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Anti the normal mero drama

作者: 豆乳鍋

「みんな、聞いてー!」

 教室の後方で女子高生特有と言っていいだろう、少しばかりノイズの混じった大きな声がした。生徒がそれに反応し振り向いていく。窓側の一番後ろ、角の席に座る十和田加子も例外ではなかった。

「クラスのみんなでクリスマス会を企画してるから、出れる人は後ろの名簿にチェックよろしくねっ」

 加子は声の主である岸燐を一瞥してほんのわずかに顔を顰めた。「みんな」って誰のことなんだろうか。たぶん、その「みんな」に私は含まれていない。加子は思う。

「12月22日予定。センター前に、ぱーっとパーティしよう!」

 センター前なのにそんなの開催するなよ、と思う生徒もいるだろう。しかし、クリスマスというのはここ『ライトタウン』の住民にとって大切な行事なのだ。大きなテレビ塔の周辺――主に東側に広がる住宅地、ライトタウン。ライトタウンの住民はクリスマス間近になると各々の家を電飾でデコレートし、ホワイトイルミネーションを楽しみながら大事な人と過ごすという風習があった。三年前にライトタウンの隣町に引っ越してきた加子は「なんか動物の森みたいだな」と思いつつこれらのイルミネーションを毎年楽しみにしている。それなりに観光客も集まって賑わうし、加子も光り物が好きな大多数の女の子のうちのひとりだからである。

「いいね、やろーぜ」

「ライトタウンの住人ならクリスマス楽しむほかないだろ!」

「うえーい」

 好意的な声が挙がるが、加子は絶対行かないと決めていた。どうせ私は御呼ばれじゃない。

 クラスで目立たない加子はクラスの男子と仲がいいわけでもないし、特に会話もしない。せいぜい話すとしたら授業中に先生から「隣の人と組んで」「隣の席同士で答えを確認しなさい」と言われたときくらいだ。加子は隣の彼をちらりと見やる。

 岡本来夢。休み時間は大抵机で勉強している。一匹狼。お昼は八枚切りの食パン一枚。それが加子の彼に対する印象だった。今も勉強をしている。ざわついている教室の中なのに、さらさらと彼がシャープペンシルをノートに走らせる音が聞こえた気が加子はした。数学の演習をしているようだ。

「(指、綺麗だな……)」

 体が普通の人よりすらりとしているからなのか、指もほっそり長い。それなのに骨格は男らしい。手はハンドクリームで保湿し、丁寧にケアする女子高生のそれよりすべすべしていそうだ。

「(いくら綺麗でもあんまり来夢くんをじろじろ見てちゃダメだよね)」

 次の授業が始まるまで、加子も数学の問題を解くことにした。






 放課後加子はひとり机の前でシャープペンシルをくるくると回していた。数列と格闘してどれくらいの時間が経ったのだろうか。配布されている答えは詳細は記載されておらず、途中式がなく解説も無い、数字のみの回答であるためそれを見ても理解ができない。

 いい加減諦めようかな。加子はそう思い始めてきた。そもそも加子はもう法科系の専門学校に合格しており進路が決まっているため勉強しなくてもいい――とは言わないが、熱心に学習する必要は無いのである。

 ぶんぶん、と加子は頭を振った。でも、出された課題はこなさないと。もうちょっとだけ、頑張ろう。加子は回したペンを止め、数学Bの教科書で基礎事項を確認することにした。

「…………さん」

 コンセントレイトの中にある加子の耳に少しねちっこさが含まれた低めの声が届いた。最初、加子は自分の名前を呼ばれていることに気がつかずにそれを無視したが、テキストに人型の影が落ちていることに気づき顔をあげた。

 伏せ目がちな瞳と目が合う。

「い、ら……おっ、岡本くん」

 目が合ったことにびっくりしたことと、苗字か名前で呼ぶのに迷ったせいでどもった。彼から話しかけられるなんて滅多にないのに、どうしたんだろう。加子はどぎまぎする。

「教えるから見せて」

「えっ、あっ、でも」

「いつまで教室に残ってるつもりなの」

 加子は教室の前方、黒板の上にある時計を見やった。課外授業が終わって二時間も経っている。もうこんな時間になってたんだ。加子は自分にここまでの集中力があることに自分ながら驚嘆した。ぽかーんとしている間にノートとテキストが奪われていて、来夢はシャープペンシルでノートに書き込みをする。

「公式は理解してるみたいだけど、指数計算と変形ができてない」

 うっ、と加子が呻く。指数計算を苦手としているのは加子も自分でわかっていた。しかし指数計算を数学の教師は演習させないし、解説もテキトーだった。だから加子はその苦手を放っていてしまっている。わかっていることを他人の口から言われるなんて屈辱だ。

「ここは指数をとって式変形させれば解けるから。途中経過も書いといたから参照して」

さらさらと書き続けられる数字。その中に仮名と漢字が見えた。解説も添えてくれたらしい。

「ありがとう、岡本くん」

素直な礼を述べると、「別に」と短い返事。岡本くんはいつもひとりぼっちでコミニュケーションが苦手っぽいけど、面倒見がいい感じがする。弟か妹さんでもいるのかなと加子は思った。

「じゃ、俺はこれで。あんまり遅くなると親御さんが心配するから早く帰った方がいいよ」

テキストとノートを加子の机に置いて、来夢は机の横に掛けてある鞄を取って言った。こんな事を言うのも、きっと年下のきょうだいがいるからなんだろうな。加子の中ではもう彼は兄になっていた。去って行く来夢の背中に加子は声をかける。

「本当にありがとう。またあした」

来夢が振り向く。少しばかり間が合いて、来夢は微かにはにかみ小さく手を振りかえし教室を出て行った。

なにこれ、なんでだろう......。他の人には見せない彼の表情を見て、嬉しい気持ちが胸に広がる。

「(......私も、帰ろうかな)」

少し間を置いて加子も帰ることにした。鞄にテキストとノートを入れてジッパーを閉め、コートを着て教室を後にする。タカッタカッ、と加子の靴が鳴る音がリズミカルに階段に響いた。






岡本来夢の進路もまたもう決まっていた。有名な四年制大学へ推薦合格している。母子家庭故に世帯収入が低く、進学は難しいと思われたが勉強の甲斐あり奨学金もいくつか貰うことが出来た。

安泰だからこそ、こうやって休日に弟の面倒を見ることが可能なのだ。

「やった! にーちゃんに勝った!」

来夢と弟は公園の地面に木の枝で線を引き、マルバツゲームをしていた。

「......来人、もう一回」

「仕方ないなー?」

げしげし、と来人が靴底で図形を消している間、来夢は公園の様子を確認した。受験期だから知り合いはこの公園に来ないとは思うが、警戒するに越したことはない。自分が弟の面倒をみているところをクラスメイトに見られたくないのだ。

他の人間から「友達がいない」「勉強をする機械」果てには「血が緑色」と言われていることを来夢は言っていた。自分をどうこうしたりあれこれ言うのはどうでもいい。冷たい人間だと思われてていい。むしろ不要な人との関わりを避けることができて好都合だ。そんな自分のイメージを、自分が弟と遊んでいるところを目撃されて壊されるのは少し惜しい。

