祭壇でのできごと
「天野様のお仲間でないと?」
神官長が質問してきたので、俺は答えた。
「だから、あいつらは高校生で、学生な!それで俺は一般の社会人!大人です。」
神官長は、しばし考え込んでいた。
「まさか、いやそんなはずわ」
神官長はぶつぶつと言い出した。
「いまごろ、思ったんだけどさあの人誰?」
高校生の一人が、ふと気づいてそんなことを言っている。
そりゃそうだ、俺もお前の顔も名前も知らないよ。
「あ!!」
ふと思いだした。神官長の言っていたことを思い出した。
神官長は確かにこう言っていた。『こちらの世界も日本でも力ある者は、他の力ある者が集まりやすい』と、俺はどうだ?こいつらとは今日始めて会った。結論からすると
「まさか、こいつらの勇者召喚に巻き込まれた?」
冗談じゃない。
ここでやっと頭が冷静に働きだし重大なことに気づいた。日本人の悪い癖、回りに流されやすい。そう、神官長の誘導によって勝手に話が進んでいることに気づいた。
そもそもがおかしいのだ!
勇者召喚されました、人間がピンチなんです、危害を加えてくる種族倒してください。なぜここまでこの人たちに尽くさなければいけないのだ?別の世界、俺達の世界でもない。ではここまでする必要があるのか?
自分達が特別だと思い込み、ファンタジーの世界!
それでこいつらは大事なことがなにも見えていない。
一番大事なこと、それは。
ここはゲームではない。
死んだらおしまいの世界なのだ、神官長はこうも言っていた『現在人間国は多種族によって、過去最大数のときにくらべ、人口は1/4まで領地は1/5まで減少』と説明した。すなわち人間族が多種族によって殺されていることを。そうこれは、人間族と多種族の戦争なのだと。
死んだらおしまいなのだ、そのことに高校生のやつら気づいていない。自分達は勇者だ特別だ。持ち上げられて浮かれてやがる。
「神官長、俺はどうも一般人だ。たまたま、こいつらに巻き込まれてこちらの世界に来てしまったようだ。だから、元の世界に返してください。」
俺が神官長に、間違えて呼ばれたのだから戻せと話していると、
「まじで、この人の職種一般人だって、かわいそ」
「おい、やめろよ。一郎」
天野が友人の鈴木一郎を注意していた。
「そうよ。他人のこと馬鹿にしないの。ねえ、天野君」
別の女の子、香坂鏡花も鈴木を注意していた。
「大変申し訳ございませんが、すぐに元の世界に戻ることはできないのです。」
「「あーーー!!!」」
「どういうことだよ?」
全員がおどろいていた
おれが神官長に詰め寄り質問する。
「説明いたします。」
神官長の説明によると、勇者召喚は聖魔法の神級だという。この神級というのはどの神級も神様の力を借りて使用する魔法だという。神様と対話し力を借りて(大部分を補助してもらって)しているのだと勇者召喚には、聖鋼石という、こぐまれに聖邦山で発掘して取れる石が四つも必要だと。
見れば魔法人の外四隅に砕けた石がころがっている。なんども言うが、神様と対話して力を借りなけれがならない。今回、勇者召喚人神アルベロにこのままでは人間が滅びると何回も何回もお願いしてやっと1/4まで人間が減少したところで人神アルベロが勇者召喚に応じてくれたそうだ
そしてさらに、勇者帰還についても勇者帰還のお願いをしたところ、こう言われたそうです。
『勇者を元の世界に帰還させるのは、この世界の人間族が平和に暮らしていけるようになったと、私アルベロが認めた場合、力添えをし勇者帰還ができると、異世界からのもの達に伝えなさい』
そう人神アルベロがこのせかいの人間族が平和に暮らせると認めさせること
「まじで!ふざけるなよ!勝手に呼んでおいて、人間族が平和に暮らしていけるようになったら?それはいつ人間族が平和に暮らせるようになるんだ?」
俺の怒りも、頭ぶちぬけ状態だった。それを見かねた、天野が俺に話しかけてきた。
「あの、まずは落ち着きましょう。神官長さんが、言っているほかにも帰る手段があるかもしれませんし」
「それはありえないでしょう。他にも確かに神はいらっしゃいます。ですが、勇者様は人間です。多種族神が人間である勇者様に力を貸してくれることはないでしょう」
きっぱりと神官長が断言した。
「では、一番確実な帰れる方法の人間族が平和に暮らしていける世界にしましょ」
神官長の言葉を受けて、天野が全員に呼びかける。
「おまえ天野って言ったな。わかってるのか?こいつらはおれたちに、戦争をしろといっているのだぞ。
しかも、人間族では到底かなわない力を持ったやつらとそう、『殺し合いをしろと』言ってんだぞ。これはな、ゲームではないんだよ、死んだら終わりなんだぞ」
神官長の顔色が変わった。
さっきまで笑顔だったのが、急に真剣な顔に変わっていた。
