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第二十四話:歩が女の子になった訳。《後編》

後編です。

歩たちは理科準備室の前にきて、誰もいないのをたしかめた。


「じゃあ歩、たのんだからな」


「ちゃんと見つけろよ」大輔と則夫はいった。

歩は、理科準備室のドアをゆっくり開け、誰もいないのをたしかめた。


中にはいり、歩は章子の机の前にきた。机のうえには大輔のゲーム機と則夫のゲームソフトがあった。

歩はそれらをとると、準備室から出ようとした。

そのとき、歩のうしろからドアの開いた音がした。

歩は机のしたにかくれた。

「先生いないね……。どうする志保」


「ほんとね。このコピー用紙どこにおいたら……」


中に入ってきたのは、おなじクラスの滝沢恭子と山口志保だった。恭子は、準備室にだれかいる気配を感じた。


「だれ、だれかいるの」


「恭子どうしたの」


「志保、だれかいるわ。電気をつけて」


志保が電気のスイッチをつける前に、歩は準備室から出た。そのとき、歩は志保にぶつかってしまった。

「ちょっと、痛いじゃないの」志保は文句を言おういおうとしたが、歩は出ていってしまったあとだった。

「志保、からだ大丈夫」


「ありがとう、恭子。誰が中に入ってたのかしら。あら、これは……」志保は、なにかひろった。




「ありがとう歩。助かったよ」


「サンキュー歩。これで彼女と別れずにすんだ」


「もう二度としないから」

則夫と大輔は、歩に感謝の言葉をいった。

歩は女子の制服を着るのはとてもはずかしかった。だから則夫と大輔にもう二度と着ないといった。

 

「それは、もったいないよ歩くん。歩くんには素質があるよ」制服を貸した演劇部員が残念そうにいった。 

「素質って、なんの」

 

「女の子になれる素質さ。歩くんなら、クラスで一番カワイイ女の子になれるから」

 

「なんなら、演劇部に入部して女の子らしさを教わったらどう」大輔が、歩に半分からかいながらいった。 

「あなたたち、もう下校時間は過ぎてるわよ」教室に章子が突然入ってきた。

 

「もう下校時間を知らせるの放送があったら、帰ると生徒手帳に書いてあるでしょ。だして見なさい」

 

教室に残っていた全員が生徒手帳をだした。歩も出そうとポケットに手をいれたが、いくらさがしても生徒手帳がなかった。


「桜坂くん。あなた、生徒手帳わすれたのね」


「先生ちがいます。さっきまではありましたが……」

「言い訳は聞きたくありません。桜坂くん。私といっしょに来なさい」

 

歩は、章子といっしょにつれていかれた。

則夫と大輔は、歩が理科準備室で、勝手にゲーム機を取ったことを、章子にしゃべるのではないかと思って心配した。


「それはしかたないだろうな。もし歩がしゃべったからといって、イジメたりしたら承知しないからな」鉄也は則夫と大輔にいった。

 

 

 

章子が、歩を理科準備室につれてきた。中に入ると、恭子と志保が立っていた。 

「桜坂くんは、なぜここに来たかわかっているわね」 

「先生、なんのことだかわかりません」


「ではなぜ、桜坂くんの生徒手帳を私がもっているのかしら」章子は生徒手帳を見せた。

章子がもっていたのは生徒手帳だった。 

「この生徒手帳、桜坂くんのかしら」


「ええと……、たぶん、そうだと……」


「でもこれは桜坂くんのものでなく、ある女の子がおとした生徒手帳なの」

 

歩はドキッとした。理科準備室から出るときに志保にぶつかっておとしたのだ。そのとき着ていたのは、女子の制服だった。でもいまは、男子の制服だからばれてない。

 

「生徒手帳のなかを見たら桜坂歩と書いてあった。どういうことか説明してほしいけどね」章子はやさしい言葉づかいで歩に聞いた。

 