ばたばた、と誰かが走る靴の音がした。誰かがいる、と横目でちらりと見やる。

「ごみー」

風で飛ばされているビニール袋を追いかけて走っている十代後半の女子が見える。どうか、知り合いじゃありませんように。来夢はウィンドブレーカーのフードを深く被ると、制限された視界にいた来人が動いたのが見えた。

「!」

フードのせいで何が起きているか見えないため、音でしか状況を判断できない。フードを上げるべきだろうか考える。

「あっ。ゴミ、拾ってくれて、ありがとう」

「いいえー」

何処かで聞いたことがあるような声がする。やっぱり顔は見せない方がいいだろう。そう来夢は考えた。

「お礼にこれをあげるよ。飴ちゃん何味がいい?」

「イチゴがいい」

「はいどうぞ。って、ああ! ゴミが!」

その音声が聞こえて一瞬後に脚に何かが引っ掛かった。コンビニのレジ袋だ。仕方がない、と来夢はそれを拾う。走って近づいてきた彼女にそれを渡した。

「おねーちゃん、まぬけだね」

「!」

間抜けなんて言葉は来人に教えていない。何処で覚えてきたのだろうか、と得体の知れない、それを教えた誰かを来夢は恨んだ。すぐ他人を見下すそれは来夢に似ていて来夢は嫌になった。こんなところまで似ていなくていいのに。

「こら、来人! すみません」

「いえ、本当のことですから。でもボク。間抜けなんて言葉、使っちゃダメだよ」

優しく諭す声。

「なんで? 他のひとはキライとかあっち行けとか、ぼくのことを傷つけるのに、なんでぼくは汚い言葉を使っちゃダメなの?」

沈黙が流れた。ひゅうう、と風がなる音が大きく聞こえる。他の人が来人をキライと言う? あっち行けって言う? きっと間抜けだとも言ったよだろう。ざわり、ざわりと死んだ葉の呻きがする。

「来人、初耳なんだけど」

絞り出した声が震えた。フードを外し来人を見つめる。失言だった、という表情だった。来人はばつが悪そうに視線を逸らす。

「来人!」

名前を呼ぶと、来人は立ち尽くす彼女の背中に隠れてしまう。来夢はその時初めて彼女が誰であるかを識別した。

「岡本くん!?」

びっくりして声を上げる彼女、十和田加子。何処かで聞いた声は彼女のものだったのだ。

よりにもよって彼女にこんなところを見せてしまうなんて。来夢は唇を噛んだ。

「にーちゃん、このおねーちゃんの友達なの......?」

来人が恐る恐る顔を出して訊く。

「友達ってわけじゃ」

友達じゃない、と事実を告げると来人は泣きそうな声になった。加子の表情も曇ったように見える。

「ぼくと同じで、にーちゃんも友達がいないんだね」

選ぶべき答えを間違ったことに来夢は気がついた。しかし彼女と友達じゃない以上、あの返し以外ができない。来人に友達がいないのではないかということは薄々来夢も勘付いていた。ただ、事実を認めたくなくて見えない振りをしていた。

目に涙を溜めた来人に対しどう言えばいいかわからず動きがとれない。きっと加子もこの状態に困っているだろう。そう思って加子を見ると、何やら勘違いをしたのか彼女はこくりと頷いた。そして、いきなりしゃがみ込んだかと思うと、来人を抱きしめて頭を撫でた。

「......うっ、うわあああ!」

泣きじゃくる来人の声。今まで抑えていたものが溢れ出しているのが来夢にはわかった。よしよし、と優しく撫でられる手を見る。本当はこれ来夢が来人にしてやるべき対応だったのかもしれない。しかし来夢は何もできなかった。悔しさでぎゅっと握られる来夢の手に爪がくいこむ。

時間が経って来人が泣き止み落ち着いたのを見計らって来夢は来人を彼女から引き剥がした。涙を吸い込んだのかグレーのコートが濡れている。

「ごめんなさい、おねーちゃん」

「コートのこと? 気にしないで」

「それもだけど。それもだけど、まぬけだって言ってごめんなさい」

一拍間が置いて、加子はぽつりと言った。

「許さない」

「......っ、ごめっ」

「私と友達になるなら許すよ」

続いた言葉に驚いたのは来人だけではなかった。

「ちょっと十和田さん、受験はどうするの? それに、俺たちは理由があって」

来夢を遮って来人が口を開く。

「本当にいいの?」

「勿論。ライトくん、だよね。よろしく」

「ありがとう......ありがとう、トワダ!」

無視をされた来夢は溜息をついた。俺たちの事情を知らずに、考えなしに突っ込んで来るなんて間抜けだ。

「岡本くん。私、もう進路決まっちゃってるから、時々ライトくんと遊ばせてもらってもいい?」

こっちに来ないで欲しい。どうせ俺も来人も彼女も傷つくだけだ。来夢は怒りを無理やり押し込めて笑顔を作った。

「時々ね」

それよりコートのことだけど、とあからさまに話を逸らす。来人は両手を上げて喜んでいた。

「コート? すぐに洗うから大丈夫だよ」

すぐそこに水道があるしね、と言う加子。

「いや、クリーニング代はちゃんと俺が出すから」

「いいって、大丈夫」

加子はそう言うなりすぐさま水道でコートを洗った。クリーニング代を払うって言っているのに。無言でコートを洗う様を見ていると彼女がくしゃみをした。コートを脱いで水場で洗い物をしているわけだから、寒くない筈がない。来夢は着ていたウィンドブレーカーを脱いで洗い物が終わった彼女に投げつけた。

「着とけ」

「い、いや、申しわけないし、気持ちだけで」

何も答えずにじっと見ていると加子が折れた。ジッパーが上がると、「あったかい」と呟いた声が聞こえたが、ウィンドブレーカーはコートよりも薄い。本当にあたたかいと感じているのだろうかと来夢は疑問に思った。

「じゃ、私は家に帰るね。このまま外にいたらコートが凍っちゃう」

「トワダ、じゃーな!」

「ばいばい!」

あ、ジャンパーは明日、学校返すからで。そう言ってから帰った彼女を見て来夢は溜息をついた。やっとひと段落だ。

「来人。聞きたいことがあるんだけど」

加子がいなくなった。これで邪魔が入らずに話ができる。来夢はしゃがんで来人の視線に合わせた。

「悪口を言ってきたのって誰だかわかる?」

「......聞いてどうするの」

聞いてすぐどうこうはできない。来夢は自分の置かれている状況が憎かった。

「一応名前だけ把握しておこうと思って」

「はあく? 難しくてわかんないっ」

把握という単語が来人には理解できなかったようだ。来夢は名前を聞き出すことを諦めた。無理に聞くこともない。それに、来人にも干渉して欲しくないことくらいあるだろう。

「来人」

来夢がもう一度名前を呼ぶと、来人の肩がびくりと震えた。もう聞きやしないから安心してくれ、と来夢は溜息をつく。

「あいつの名前は加子だから」

だから、トワダじゃなくて加子さんな」

小さい子どもに名字で呼び捨てにされたくないだろう、と考えて来人に下の名前を教える。

「にーちゃんはトワダって言ってたけど」

純粋な来人に「俺は彼女と友達になるつもりなんてないからそれでいいんだよ」とは言うことができなかった。






教室の中で堂々と借り物の上着を返すことは加子はできない。滅多にクラスの男子と交流しない加子と、クラスの人間自体と交流しない来夢が物のやりとりをしているところを見られたらすぐに下世話な噂話が流れ出すことが容易に予想できたから、加子は来夢が一人になった時を狙い連れ出そうと画策していた。

