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会話がなくなって、眠気が脳を鈍重にする。吸い継いでいた煙草もついに費えた。
大体、どうして死体を見に行こうと言い出したのだ。私は深く考えることもなく、誘いを寄越してきた加美西へ向けて放る。隙間風に揺れる蝋燭の炎が、ゆらゆらと彼を肥大化させる。
「死体か」転がっていた木の棒を弄びながら、「俺は別にそんなもの、見たいと思ってなんかいないぜ」
素っ頓狂な返答をくれる。
「どういうことだ?」野間口が呆れたような声を漏らした。「お前が誘って、集まったんだぜ」
「どうもこうもないさ。俺は見たかったんじゃない、なりたかったんだよ」加美西の触れていた木が折れる音が、嫌に耳を突いた。「頃合をみてこっそり抜け出して、死んでやるつもりだったんだ」
「そんなことして何になるって言うんだ」
「怪談になるんだよ。俺の死が、恐怖を生むんだ。そのための証人は多いほうがいい。それでお前らを誘ったんだよ」
重厚な沈黙が下りる。その中で、誰かの視線がうごめいているのがわかる。ぶつかり、去ったかと思うと、またぶつかる。
しばらくすると加美西はバースデイケーキの蝋燭を消すように、楽しげに息を吹き出した。
「冗談さ」
「お前、状況を考えろよ」
「何をどうしたって朝になるまでは出られない。なら、楽しんだほうが良かろうと思ったんだよ。さっきの、四隅の話と同じさ」
呆れた吐息が二つ、聞こえてくる。それで終わらせてしまうとは。
やはり彼らは狂に溺れている。
私は膝を抱え込んで丸くなった。




