1/21
1
とある樹海の、道なき道をひた歩いている。
先行する四人の後姿、空を覆い隠しあまつさえそこへ触れようと伸びる木々、這いずり回る虫。足よりも視線がよく動く。
自殺者を探しに行こうと聞かされたときは、酔狂な連中が居たものだと怖気が走った。しかしこうして同行している以上、私もその一端に違いなく、この視線も、結局はそれを全うしている。怖気すら、怖気であったのか、定かではない。
往々にして、全てのものの正体は、不明なのだ。
彼らを酔狂だと感じたが、何を持ってして狂っていると言うのか、その定義さえ曖昧なのである。
朝が来て、ぐるりと夜へ巡るこの時間軸の中で、言葉を、感情を交わし接していたとしても、彼らの正体を明言することは出来ない。一方では酔狂であると、しかし他方では純然たる常人であるとも感じているのは、見紛うことなき真実だ。彼らから見た私は、どうであるのか。そんなことは結局、些末な問題となってしまう。ひとまず、生きるためには。