「(でも、なかなか一人にならない)」

学校という狭い空間の中で本当に来夢が一人きりになる時間など皆無なのかもしれない。

諦めかけた時、遂に来夢と加子の視線が絡んだ。加子からの視線に気づいたらしい。

「(目が合ってしまった!)」

その瞬間、どうしていいかわからないと動揺した加子は逃げるように教室を退室し廊下の端まで駆けた。折角来夢と話すことができるチャンスだったのに、何やってるんだろう。加子は自分のことを責めた。なんで、目が合っただけで動揺してしまうのだろうか。

加子は窓の外の景色を眺めて深呼吸する。いつもと変わらない景色に加子は平常心を取り戻していく。これで良し、と軽くガッツポーズをして窓硝子に笑ってみせる。

微笑んでいる最中に、窓ガラスに映る自分の横に人がいると気づいて加子は慌てて真顔を作ろうとした。作ろうとしたが顔が引き攣る。何でこのタイミングで。

「岡本くん」

ホラーかと思うほどに感情が削がれた顔面に向く。弟と接している時は人間らしい一面も見せるのに、学校にいる時は何故こんなに冷たく無機質な表情をするのだろうか。そう考えて、さっきからなんでどうしてばっかりの自分に加子は嫌気がさした。

「......どうしてここに」

おまえが何か言いたそうにこっち見てた、と来夢が説明した。ウィンドブレーカーを持ってきたがいつ返せばいいかと告げる。「下駄箱に突っ込んどいて」と明快な返答を加子は頂いた。

「後さ、不機嫌な中悪いんだけど、俺はおまえに用事があるんだよね」

別にご機嫌斜めなわけではない、強いて言うなら軽い自己嫌悪だ。加子は自覚しているが彼には言わない。不機嫌な中悪いんだけど、が自分を煽っているようにも聞こえたが反応しない方がいいのかもと加子は判断した。彼は素でこの台詞を口にしている。

「私はいつも通りだよ。ライトくんのこと?」

「来人が明日、一緒に遊びたいって言ってるんだけど、もし暇だったら付き合ってくれないか? 予定だってあるだろうし無理にとは言わないけど」

予定がなかった加子は二つ返事でOKした。「悪いな」と来夢が微かに眉を下げて申しわけなさそうにする。大丈夫。今の彼は人間らしい優しい彼だ。加子は来夢から少しずれた虚空にあった視線を来夢の手元に向けた。一瞬だけ、しかし真っ直ぐとそれを来夢の目に移動させる。次の瞬間ソフトに視線を逸らした。今はこれで、精一杯。

「私、ライトくんと会うの楽しみにしてるね。あまり私は小さい子に好かれないから素直に嬉しい」

一昨年の保育実習で踏んだり蹴ったりというか踏んだり蹴られたりになったことを思い出すと、苦い思い出に加子は落ち着いた。何回か思い返した過去の擦り傷は自分を冷静にさせる。

「そう言って貰えると有難いけど」

やはり来人と都合に振り回すのは、と続ける来夢に加子は「私ね」と割り込んだ。

「私、岡本くんに感謝してるの」

驚くほどすんなりと紡がれた言葉に加子自身もびっくりした。しかし、それ以上に驚愕したのは来夢の方である。自分がいつ感謝されるようなことをしたか全く心当たりがなかった。

「いつも隣で一生懸命勉強してるから、岡本くんのこと見てると私もがんばらなきゃって。ありがとうって思ってるから、私は岡本くんに恩を返したい」

ここまで言えば彼も自分に対する遠慮や引け目がなくなるだろうか、と加子は来夢の返答を待つ。少しばかり間が空いて、授業開始五分前のチャイムが鳴り響いたことを皮切りに来夢がやっと動いた。

「もしかして、その台詞を言ってる自分に酔ってる? 俺を素敵な人だって勘違いしないで欲しいんだけど」

その返しに加子は無言で彼を睨んだ。自分に酔ってるだなんて、ない。ありえない。

震える拳を壁に叩きつけたい気持ちを抑える。【これ】だからこの人は友達がいないんだ、と加子は直感する。

「酔ってるだなんて断定しないで欲しい。あなたの方が私のことを勘違いしてるよ」

多分ね、と保険を掛けて加子は目の前に立つ来夢の横を通り抜ける。いい加減教室に行かないと授業が始まりそうだ。かぽかぽとやけに静かな廊下にスリッパに似た音が響く。こんなに情けない音が目立つなら、大きめのサイズのやつを買わなきゃ良かった。俯けば、靴ひもが解けたままの自分の上履き。結んでおけば良かった。悔しさにくすんだ緑のリノリウム床を睨みつけると、隣にもうひとつ靴が並んだ。それが誰かは知っているが顔を上げることができない。特に仲がいい親友以外にここまで失礼なことを言ったのははじめてだったのだ。何か言い返される、と加子は覚悟を決める。

「同じ言葉をそのまま返されると、反論できないから困るわ」

しかし、そんな覚悟とは裏腹に、投げられたのは笑いを噛み殺したそれだった。 いつもより砕かれた口調。

「ごめん」

想像もしなかった謝罪に驚いて見上げると、反射されたグリーンの光を瞳に宿した来夢がいた。その時彼がどんな顔をしていたか、加子はわからない。真っ直ぐな彼の目以外を見ることができなかった。

「十和田さんに対しての姿勢は改める。本当に申しわけなかった」

頭を下げてそこまで言われると何も反論できない。加子の方が悪かったのではないかと加子は思った。

「この件は水に流そう、うん!」

進行方向にあった手洗い場まで走り、蛇口を捻った加子は手を濡らした。

「づめだい」

勢いでとった行動だ。当たり前だが冬場だから水が恐ろしく冷やっこい。

「あー......馬鹿なの?」

「水に流しただけだよ!」

先程態度を改めると言ったばかりなのにそんなことを言うのか、と加子は思ったが改めた態度がこれなのかもしれない。実際に、来夢の顔は呆れ半分に破顔している。来夢はポケットから何かを取り出し加子になげた。

