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第二十八話:ちっちゃくなった歩ちゃん。

リビングルームで夕食のカレーを食べる歩たち。

恭子たちのカレーは中辛のカレーだったが、歩のだけは甘口のカレーだった。君子はためしに、歩に自分たちが食べるカレーをスプーン一杯だけ食べさせた。すると、歩の顔はみるみる真っ青になっていった。


「歩ちゃん、だ、大丈夫。ごめんね」君子はあやまった。

志保が、歩にコップにはいった水を差しだしたら、歩は水をいっきに飲んだ。

「志保お姉さん、ありがとうございます」息を切らしながら歩はいった。


「こんどはこのカレーを食べてみて」君子は甘口のカレーを歩に差しだした。

恐る恐るカレーを口にいれる歩は、カレーの味がちょうどいいぐらいだったので歩は満足そうな顔をした。

「甘口のカレーの味はどうだった」


「おいしかったです。これなら食べられます」うれしそうにいう歩だった。


「じゃあ、もう食べてもいいんだね」


「そうね恭子さん」


恭子と志保がカレーを食べようとしたとき、君子がちょっとまってとストップをかけられた。

君子は歩の服にあるものを首にかけた。


「あのぅ、これってよだれ掛け……」


「ちがうわよ歩ちゃん。これはエプロンよ。歩ちゃんが着ている服、カレーが落ちると汚れが取れにくいから、我慢できるわね」


君子はエプロンだといったが、どう見てもよだれ掛けにしか見えなかった。

窓ガラスにうつる、エプロンをかけている姿を見た歩は、まるで幼児のような姿ではずかしくなってきた。歩が席に座ると、カレー皿がちがっていた。

歩のカレー皿は、ひと昔前に流行った女の子向けの魔女っ子アニメのキャラクターをあしらったカレー皿だった。


「ごめんね歩ちゃん。探したけど、こんな皿しかなくて」


「君子おばさま……、ありがとうございます」なにかいいたそうだった歩。

でも君子が、歩のために皿をさがしてくれた行為に感謝をしなければならなかった。

歩がカレーを食べようとしたとき、恭子が歩の後ろにまわった。


「歩ちゃんの髪の毛が邪魔ね」


恭子は、ヘアゴムで歩の髪の毛をむすんだ。

髪の毛をお下げ髪にされた歩は、幼く見えるようになった。

今の歩の姿は小学生どころか、下手したら背の高い幼稚園児と思われてしまう。それが彼女たちのねらいだった。


裁縫が得意な志保は、わざとよだれ掛けみたいにエプロンをつくった。恭子は、フリーマーケットで女の子向けの食器を探した。恭子の古着だといって歩に着せた服も、君子がネットオークションで競り落とした服だった。

彼女たちは、この日のためだけにしたことだった。




「かわいいわよ歩ちゃん。恭子お姉さんにありがとうはどうしたの」


「だって、志保お姉さん……」ちょっと不機嫌そうにいう歩。


「恭子お姉さんは、歩ちゃんの髪の毛がカレーにはいらないために、髪の毛をむすんだのよ。歩ちゃんはそれが不満なの」


「ううん……」志保のつよい口調に気圧される歩。


「志保さん。歩ちゃんはとまどっているのよ。だって歩ちゃんは、志保さんや恭子のことをお姉さんと返事するのがまだなれていないの。わかってあげてくれるかしら」君子は歩に気付かれないよう、志保にほほ笑みをうかべた。

志保は、君子が歩になにをするのかだんだんわかってきた。

歩をわざとちいさな子供あつかいをして、歩が自分から甘えてくるように仕向けたのだった。


「とても似合っているわよ歩ちゃん」恭子はいった。

「恭子お姉さん、ありがとうございます。でも、やっぱり……」


「歩ちゃんは子供っぽい服が似合っているわ」恭子が歩の頭をやさしくなでた。

「歩ちゃんは妹なんだからお姉ちゃんたちのいうことを聞かなくてはダメよ」君子が歩にいった。


「それに、このあと、あるひとをよんだから」恭子はいった。


「だれかくるの……恭子お姉さん」恐る恐る恭子にたずねる歩。


「そうよ歩ちゃん。夕食のあとにくる予定になっているけどね」


「だれかくるのかしら。歩ちゃん、楽しみだね」志保がいった。


歩は不安になった。

もし、こんな幼稚園児みたいな姿を見られたら笑われるのではないか。

そんな思いが、歩の頭の中をよぎっていった。

「大丈夫よ歩ちゃん。お兄ちゃんは逆にもっと可愛がってくれるわよ」志保がいった。


「て、鉄也お兄ちゃんがくるの」


「そうよ。歩ちゃんの大好きな鉄也お兄ちゃんがわたしの家に来るのよ」


「よかったねー歩ちゃん。鉄也お兄ちゃんにいっぱい甘えるのよ。わかった」


恭子と志保は歩にいった。というより、それは命令だった。もしふたりに逆らい、章子の耳にはいったりしたら、もっとはずかしい目にあうだろう。

鉄也にこの姿を見られたくない歩は、早くカレーを食べようとした。

でも、少しだけだがカレーの汁がエプロンに掛かってしまった。


「あらあら、こんなに汚しちゃって。そんなにあわてなくてもいいのよ」


「ごめんなさい志保お姉さん」


志保にあやまる歩。だが、志保のいった一言に歩は凍りついてしまった。

「まだ代わりのエプロンがあるから大丈夫よ」


志保はたくさんのエプロンを歩に見せた。

そのエプロンは、歩が掛けているエプロンよりフリルがついたとてもかわいいエプロンだった。





このあと、自分はどう変わっていくのか、わからなくなる歩だった。

いろいろなことがあって更新が遅れました。すみません。

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