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第七話:章子先生からの手紙。

歩は自分の席に着こうとした。


「桜坂さん。あなたの席はあっちになったから」章子がいった。


「わたしの前の席だから。いっしょにいこう」


恭子が、歩の手を引っ張っていった。

歩の席は、窓際の後ろの席だった。歩の前には恭子が座っていて、後ろの席は志保が座っていた。

歩は席に座り、横を見た。そこには、鉄也が座っていた。


「オイ、歩……」


「ちょっと、柴咲くん」志保はいった。「柴咲くん、今いった事を忘れたの。桜坂さんは、あなたたち男の子とは口を聞いてはいけないのよ」


「そうよ。桜坂さんと話すときは、わたしたちが伝えるから。柴咲くんは、わからないの」横から、恭子もいった。


「わかったよ。あとで、滝沢に伝えるから」鉄也は、歩にそういった。

歩は、昨日までは、鉄也と遊んだり、バカな話をしていたが、今日からは、それが出来ないので、歩は淋しかった。


「ネエネエ、さっき、先生になにをもらったの」志保は、歩に聞いた。


「これは、おれが……」


「オレ、ではなくて、わたしでしょ」


歩は、志保に、言葉遣いを注意をされた。


「わたしが女の子になるためのことが書いてあると、先生がいってたの」


「どんなことが、書いてあるの」


「まだ見てないけど……、休み時間になったら見ようかなと……」歩は、戸惑いながらいった。


「それでは、いっしょに見てもいいかしら」


「わたしも、見てもいいかな」その話を聞いて、後ろを振り返った恭子が、歩にいった。

恭子は、いったいなにが書いてあるのか、興味津々だった。


「次の休み時間に、いっしょに見ましょ」歩は恭子にいった。


「ゼッタイに見せてね。あ・ゆ・み・ち・ゃ・ん」恭子は、まわりに聞こえないように、小さい声で歩にいった。


「……はい」歩は、恥ずかしそうに返事をした。


一時間目の授業が終わり、恭子と志保は、歩に、章子から受け取った紙を見せてもらった。

それは、こんな事が書いてあった。



桜坂歩さんへ

昨日の放課後、あなたは、あんな事をしたので、罰として、今日からあなたを女の子として扱う事になりました。

今、これを読んでいるということは、あなたのほかに滝沢恭子さんと山口志保さんもいっしょに読んでいるでしょう。


「なんか、わたしたちの行動がよまれてるみたい」


「恭子さん、続きを読みましょ」


あなたたち二人は、次に書いてある事を、桜坂さんにさせてください。

1・しゃべるときは『おれ』や『…だせぇ』などと、男の子のような乱暴な言葉をいわない。『わたし』や『…ですわ』などと、おしとやかにいうこと。

2・イスなどに座るときは男の子みたいに足を開けないこと。座るときは、膝を閉じて、スカートのすそに手をそえること。床などに座るときは、『あぐら』ではなくて、『とんび座り』をすること。

3・トイレは、必ず、滝沢恭子さんか、山口志保さんのどちらかといっしょに女子用のトイレにいくこと。ただし、一階にある、来客用の女子のトイレを使うこと。


「これは、いったい……」

「つまり、歩ちゃんは、立ってしちゃダメ、ということじゃないの」恭子はいった。


「そんなぁ……」歩は、困った顔をした。


4・男女別の授業の時は、女子の授業を受けること。ただし、体育の授業の場合は、着替えるときは保健室で着替えること。(水泳の授業は、体は男の子だから女子指定の水着は着れないので、見学をすること)


「やはり、水泳の授業は受けられないわね」志保はいった。


「よかったぁー……」水泳は見学なので、女の子の水着を着なくてもいいので、歩は、ホッとした。


「わたしは、歩ちゃんの水着姿を見たかったわ……」恭子は残念そうにいった。

5・男の子とは、どんなことがあっても、口を聞いてはいけない。なにか用事がある場合は、まわりにいる女の子に伝えること。

6・女の子から、なにか頼まれたら、絶対に断ってはいけない。

7・他のクラスの人にイジメられたら、助けにくるまで抵抗をしない。

8・女の子らしい事をしてほめられたら、「ありがとう」ということ。

9・格闘技番組や少年マンガを見ないこと。女の子向けのテレビ番組や、少女マンガを見ること。

10・家でも女の子をすること。今後、家族のことを『パパ』、『ママ』、『お姉さん』と呼ぶこと。そして、『弟』ではなく『妹』として振る舞うこと。


「それでかぁ……」歩は、それで、朝のことがわかった。


これが、桜坂歩さんが守ることです。もし、これを一ツでも破ったら、厳しい罰をあたえます。

滝沢さんに山口さん。桜坂さんをステキな女の子にしてください。



「今井先生が、そう書いてあるから、わたしたちが歩ちゃんを女の子にしてもいいんだね」


「そうね、恭子さん。歩ちゃんも、がんばって女の子になるのよ。わかった」


「わかったよ」


「ちがうでしょ。女の子なんだから、そんな男みたいにしゃべったりしたら、ダメでしょ」恭子は歩に注意した。


「ごめんなさい滝沢さん。つい、男のクセがぬけなくて」


「ねぇ、歩ちゃん。こうしたらどうかしら」


志保が考えたアイデアは、歩が、女の子に近付く第一歩だった。

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