定家、お前はどうだ。どっちに入っているんだろうなあ」
蝋燭の明かりが、ここぞとばかりに絶える。
加美西。
「なんだよ」
お前の言うそれが、大量に体内に侵入を試みようとしたら、どうなるんだろうな。
「何言ってんだよ」
私の視覚は、暗闇の中、加美西へ一心に向かう数多の何かを、捉えていた。
そして、パッと咲いた赤い飛沫が、私に降りかかる。
そうか、破裂してしまうのだな。
そんなことを思っていた。
いつの間にか、雨は止んでいる。