俺は神官長の顔色が真剣な顔に変わったのをみて疑問に思った?何かがおかしい?神官長の話が全部うそではないだろうが、全部が真実ではないように思えた。これは大人の勘だ。社会人で取引相手との交渉など社会でもまれてきた俺の勘だった。それでも、これ以上の情報がない以上は、うそとも真実とも言えない。
そんなことお考えていると、神官長の後ろにある上り階段の奥にある扉が開いた。そこから現れたのは、巫女装束の美少女だった。もう、ど真ん中。顔は小顔で身長160cmぐらい、胸はDカップぐらいだろうか
かなりのバストだ。全体的に細身と。神も黒髪のロング、腰まであった。
そうまさに、 大 和 ナ デ シ コ !!!!!!!!
・・・・・・・。
おっといかん、冷静に。
そんなことお思っていると、出てきた女の子が語りかけてきた。
「勇者の方々、巫女のベッセコ、リーリオと申します。この度は勝手にお呼びだてしてまって、申し訳ありませんでした。神官長から聞き及んでいると思われますが、現在人間族は滅びの危機にあります。そして、勇者の方々はわれらよりもすぐれてた、戦闘スキルをお持ちと聞いております。」
そこまでいって、階段上の祭壇らしきところで、正座ですわれた。
「申し訳ありませんが、座ってしゃべることをお許しください。」
神官長があわてたように、巫女に話す
「巫女様お体に触ります。召喚魔法の後で消耗しております。どうぞ、奥でお休みなってください。」
神官長はかなり心配しているようだ。
「いいえ、私が勝手にお呼びだてしてしまっているのです。これが最低限の礼儀です。勇者様方大変申し訳なく思っております。しかし、勇者方に頼るほかもう道はないのです。力を貸しては頂けないでしょうか?」
そう言うと、巫女は両手を前にそろえ、深く頭を下げた。
「一つ聞いてもいいですか?」
天野が巫女に質問をした。
「なんでしょうか?」
「ほんとうに人間族は僕達以外では滅亡を回避することはできないのですか?」
天野は巫女に問いかけると、巫女は悲しい表情で答えた。
「はい。私の故郷は6年前に獣人族によって奪われてしまいました。もちろん抵抗いたしましたが、戦闘にすぐれている一族です。結果的に負け。故郷は奪われ、同郷の者達もバラバラになってしまいました。捕らわれた者達は奴隷されてしまいます。私はそのとき首都におりましたので、生きながらえましたが。
故郷の者達は8割は生存がわからない状態です。父母妹とも連絡がつかず、うわさでは奴隷にされていると聞きます。」
ここで一度、巫女は間をおいた。
「私の故郷だけではありません。獣人族・魔人族に国境が接している。大部分で同じようなことが起こっております。魔人族にほろぼされた町・村は人間を皆殺しだと聞いています。」
巫女が話し終わると、天野は真剣な表情を巫女に向けた。
「わかりました。同じ人間としてできうる限り協力いたします。みんなも協力してくれるよね?」
天野は、後ろの同じ学生達に話しかけた
「仕方ねーな。康平につきあってやるか」
「そうだね。まあそれしかないみたいだし」
天野の選択に学生達はついて行くようだった。
おい、勝手に決めるんじゃねーよ。
ほんとに、ガキだよな。
「そいつらは、それでいいかもしれないが俺はごめんだ。割が合わん、死ぬかもしれない戦闘に行ってこいだ。帰るまでのここでの生活は?もし元の世界に帰れるとして、平和になりました。さようならか?報酬もなにもなく、ただ働きですか?ごめんだね」
と俺の話を聞いて、学生達から不満の声があがる。
「うわあー、金汚い大人だ。」
「大人って嫌だね。困ってる人を助けようとかないのかよ」
俺は大人だよ!金汚い大人だよ!俺はやけにもなっていた。こんなわけのわからん世界にいきなり連れて来られたからだ。
と、神官長が話し出した。
「もちろん、もろもろ準備させて頂きます。まず、帰還までの生活ですが、これはグラベジーナ国が帰還までサポート致します。普段は王宮で暮らしてもらいながら戦闘訓練町をして頂きます。これは王国騎士団がみなさまのレベルアップサポートを致します。首都以外の町・村での宿泊も王国が負担いたします。勇者様達専用のサポートをつけます。具体的にメイド・部下・指導者と言ったところです。また、魔人族・獣人族の戦闘でも王国騎士団と勇者様方で共闘致します。勇者様方に一方的に戦闘をおしつけることは致しません。なお、無事人間族が平和になり元の世界に帰還の際は、それに見合う報酬を用意します」
神官長の出した条件はそれなりに悪くはなかった。
「それに対していくつか質問がある。
一つは目は、報酬とは具体的に何をくれる予定なんだ?こちらの通貨がなにか知らんが、確実に元の世界とは違うと思うが。
二つ目、そもそも元の世界に帰還したときに、その報酬は有効なのか?元の世界に戻った瞬間あれないんですけどってことにならんだろうな?