「登校してる時に道でもらったカイロおまえにやるよ、使いたければ使えば」

ビニールの感触を受け止め、加子はハンカチで自分の手を拭いた。ありがとうと言えば、「別に」と素っ気ない返事。

「明日五時にテレビ塔の前の広場で待ってる」

スライド式のドアを開けて教室に入る直前に言われたせいで加子は返事ができなかった。






ノートの端にゲームのキャラクターの落書きをしつつ最後の授業を終えると、いつものように友達が「一緒に帰ろ」と言ってくれる。

「うん、帰......」

「よかったら、帰る前にちょっと時間くれない?」

遮ったのはいつもの友達ではなく、クラスのアイドル岸燐だった。燐とはあまり話さない加子は急に話しかけられて動揺した。別に仲が悪いわけではなく接点がないのだ。だからどういう接点で声を掛けられたのか加子は疑問だった。いいよ、と返事をすれば燐は可愛らしく小首を傾げた。

「加子ちゃんと岡本くんってどういう仲なの?」

岡本、というワードに加子は顔を青くさせた。岡本くんが既に帰ってここにいないのが不幸中の幸いだ。

そう言えば燐はこの手の、所謂恋バナが好きなことで有名だった。

「どういう仲って言われても」

恋バナをするのは自由だが、自分と来夢の関係を変に誤解させることだけは加子はしたくなかった。

「話しながら教室に入ってきてたじゃん。私気になる!」

助けを求めて友達を見れば、友達も目を輝かせてこちらを見ていた。私の恋愛事情がそんなに気になるのか、と加子は溜息をつきたくなる。

でも、その気持ちはわかる。今まで浮いた話がない恋愛と無縁人間とクラスの変人が仲が良さそうにしてたら自分だって気になるからだ。

「んーと、言いにくいんだけど」

下手に嘘をでっち上げると、「怪しい」と判断され、「事実」を色々勘ぐられて恋バナの燃料にされるに違いないと加子は確信していた。こういう時は本当のことを織り交ぜてリアリティのある話を造ればいい。

「喧嘩をしてたんだ」

喧嘩? 燐は訊き返す。

「授業中、私のペン回しで集中力が切れるって怒られてた。彼らしいよね」

言い合いっぽいことをしていたことは嘘ではない。

あー、ありそう、と友達が言ってくれる。燐は一応納得したように頷いたが追撃をして来た。

「そうなんだ、ちょっと肩透かしかも。それはそうと、加子ちゃんは岡本くんのことをどう思う?」

冷静に返すべきか、焦りを顔に出すか迷って、結局ちょっと慌ててみる。

「羨ましい、かな。AO入試でK大学に入学って凄いよね」

私は地元の専門でやっとだよ、と笑って見せると燐は困った顔をした。

「......学歴だけが全てじゃないよ、加子ちゃん」

加子の感想を燐は自虐と捉えたらしい。加子は別にそんなつもりで言ったのではないが、そっちの方が都合がいい。この話はここで終わりだ。

「ううん、努力が身を結んで私も素直に嬉しいって思ってるよ。あ、燐ちゃんは推薦でT大合格したんだよね。私、ずっと燐ちゃんにおめでとうって言いたかったんだ」

おめでとう! 屈託無く言うと、友達が「初耳! やっぱり燐ちゃんは凄すぎだよー」と拍手をする。すると、クラスの男子が「岸はすげえ」「さすが燐だ」と賞賛する声が聞こえた。燐の満更でもなさそうな顔を見て加子は安心した。よ、よかった。

「お祝い、何かできればいいんだけど」

「加子ちゃんも忙しいだろうし、気にしないでいいよー。あ、でも、私、加子ちゃんとあまり話をすることがないからよかったら帰りにお茶でもどう?」

これがクラスの中心にいるコミュ力か。輝かしさにあてられる。

「うん、燐ちゃんさえよかったら行こう」

一緒にどう? と加子の友達にも聞いたが、塾らしく断られた。こうして加子と燐は喫茶店に行くことになった。




人が少ない小洒落た店。いい紅茶の匂いがして、通された椅子はふかふかして気持ちがいい。流石というべきか、いい店を知っている。

燐はルイボスティー、加子はアイスコーヒーを頼んだ。

「冬だけどアイスなの?」

「店が暖かいからアイスもきっとおいしいよ」

暫くして運ばれて来たアイスコーヒーにミルクとガムシロップを入れてかき混ぜる。このマイルドな色が加子は好きだ。

「あのね、私、加子ちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」

燐はルイボスティーに砂糖を溶かしながらいい辛そうにそう零した。

もしかして、岡本くんとの仲を取り持って欲しいのかな? 加子はそう考えた。そうでもなきゃ、私をここに連れて来ない。

「岡本くんのことなんだけど」

ほら来た。

「岡本くんと関わらない方がいいよ」

加子の予想が外れていたことに加子は飲んでいたアイスコーヒーを噴き出しかけた。勘は鋭いほうだと自負していたのに。

「今、岡本くんのお母さんがママ友イジメに遭ってるの。女の人って陰湿で狡猾。今、ライトタウンの母親は集団であの人と家族に嫌がらせしてる」

ママ友イジメ。

加子は妙に冷静だった。そう考えると、来人に友達がいないのも頷ける。

「だから、岡本くんと関わったら加子ちゃんまで......」

そう燐は続ける。しかし加子は来夢との関わりを切るつもりなどない。ライトタウンに住んでるわけではないから私には関係ないと加子は考えた。そんなのは、気にしない。

「どうしてママ友イジメに遭ってるの?」

まずは事情を聞くことにした。「そこまではわからないけど、何か悪いことをしたんだと思う。そうじゃなきゃ、ここまでのことはされない」それが燐の見解だそうだ。

「(違う気がする)」

確信は無い。勘だ。

「(でも、燃料がないといじめって広がらないから......)」

混乱する頭をまとめようとするが上手くいかない。

「教えてくれてありがとう」

ひとまず情報をくれた燐に礼を述べる。これは家に持ち帰り考えるべき案件だ。

「ううん、私......加子ちゃんのこと、心配してるから」

向かい側の椅子から身を乗り出され、加子は体温の低い手を取られた。上目遣いでそう言われると加子は固まってしまう。

「(岡本くんといい、私はこの目に弱いな)」

燐の目の中の自分が目を伏せた。


考えたけれど答えが出るはずもなく、そのまま加子は次の日を迎えた。テレビ塔で行われたヒーローショーを来夢、来人と見た加子はマフラーを巻きながら塔を出る。

「面白かったね!」

加子が昔見ていたヒーロー番組と今日のヒーローショーを重ねて観劇していた加子は「ほんとうにね」と来人に同調した。加子が見ていた世代の戦隊のブルーが方向性が似たおバカキャラだったり、ピンクの技が昔より優遇されていたり、比較して見るのも一興。グリーンとレッドの諍いのシーンも見応えがあった。

「じゃあ、遅くならないうちに帰ろうか」

来人は「もうバイバイなの?」と名残惜しそうにする。

「今日はライトくんの家までついていくよ」

やったあ! と無邪気な声をあげられると加子は嬉しくなった。来夢が何か反応するかな、と加子は彼を向いたが、来夢は何も言わず腕時計を眺めている。どうしたの、と問えば

「見てて」

とテレビ塔を指差した。そちらを見ると、数秒後に目の前の景色がぱっと変わる。赤く光っていた塔が消え去り、次の瞬間、明るい緑に照らされたそれが現れた。

「すごい」

この塔は毎日ある時刻に電飾の色が変わることが知られている。今がその規定の時間だったのだ。変わる時間は決まっているが、変わる色は決まっていない。変化した色で運勢が占えることがテレビ塔のパンフレットに記載されていたことを思い出した加子はそれを取り出した。


