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その音に一番驚いていたのは私だろう。反射的に泊のほうへ視線を向けると、ぐしゃぐしゃに顔を歪めている彼と、目が合った。
「あんたらのせいだろうが!」
「おいおい、どうした」野間口がゆっくり立ち上がり、泊に近付いていく。「落ち着けよ。悪かった。ほら、桜庭も謝れよ。これは、泊のせいじゃない」
「そうやって喚くのが餓鬼なんだ」しかし桜庭の口は止まらない。野間口に顎で促され、私が彼を止める役割を引き受け、立ち上がるが、「お前のせいじゃないなら、俺らのせいでだってない。考えろよ」
「止めろって」野間口は泊の両肩を押さえながら、「責任の所在はどうだっていいだろ」
同感だったが、自ずと、視線は加美西に向いてしまう。彼が先導者であるからだ。
当の加美西は、くすくすと笑い声を立てていた。
「ほら、来た。良くないものが降りてきた」止めろ、そんなことを言うな。口を挟んでみたが、「なあ、この薄闇で、お前らは、俺が俺であると言いきれるか? お前らは、本当にお前らだと言いきれるのか?」
「加美西!」
野間口の怒号が早いか、緩んだ拘束から泊が抜け出し、一直線に桜庭のもとへ詰め寄ると、上方から下方へ向け、拳を流した。
一発貰った桜庭は私を押しのけ、尻餅を突かせたことに謝罪のひとつも無いまま、泊の胸倉を掴む。
「もう、成り代わってる」
加美西はそれを楽しそうに見ながら、言葉を漏らす。
唇に触れ、笑みを浮かべ、目が、ぎょろりと回転する。
「誰に成り代わった?」
ザアザア、雨が降っている。




