第三話:女の子としての試練。
学校につくと、歩たちは保健室にむかった。
志保が、職員室へ行って保健室のカギを取りに行っているので、歩と恭子は先に保健室に行くことにした。
「ねぇ、いったい保健室でなにをするんだよ」
「フフフ、それはね、ついてからのお楽しみよ」
恭子が楽しそうにいった。その楽しそうにしている恭子と対象的に、歩の心は、ますます不安が増えるばかりだった。
保健室についた歩と恭子は志保を待つことにした。
その間、歩と恭子は、取り留めのない話しをした。
どんなテレビ番組を見ているのか、好きなマンガはなにか、気になるタレントはいるのか、といった話しをしていた。それが、歩を女の子らしくさせることとは知るよしもなかった。
しばらくして、志保がカギをもってきた。
「ごめんね、恭子さんに歩ちゃん。ちょっと担任の先生と、歩ちゃんのことで話しをしていたのよ」
「エッ、オレのコト」
「コラッ、ダメでしょ歩ちゃん。『オレ』じゃなくて『わたし』でしょ」と恭子がいった。
「そうよ歩ちゃん。恭子さんのいうとおりよ。でも今から歩ちゃんを女の子にするから、はやく保健室にはいりましょ」といって、志保はカギのかかった保健室のドアをあけた。
保健室の中にはいると、志保はベッドの仕切りになっているカーテンをあけた。
「歩ちゃん、この中にはいって、今きている服を、全部脱いで」
「山口さん、なんで服を脱ぐの」
「そのほうが、やりやすいからよ」
「やりやすい、っていったい……」
「歩ちゃん、はやく中にはいりなさい」
志保がすこし怒った口調でいったので、しぶしぶながら、歩は中にはいってカーテンを閉めると、服を脱ぎはじめた。
歩が服を脱いでいると、志保がいきなりカーテンをあけた。
カーテンを勝手にあけられた歩は、志保に抗議をしようとした。が、いきなり、恭子に歩は怒られた。
「歩ちゃん、なんで、下着も女の子のにしないの」恭子はいった。
「いくらなんでも、下着は女の子じゃまずいでしょ」
「心配はいらないは、こんな事もあろうかと、ちゃんと下着をもってきたから。それより、脱毛テープを貼るから、足を出して」
「そこまでしなくても、いいだろう」
歩がそんな事をいうものだから、恭子はとうとう怒りだした。
「いい加減にして。はっきりいって、こんな事になったのは歩ちゃんが原因なのよ。でも歩ちゃんは、そのことをわかってないし。わたしと志保は、歩ちゃんを女の子にするように先生にいわれたのよ。だから、わたしや志保のいうことは、絶対に聞かなきゃいけないの。わかったらはやく足を出しなさい」
恭子に怒られた歩は、足を出して、脱毛テープを貼られた。そして、恭子は、テープをおもいっきり剥がした。
「イテェ、もうちょっとゆっくり剥がしたらどうなんだよ」
「ガマンして、これも女の子になる試練なのよ」
「でも歩ちゃん、他の男の子と違って、そんなにムダ毛がないから楽でいいわ」志保はうらやましいそうにいった。
「これが終わったら、下着もかえてもらうから。歩ちゃん、どの下着にする」
「どっちにしても、これらの下着を着なきゃいけないんだよな……、イテッ」
「下着は、志保が手にもっている袋にはいっているから、はやく選んでね。そしたらゆっくり剥がしてあげるから」
歩は適当に、志保がもっている右側の袋を選んだ。志保は、歩が選んだ袋の中を見ていった。
「これなら、歩ちゃんにピッタリだわ」
どうピッタリなのか、歩にはわからなかった。
だが、これだけでは済まないだろうと、歩は思った。
第三話を終わりました。批評/感想を、おねがいします。