【ライムグリーン】

演劇で使われる証明、ライムライトと同じ名前のパワーを受け取ったあなたには、まるで舞台の上のようなドラマティックな出来事が起こるでしょう☆


加子がそれを来人に見せると、「つまりどういうこと?」と訊かれた。

「ドラマティックなことが起こるんだって」

「どらまてぃっく?」

「テレビの向こうみたいなすごいことが起きるってこと」

来夢が助け舟を出してくれる。加子にとってこうやって来夢と来人と一緒にいること自体が加子にとってドラマティックだ。それに、昨日のことも。また劇的なことが起こるのか。加子はそれが怖かった。

「来人、でも本物のライムライトってライムグリーンじゃないんだ」

帰路につき、来夢は来人に説明する。

「ライムライトのライムは果物じゃない。石灰っていう、灰色の石を使った照明だ」

「そうなんだー」

加子は思い出す。

「ちなみに同名の映画もあるよね」

有名な映画だから加子も知識として持っていた。この兄弟の名前と同じ映画だ。

「舞台に散った道化の恋の話」

来夢の何処か遠くを見るような視線に、加子は彼がその映画を観たことがあるのだと確信した。

「......あのライトは偽物だ」

来夢の言ったライトがどのライトなのか考える。テレビ塔のライム色のことだろうか。

すぐ先を歩く来人はまだ雪掻きされていない道を行き地面を固めている。彼には関係ないだろう。

一人で先に行くと危ないかも、と加子は思ったが、ライトタウンを包むイルミネーションのおかげでこの距離なら安心そうだ。

「話は変わるんだけど、このイルミネーションって何時くらいからついてるの?」

「確か七時に一斉につくはず」

一斉につけさせるくらいライトタウンの住人は結束しているんだ、と加子は判断する。

「そうなんだ......」

ライトタウンの住人。燐が言っていたことが今思い返された。ただでさえ寒いのにますます手が震えてしまう。ポケットに手を入れながら歩いた。

古めのアパートの前で来人は立ち止まった。来夢も止まる。ここが彼らの家なのだろう。ここもまた、控えめ出端あるが電飾がある。

「来人、先に帰ってて。俺はこいつ送るから」

わかった、と来人は元気に返事をした。

「送らなくてもいいよ」

「この辺は治安がいいとは言えないから」

この辺、と聞いて加子は周囲を見回した。そばにあった町内会掲示板に「痴漢注意」の文字と不審者情報のプリントがある。ここも電球が光っていた。

「じゃあ、安全なとこまで着いてきてくれると嬉しい」

来夢の好意に甘え加子の住むレフトタウンまで送ってもらうことにした。

「加子ねーちゃん、今日はすっごく楽しかった! またな!」

いつの間にか呼び方が変わっていて加子は微笑ましくなった。十和田より加子の方がいいに決まっている。

「うん、またね」

手を振り返すと、来人は満足そうに笑った。来人の整った顔が子どもらしくくしゃっと崩れる。来人は郵便受けの手紙を受け取って部屋へ向かう。それを来夢が呼び止めた。

「来人、その手紙、一旦俺が預かってもいい?」

「いーよー」

親展の手紙なのかな、と加子はぼんやり考えていた。暫くして来夢が戻ってくる。

「レフトタウンまでだっけ」

「うん。レフトタウンは安全だからそこまでお願いします」

レフトタウンはライトタウンとは対称的に暗い街。ライトタウンに対抗しているのか、「環境にやさしいレフトタウン」を名乗り、花壇を作ったり、自主的にゴミの分別を徹底したりしている。節電のためか、ライトタウンのような電飾など一切ない。それから加子はレフトタウンの簡単な紹介をした。それが終わると加子は話すことを無くしてしまった。

「(聞きたいことはあるんだけど、藪蛇な気もするし、どうしよう)」

ここは何かひとつボケをかますことで誤魔化してみよう、と考える。

「聞きたいことがあるんだけど」

しかし考える必要もなく、彼方から話を振ってくれた。

「何か嫌なことでもあった?」

加子は思いもしない来夢の気遣いを頂いた。

「えっ、別にないよ。どうしてそう思ったの?」

「俺の勘違いかもしれないけど、時折暗い顔を見せてたから」

「?」

私がいつそんな顔をしただろうか、と今日の自分を記憶の中で再生する。すると思い当たることがあった。

「(燐ちゃんが言っていたことを思い出していた時だ)」

来夢に関わるな。

「(岡本君に相談した方がいいのかな)」

加子は考えた。でも、下手に言って空気を悪くするのも避けたい。でも 黙っていても仕方がないから話してしまった方がいい。

「言いづらいんだけど、実は昨日に燐ちゃんから岡本くんと関わらない方がいいって言われて、困ってる」

できるだけ優しく言うつもりだったけれど、短い言葉はオブラートにも包めなかった。

「事情もちょっとだけ聞いちゃって、あの......ごめんなさい」

人の家の事情に踏み込むのはいけないことだが、聞いてしまったことは仕方ない。加子は来夢に謝った。

その瞬間、彼の纏う空気が変わった。

「やっぱり、あの女......加子にも手を出し始めたのか」

冬の景色の中で更に一際冷えきった雰囲気だった。自分に向けられた憎悪ではないのに竦みあがる身体。思わず胸元に手を引き寄せて目の前の恐怖に小さく抵抗する。そんな様子を見てか、来夢は加子を安心させるように微笑した。