「それは、えっと……」

 

「その一。桜坂くんが、ある理由から、女の子に生徒手帳を貸した。その二。桜坂くんの生徒手帳が、女の子に盗まれた。そしてその三。桜坂くん本人だった」 

「その二かなぁー」歩はしらばっくれた。

 

「どうしてその二なの」  

「だってオレ、女の子の知り合いなんかいないし、なんで、理科準備室に入らなきゃいけないわけ」

 

 

 

「桜坂くん。あなたはウソツキなのね」

 

 

 

「生徒手帳が理科準備室でおとしたとは、私はいってないわよ」章子はいった

 

「私の机にあったゲーム機をぬすんだのね。あなたのやったことは犯罪なのよ」 

「いや、だから……」しどろもどろになる歩。

 

「桜坂くんは、だれかに頼まれてドロボウみたいなことをしたのね。もし、その人の名前をだせば、ゲーム機を盗ったことは赦してあげるわ」

 

歩はまよっていた。

たしかに大輔や則夫に頼まれたが、ふたりのことを話せば歩のしたことは赦してもらえるだろう。

でも話せば、大輔と則夫、そして鉄也の友情が壊れるのは確実だ。

 

「桜坂くんは何をまよっているの。誰に頼まれたのかいいなさい」強い口調で章子はいった。

 

「先生、オレひとりでやりました」歩は、友情をえらんだ。

「では、理科準備室に忍び込んでゲーム機を盗ったのは、桜坂くんひとりのしたことなのね」

 

「ハイ、そうです。先生、ごめんなさい」歩は、章子にあやまった。 

 

「では、桜坂くんには罰をあたえねばなりません。桜坂くんには、どんな罰がいいかしら」

 

章子の罰は、反省文を書かされるか、便所掃除。最悪の場合、停学処分だと歩は思った。

だが、章子はとんでもないことをいった。

 

「明日から桜坂くんは、女の子になりなさい」

 

歩は章子のいってる意味がわからなかった。

恭子も志保は、歩が女の子にされるのを賛成だった。 

「だって桜坂くんは、私にぶつかって、ゴメンのひとこともなかったのだから当然よ」

 

「そうよ。もし志保がケガでもしたら、桜坂くんはどう責任をとるの」

 

「まあまあふたりとも。桜坂くんのことは私にまかせて」

 

「でも先生……」恭子は不満げにいった。


「いいわね滝沢さん」章子はいった。


「わかりました……」不満がのこった恭子だったが、章子のいうことにしたがった。


「滝沢さんは、教室にいる桜坂くんの帰りをまっている桜坂くんの友達に、先に帰るようにいって、桜坂くんのカバンをもってきて。山口さんは、購買部で女子の制服を買ってきて。桜坂くんにあうサイズは、たぶんMサイズだと思うから。お金は、後で私が払うといっといて」章子はいった。恭子と志保は準備室から出ていった。

 

 

 

「桜坂くん。ふたりが戻ったら、買い物に付き合ってね」

 

「先生、なにを買いにいくのですか」

 

「桜坂くんの下着」

 

「オレの下着ですか。下着なら家にあるけど……」歩はいった。

 

「桜坂くんの下着は男の子の下着でしょ。買いに行くのは女の子の下着。ブラジャーやショーツなんか家にないよね。だから、今日買った下着を明日から着て行くのよ」


「そんな……」


「イヤとはいわせない。それと、女の子になることを桜坂くんの家族にいいますから。これは、桜坂くんがあんなことをした罰なんだから。わかりましたわね。桜坂さん」

  



こうして、桜坂歩は女の子になった。

最初は女の子になってとまどいがちだった歩。

でも今は、鉄也といっしょに手をつないで学校までいくようになった。恭子と志保と友達になった。でも歩はまだ知らない。章子の罰は、まだはじまったばかりなのを……。

後編を終えました。まだまだ続きます。これからもよろしくお願いします。

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