三つ目は、俺は勇者じゃない。普段の生活はどうなる?報酬もどうなるんだ?最後に、これは命をかけた戦闘だ、無理にやらせるようなことはないんだろうな?嫌だって言ってるのに戦闘にいけと言わないだろうな?自分の命が一番大事だからな、危なくなったら逃げるぞ?これの了承をしてほしい。危なくなって逃げたら戦闘放棄で死刑とか言われたくないのでな。」
この俺の質問に対して神官長の返答は
「一つ目ですが、金銀宝石を報酬として考えています。元の世界で換金して頂ければと思います。
二つ目ですが、これは手に持っている物は召喚後も有効です。勇者様達の服・荷物を見て頂ければわかって頂けるかと思います。
三つ目ですが、勇者様達はもちろんですが、佐藤様もこちらの都合で勝手に呼んでしまいました。生活は保障させて頂きます。報酬も一緒にただかって頂けるのであれば、それに見合う報酬を支払います。最後の問いですが、こちらから無理な戦闘を強要はいたしません。戦闘中の撤退も個人判断でかまいません。ただ集団戦闘なので勝手な行動は困ります。撤退するときは回りの者に声をかけてからお願いします。撤退したからと言って処刑は致しません。」
俺は、ため息混じりにもう一つ質問した。
「いまの条件、だれが保障してくれる?」
神官長は、渋い顔で答えてきた。
「私どもが騙していると?」
「巫女である私が保障いたします。」
神官長が答えた後に巫女が話してきた。
「巫女である私が今の条件の保証人になりましょう。巫女である私は国王の次に発言力があります、もし条件に違反が見られた場合、私が人神教の力を使い、国王に意見いたします。もし聞いて頂けなければ人神教が保護し、その条件を保障いたします。」
なんとか大丈夫そうだな。
あの後も話は続いた。
話しているときりがないので、まとめると。巫女が神官長の言った条件を書面で記載し3部を、巫女・国・勇者で保管することに。条件の改ざんができないようにしようと言う事だ。国が違反した場合、人神教が国民に言って税を納めないようにすると言う。まあ、国民の8割が信仰している宗教だそうで。これなら大丈夫だろう。
書面の内容はこうだ
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一・元の世界に帰還するまでの生活はグラベジーナ国が保障する。
二・戦闘訓練は国が勇者達のレベルアップサポートをし。魔人族・獣人族の戦闘は王国騎士団と勇者様方で共闘致し、戦闘をおこなう。
三・無事人間族が平和になり元の世界に帰還の際は、それに見合う報酬を支払う(金銀宝石など)
四・無理な戦闘を強要しない。戦闘中に撤退したからと言って罰に問わない。
五・これは人間族が平和に暮らしていけるようになる為の、人間国・人神教・勇者達の契約とする。
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とまあこんなもんだろうと、俺も思った。書面できちっと記載されているから、約束が守られなくなることもないだろうと思った。
一旦落ち着いたところで、神官長から
「クラベジーナ国王と謁見して頂き、その後夕食会・宿泊説明をさせて頂きます。」
そんな話なので全員で王宮に移動することになった。