「怖がらなくてもいいよ」

だがそれは加子に対して恐れしか与えなかった。彼の纏う雰囲気はそのままに微笑まれても平常心は戻らない。

加子は必死にふるふると頭を振った。自分に危害がないことを伝えたい。しかし、それ以上に気になることがあった。加子はそちらから質問する。

「......燐ちゃんと岡本くんって、どんな関係なの?」

きっと相手を見つめて言う。睨まないと来夢と相対できなかった。

「義理の兄妹」

「きょっ」

キョーダイ、と加子は繰り返す。来夢の兄弟は来人だけだと思っていた。

「義理の兄妹なのに、どうしてそんなに嫌悪し合うのか、わかんないよ」

「だから、だ。だから恨むんだ」

一から説明する、と来夢は立ち止まった。

「岸燐と俺は父親が同じ。俺の元父親があいつの父親。腹違いってやつだ」

歩くという運動をやめた身体は冷えゆくばかりだ。加子は手を温めようと両手を合わせる。

「俺の母親とあっちの母親はその父親を巡って確執状態。子どもとか、周りの人まで巻き込んでの泥沼バトル現在進行形なの」

手を合わせるのは、祈る姿と似ている。それを照らす街灯はサンクチュアリに似ている。似ているだけ。

来人くんに友達がいないっていうのはそのせいか、と加子は推理した。

「どうにかできない......のかな」

「どうにかしようと思って取る行動がまた不幸を呼ぶ気がして、俺は何もできないんだ」

そう言う来夢の顔を見ていられなくて加子は夜空を見上げた。電飾だらけのこの街では人口の光のせいで星など見えない。黒が広がるのみだった。

「でも、これ以上奪われるばかりでもいられないよな」

それだけ言って前に歩き出した来夢の後を加子はついていった。加子は何も言えない。

「(私にできることなんて、多分何もない)」

そう頭ではわかってはいるけれど、それでも何かないかを必死に考える。

「何か協力できることがあったら言って欲しい」

加子はそう来夢に伝えた。

「多分、俺はおまえに何も頼まないと思う」

これは俺たちの問題だからという来夢に加子は違和感を覚えた。

「それは違うよ」

これは来夢たちの問題でもない。父親と母親の問題ではないか、と加子は率直に告げる。

「廊下の時といい、よく回る口だよな」

すると、口元を人差し指でちょいと触れられる。色香を感じるその動作に加子は身の危険を察知して身体を固くした。

動くことができなかった。つい一昨日にじっと眺めていた長い指が自分に触れている。その事実がフェチズムを持った加子を止まらせたのかもしれない。

「俺はもう引き返せないところまで来てるんだよ。虐げられるだけ虐げられて終わりだなんて絶対にない」

リップのせいで来夢の指についた薄い紅を舐められたことで加子は頭が真っ白になった。

雪がちらちらと降り始める。加子はその結晶になぜか冷たさは感じなかった。

「だから、俺は覚悟を決めた。もう迷わないし、けじめをつけることにする」

けじめ。

その言葉に加子は不安を感じた。しかし、彼は前に進もうとしている。応援しないはずがない。

「......私は何もできないけど、祈るくらいはしてるから」

何もできない。だから加子はふわりと舞い降りてくる雪と戯れるふりをして泣きそうな顔を誤魔化した。






「......でさぁ、..................でね」

味がしないご飯を咀嚼する。昨日からから他人の言葉が断片的に聞こえなくなった。

「(どうしたんだろう、私の耳は)」

家にいても学校にいても加子の頭を占めるのはあのことばかりだ。耳が悪くなったのではなく、考え事で話が入ってこない。

「聞いてる、加子?」

「あっ、ごめん、ぼーっとしてて」

授業中もそうだったよね、と友達が指摘した。数学の教師に3回も名前を呼ばれたが加子は反応しなかった上、差された問題も答えられなかったため説教を受けてしまっていた。

「ほんとどうしちゃったの? 隣の岡本くんが珍しく人間らしい心配そうな表情浮かべて加子のこと見てるしさー......」

なんかあったなら言ってよね、と友達は言うが、友達を巻き込みたくないと思った加子は苦笑いで誤魔化し、ありがとうと言ってから「で、なんの話だっけ」と友達を促す。

「私は腹フェチだけど加子は好きな部位とかある? って話だよ。って、こんな恥ずかしいこと言わせないで」

指フェチだと昨日気づきました、とは言わずに、加子は首フェチだと言っておいた。あながち嘘でもない。

「首かあ。加子もマニアックだね」

自分では結構オーソドックスな趣味だと加子は思っていたからそういう反応をされたのは衝撃だった。

「でもいいと思う。それも正しいよね。答えは人間の数だけあるんだよ」

いい事を言っているのだが、話題が話題だ。加子は思わず笑ってしまう。

「(それも正しい、か)」

的確な表現だと思う。それが正しい、じゃなくてそれも正しい。これが罷り通るから世の中に確かな答えがないように見える問題が多いんだ。







友達を巻き込みたくないと考えた加子は友達に今悩んでいることを欠片も話してなかった。しかし加子の様子から何か察してくれたらしい。

放課後、加子の携帯電話にメールが届いた。

『こういうの見つけたってことだけ報告しとく。私は何もできないけど、できることがあれば教えて。こんな奴らに屈しちゃダメ』


「こんな奴らに屈しちゃだめ?」


添付されていたURLをタップしてみれば、「ご近所問題まとめ」というサイトに繋がった。


灯りのともる暗い街


132

>>128

小さい喧嘩のボヤなんて大きな炎に比べれば取るに足らないわよ


133

>>128

大きな炎って?


138

>>133

うちの周りはボスママが支配してるの

ボスママに敵認定された人は徹底的に周りから痛めつけられてる

ターゲットの子どもも友達ができないように学校まで手を回しているらしいわ、子どもに罪はないのにね


139

それって光の街じゃない?

まさにそういうところだわ

どうしてあそこまで酷くなったのか


141

光の街ってイルミネーションのとこ?


142

>>138

ママ友いじめってすぐ大きくなるよね

ボスに嫌われたら自分たちの子どもも狙われるからボスに逆らえないし

ターゲットを見下すことで自分がその人より優位に立ててるって思えるしね

プライドが高くて劣等感が強い人


143

>>139

そんなに酷いんならkwsk


146

ボスA

美人

タゲB

表面は儚い美人

C

元Bの旦那

Bと離婚して今Aと再婚

どうでもいいけど映画批評のアフィリエイトブログ経営者


AとBは泥沼関係

AはBへの集団で嫌がらせ

BはAにめげずに反撃中


148

>>146

よくある話じゃない

っていうかアフィカスなの?

特定して潰しましょうよ

このスレをまとめてるアフィカスさん、見てる?

次は貴方の番かもね


149

>>148

アフィカス潰しましょうよ

特定班はよ


150

某光町のボスの旦那でしょ?

余裕じゃないかしら


163

特定完了

URL(編集で検閲させていただきました)

映画批評で食べる飯はおいしいの?


164

>>163

GJ


炎上させるための燃料はよ


165

今までのまとめを三行で

妻が自分の子どもを虐待するのを黙認するマッドファーザー

アフィブログ潰す

余罪追及中


166

的確だわ

自分の子どもを守れない父親は裁かれるべきなのよ


168

Bの息子は今保育園児

保育園で仲間外れ作るとか将来自分の子どもが虐めっ子になりそうで嫌ね


169

いじめられっ子をつくるのは集団規範の生成には欠かせないわよ

逸脱した共通の敵をつくることで集団の秩序が保たれるの

いじめで自分のストレス解消もできて一石二鳥


175

娘さんT大の推薦を貰ってるのよ

やめてさしあげなさいな


176

誰だよ、この話を他の板に拡散したの

アフィカス粛清に乗り気な無関係者も集まってきてんじゃん

早速ブログに突撃してるのもいるし


177

燃料が少ない割りに大炎上

拡散されたことで特定班も増えたのかしら

あと私たちも無関係者よ


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「(やばい)」


クラスメイトの父のアフィリエイトブログが炎上しているのは加子にとってどうでもよかったが、このままではネットに個人情報が晒されて燐と来夢、来人が危ない。

「自分の子どもを虐待するのを黙認する」という書き方は狡い。こんなの、炎上しないはずがない。加子はネットにこれを書いた顔も知らない誰がに怒りを感じた。しかし、冷静に考えるとこの表現はは間違ってもいない。

