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「責任の所在はどうだっていい」加美西の声は、未だ感情を伴っている。「そう言ったのは、お前のはずだよな、野間口。今やっているこれは、じゃあ、なんだと言うんだ?」
傍から見ていた私としては、彼のこの切り口はずるいようにも思われたが、全くの詭弁でないことは認めざるを得ない。誰かを悪にして、私たちは落ち着きを取り戻したいのだ。そしてそれには、加美西が相応しいのだと、共通して考えている。彼が誘い、彼が導いたからだ。
これでは、推理小説を作り上げているのと変わらない。何かが起き、それに対して納得の出来る解答を用意する。或いは、納得の出来る解答のために、それに沿った何かを起こしている。そのために生み出される犯人の、都合のいいバックボーン。卑劣なやり方にさえ思えた。
「俺が死ねと言えば死ぬ人間は、何もこういった手順を踏まなくても、存在する」加美西は淡々と言葉を継いでいく。「いくら貸したのか、何をしてやったのか、そんなことをいちいち覚えていなくても、人間には負い目や罪悪感を覚える心というものが在るからな。借りたものを返せないのならば、違う形で補うしかない、という考え方をする人間は、必ず存在する。じゃあ俺が樹海にまで足を運んで、見たかったものはなんなのか。ただの死体じゃないんだよ。俺が、死ねと言わなくても死んだかもしれない、そういった人間の姿を、目に焼き付けたかった。俺の、自覚していない罪を、刻み込みたかった。そう言ったら、お前らは、付いてきたか? 納得したか? そんな磨ききったかのような綺麗事を、真顔で受け入れたか? 俺は、お前らが思うほど、狂ってなんていない。お前らが可笑しいんだよ。常人を、常人として認識できない」




