電話番号。
僕は、驚いた。
「えっ。」
振り向くと、さっきまで一緒だった彼女が居た。
「あの!...やっぱ、直接聞こうかなって。電話番号...」
「えっ?番号?」
僕が聞き返すと、彼女は驚いた。
「えっ!まだ気付いてないんですか!?紙ナフキン!」
「えっ、あっ...。今、気が付いて。見ようとしたら、あなたが...」
「あっ、そうなんですか...〃〃」
真っ暗で、彼女の表情が全く見えない。
彼女をみたいのに、
「あの?見た方がいいですか?」
彼女は、すかさず言った。
「あっ!いえ。見なくていいです。いや!見ないでください!」
「あっ、はい...」
彼女の表情をみたい!僕は思うが、
やはり、周りが暗すぎて見えない。
彼女が、そこにいる!っていうのは分かるのに、彼女がどんな気持ちか分からない。
“やっぱ、僕は異常だな。”
と、自分で自分を笑った。
「あの...、僕はどうすれば?」
沈黙が続き、気付けば僕からこう切り出していた。
「いや、河野さんは何も...。」
「あっ、番号でしたよね。」
「あっ!そう。番号を聞きに来たんだ!!〃〃」
彼女は、軽くテンパっているかのようだった。
「赤外線でしませんか?」
僕がこう言うと、彼女は僕の方に寄ってきた。
「お願いします!」
赤外線で、お互いの番号やメアドを交換している間の沈黙が、とても長く感じられた。
好きな彼女が目の前にいる。
それを思うと、胸が高鳴る。
“彼女に聴こえてしまうのではないか?”
と思うほど、僕の胸は高鳴っていた。
赤外線で交換し終えても、やはり沈黙が...
そんな沈黙が、胸の高鳴りを大きくしていく。
胸が張り裂けそうなほどに。
とうとう僕から、話を切り出す。
「これで、お互い連絡取り合えるね。うん。」
冷静を保ちたくても保てない...
それは、彼女も同じなのかな。
「ええ、そうね。じゃあ、私はこれで...〃」
「いえ。こちらこそ...」
「私、家がこっちなんで...」
と、彼女の指した方は、僕の家もある方向だった。
「あっ、僕も!僕も、こっちなんです。」
「じゃあ、一緒に帰りませんか?暗いし、この辺...〃〃」
「こんな僕で良ければ、ご一緒させてください...。」
「あ、ありがとうございます!!」
「幹谷さんでしたよね?」
「あっ、はい。河野さんでよろしいですよね?」
「あっ、(さん)だなんて、いいですよ。」
「あぁ、さすがに...」
「ですよね?すいません、でしゃばって。」
「でしゃばってません。いいんです。私、こう言うの不慣れで(笑)」
「僕もなんです!」
「私たちって、気が合いますね(笑)」
「そうみたいですね?(笑)」
家までの帰り道、2人の笑い声は辺りに響いた。