「(昨日、岡本君に教えてもらった時はここまで考えもしなかったけど、よく考えるとこれは虐待なんだよね。私の思慮が浅かったのかも)」

能天気な性格が祟ったと加子は自分の考えを改めた。確かにネットに書かれていることは真実だ。加子の中の思考は炎上させようと読み手を興奮させることを目的に書かれた文章に侵されていく。

「(やっぱり、私は彼の力になりたい)」

来夢への連絡方法がない以上、直接あのアパートに突撃するしかない。

加子は夜の街へ飛び出して、ライトタウン行きのバスに乗った。乗っている間にネットに集められた情報を確認する。ネット記事と掲示板を斜め読みをしていくと、燐の母親がした酷い仕打ちが公開されているのを見つけた。擁護のリプライには来夢の母親の夫への執着が晒されている。

「(火元である掲示板をどうにかしなきゃ。普通の方法じゃ難しいから……)」

これ以上のえげつない話を創作してネットに挙げて炎を移すことも可能ではあったが、「アフィリエイトブログ潰し」の専用のサイトまでできているのを確認した加子は諦めた。

「(炎上には炎上で対抗するのが一番なのに!)」

ネットを巡回しているともうすぐバスケが目的地に到着することを告げるアナウンスが鳴った。加子は降りますボタンを押して、降りるまでに最新の情報を見ることにした。古いものから辿っていては今何が起きているかはわからない。


852

速報

リアル炎上


「リアル炎上って」


掲示板のその文字に背中に冷たいものが流れた。バスを降りて、歩きスマホならぬ走りスマホをしながら加子はライトタウンのイルミネーションの中を走り抜ける。必死に走っているせいか、強い冬の風が吹いても寒いと感じることはなかった。


853

あーあ、おまえらやりすぎるから

俺はもう知らん


854

ここまでになるなんて思わなかったんだよ


新着のレスを表示していく。まさか、まさかと最悪の事態を想定しながら進むと、今まで白と青の電飾の光が照らす視界にオレンジが映る。そして、先程とは明らかに違う熱風が頬に吹き付ける。

スマホを見るせいで俯いた顔をあげると、大きな炎がそこにあった。

イルミネーションの中で一際大きく、強く輝くそれは家屋の半分を既に焼いている。風下にある隣の家にも炎は移り、強風に煽られて火の勢いは増していくばかり。

「火元は何処だ」

「イルミネーションの漏電じゃないの」

「いや、放火かもしれない」

「それより、この家の人は全員避難できてるのか!?」

加子は呆然としながらも聴覚から入る情報を集める。

「まだ娘の燐ちゃんが中にっ」

燃えている家に燐が取り残されている。加子が炎上する家を観察すると、焼けている側とは裏側の二階の窓から顔を出す燐を発見した。

「降りてこれるか!?」

男性の声に青ざめた顔で首を振る燐。二階から外へ飛び降りるのは、死ぬことはないだろうが怪我をするのは目に見えている。そう我儘を言える状況ではないが、降りられない気持ちも加子にはわかった。

「(何か使えるものはないかな)」

安全に飛び降りることができるためのクッション材という都合のいいものなどはなかった。しかし、加子は他に使えそうなものを見つけた。

電飾を屋根に取り付けるための長い梯子を周辺の家に目ざとく発見した加子は、それを無断で借りてくると野次馬を掻き分けてそれを窓の下に設置する。

「燐ちゃん、これで!」

燐は加子と梯子を確認すると、財布と携帯を持って恐る恐る梯子を降りる。それを見守る加子に話しかけたのは野次馬の一人だった。

「お嬢ちゃん、お手柄だな。賢いし勇敢だ」

「いえ、それほどのことでは」

加子は謙遜して見せた。そして先程から思っていた疑問を野次馬に投げる。

「この火事って、もう消防署には連絡されたんですか?」

野次馬はすぐに答えない代わりに、そこに集まっていた人に大きな声で同じことを問う。

「誰かちゃんと通報したか?」

それには誰も答えなかった。マジかよ、と加子に話しかけた男性の口から漏れる。誰かが呼んだと思って通報しない救急車のケースを聞いたことはあったが、消防のケースもあるのか、と加子は恐ろしく思う。男性が電話をすると同時によく通る声がした。

「燐!」

避難が完了した燐に真っ先に駆け寄ったのは父親と母親らしき人。

「燐、よかった」

燐は炎が焼け広がっているせいでぱっと見血色の良さそうに見えるようになった顔を加子に向けた。

「加子ちゃん、ありがとう……」

続いてその両親を礼を言う。

しかし加子にとってそれは来夢と来人を傷つけてきた怖い人以外の何者でもない。父親が近づいて目が合った時、加子は目を見開いて固まった。信じられないほど顔が来夢に似ている。親子関係だからそれも不思議なことではない。

「お、か……」

立ち尽くす加子を見て何が察したのか、燐は加子と父親の間に入って耳元で囁く。

「ごめん、今は帰ってくれないかな……後で納得できる説明はするから」

加子は一歩引く。両親にお辞儀をして加子は火事現場から離れた。そしてもう一度スマートフォンで情報を確認した。


212

犯人は来夢説が濃厚


213

決めつけるのはどうかと思う


214

でも一番得体の知れないやつだし、受験生だしやらかすのもわかる


「(名前まで割れてる)」


今の火事が来夢が原因だと推測する人もいることを知り、加子もそれについて考えた。来夢はAOで大学に合格しているから不祥事を起こすことは考えづらい。

しかし、昨日彼が言っていた「けじめ」の話を思い返すと、どうしても彼は無罪だという確信は持てなかった。


215

来夢って今家にもいないし学校にもいないプチ行方不明らしいよ


ネットの情報では彼は家にも学校にもいないらしい。ネットの情報の真偽は確かではないが、掲示板の書き込みを見る限りライトタウンの住人の書き込みが多く、この書き込み事態の信憑性は決して低くはない。一応来夢の家まで走った加子はピンポンを押した。電気がついていないのと物音がしないのとでそこに誰もいないことはなんとなく予測できた。その予測通り、ピンポンは返ってこない。

「(完全に手詰まりだ……)」

座り込んで走った体力を回復しながら、加子はまたスマートフォンを弄り始める。自分で確かめられない以上、ネットしか情報源がないのだ。加子はスマートフォンをタップする。


その瞬間、スマートフォンの画面のバックライトがライムグリーンに眩しく光った。生理的な反応で目を瞑り強い光を防御する。何が起きているのか理解を超えていた。


「ライムライト、ドラマティックな光、でしたっけ? あの占いが本物である証明を照明が生みましょう」


何処かで声を聞いた気がした。

次の瞬間、加子は目を開くとそこに広がるのはライトタウンを一望できる簡素な展望台だった。そこに立つのは加子が求めた答え。


「岡本くん!」


名前を呼んでまた駆けると彼がゆっくりと振り返った。


「岡本くん、ここで何を」


イルミネーションが一望できるこの展望台。きっとあの火事もここで見ることができたはすだ。


「俺の母さんが、あの家を燃やしたのを見てた」


昨日、俺は母さんに「新しい人生を送りたい」って話したんだ。来夢はそうぽつりと話し出した。


「進学を機に俺は1人でやり直すつもりだって言ったらあの人も納得してくれたよ」


来人が臨むなら二人だけど、と来夢は付け足す。


「あの人も俺の言葉で何か覚悟を決めたのがわかった。それが放火だなんて予想もしなかったけど」


泣き腫らした後のような、すっきりとした顔で来夢は笑った。


「まあ、とにかく。俺はここから……ゼロから始めるよ」


新しい道を歩み始めるという来夢。そんな彼を加子は応援しないはずがない。彼はあの炎から逃れて別の場所で彼の人生をやり直すのだろう。


「短い間だったけど、おまえには本当に心配とか迷惑とかかけっぱなしだったな」


加子は目まぐるしかったくらいの日々を振り返った。


偶然放課後に勉強を教えて貰った。公園で会っていつもと違う一面を見せて貰った。コートを借りた。そして言い合いになって、一緒にテレビ塔に行って。そこでグリーンの光をみたんだ。

短かったけれど、密度の濃い日々。嫌なことも大変なこともあったし、それは現在も続いている。だけど、決して無駄なものではなかった。

「……岡本くん、何処かへ行っちゃうの?」

改めて彼と向き合う。ゼロからやり直すと言った彼は加子の前から消えてしまうかもしれない。そんな気がした。現に、彼は何も答えない。

どうしてなんだろう、動悸が不順になる。胸騒ぎがする。なんだか、怖い。

でもそんなこと、言えない。

「だ、だよね。私、岡本くんのこれからが岡本くんらしい、幸多いものになるといいなって思ってるよ、だから」

来夢の人生は来夢のものだ。道が交わらないならいつかはぐれるか、さよならなだけ。

沈黙が流れる中で自分の鼓動に耳を傾けた時にやっと気付いた気持ちは今となっては苦しいばかり。


「だからっ……」


「頑張って」その言葉が喉につっかえる。言いたいけど、言いたくないんだよ! 目の奥に一瞬光ったのは、ドラマティックだった。このドラマの先には別れが生む感動しかないのかもしれない。

「岡本くんは、岡本くんのために人生を送って欲しい」

私のエゴなんて見ないで、幸せになって欲しい。やっと言えた。

「俺のための人生、ねぇ」

来夢は考える素振りを見せた。そして、けろっと笑う。

「俺さ、一人ぼっちの割りによく喋るやつだろ? 言葉でしか表現できないし考えられないし。そんな寂しい俺におまえは俺に色んなことを教えてくれた」

ありがとうや、またあした、が嬉しいこと。

考えるより身体で動くほうが早くて、加子らしくて、それが正しいこともあること。

自分のことを真剣に考えてくれる人がいること。

「言葉には限界があるから、違う方法で話してもいい?」

うん、と頷く前に加子は自分に覆いかぶさる体温を感じた。

「……下手に喋ろうと、考えようとしちゃダメだったんだ。こうやってやっと気づかされた。あんだけ違う人生を求めてたのに、おまえのせいだけで『岡本くん』を捨てられないんだ」

おまえが『俺』と居たいならあの炎の中で燃え尽きたっていい、そう言われて頭を撫でられると、胸の奥で燻っていた思いがすんなりと吐かれた。

「……私もあなたと同じ気持ちだから、私の人生はあなたの好きにすればいいよ」

だってそうされたいんだもの。

一旦身を引いて、撫でられていない方の手を自分の手と絡ませると加子はやっと心の底から幸せを感じた。

繋いだ手を信じて歩き出すと、新たなメロドラマの予感を感じたのはきっと勘違いじゃない。











****




「これで良かったのか?」

雪が降る中、丘の上に浮かんだ透明から言葉が発せられる。人ならざる者、人間の持つ語彙の中では『悪魔』の声だ。

「ええ」

岸燐は彼に答える。これがきっと彼にとってのハッピーエンドだ。

燐はネット場に晒され炎上した自分と家族と来夢たちの家族の物語と誹謗中傷を見て、たくさんの心ない言葉に脅え、その原因である不特定多数の輩に復讐するためにリストカットをした。生死の狭間、そこで見たのは悪魔だ。

悪魔と契約して、死後の魂を生贄に過ちを正した。史実では「火事の後に加子は来夢を見つけることができず、もう二度と会うこともなかった」となっているが、燐が時間を巻き戻してやり直し、歴史を変えた。

「どうして、貴女は対価を払ってまでこのように捻じ曲げたんだ」

対価は魂。しかし燐は魂を生贄にすることに躊躇はなかった。死後の世界があるのなら地獄直行の魂なんてくれてやろう。

「罪悪感よ。私はあの子に酷いことをしてしまった。お母さんの言う『悪魔の子』っていうのをまともに受け取って、言われるがままに『彼の周りの自分たちの敵となる可能性がある人』を排除してきた」

「ネットで誰だか知らない輩に叩かれて初めて罪を自覚したのか?」

「......それはないわ」

眉をピクリと動かした燐に「図星だ」と悪魔はくつくつと笑う。

「私はまだやることがある。あの時中傷したやつらにこのリストカット画像を送りつけて、頃合いを見て、遺書を書いて自殺して、ネットのやつらの高が知れている良心をぎったぎったにしてやるの」

家も財産も、ネットの風評で推薦合格も友達も失った燐は復讐にしか喜びを感じることができない。

完全な自業自得じゃない、親のせいだ。燐はその事実に気づいてもいるが、復讐に目を向けることで気づかない振りをした。自分にはもう家族しか仲間がいないのだ。家族を忌むことなど、できない。だから彼らを憎むしかない。

「私が死んだ後も暫くは彼らの反応を楽しませてくれる、それが契約」

「はい、勿論」

燐ひとりの魂だけではここまですることが限界だったようだが、これで十分だ。私が死んだことを後悔しなさい。

燐が狂いながら泣いて笑うのを見て悪魔は戯れにラッピングされた箱を渡した。

「燐、これを」

燐が破るようにプレゼントを開けるとそこには青と白のグラデーション、まるであのイルミネーションを思い出すようなキャンドルが現れる。


「クリスマスプレゼントです。是非、これに憎しみの炎を灯してください」


手を翳すと、ゆらりと炎がキャンドルに宿った。


「……メリークリスマス、貴方達」


私を産んだお母さん、メリークリスマス。

私を不幸にした原罪のお父さん、メリークリスマス。

一人ぼっちだった岡本来夢にごめんなさいのメリークリスマス。

岡本来人はよくわからないけど、同情しますクリスマス。

私を助けてくれた加子ちゃん、せめて幸せになってください、メリークリスマス。でも私が死ぬのには変わりがないわ、ごめんね。

ネットで叩いてくれたおまえら、メリークリスマス、死ね。

見てるだけだった貴方も、メリークリスマス。

恐れ多くも、素敵な企画「イルミネーション企画」に参加させていただきました。

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