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第二十三話:歩が女の子になった訳《中編》

ごめんなさい。ながくなったので、三つに分けることにしました。

「歩。帰ろうぜ」


「ちょっとまって、オレ……」歩がいいかけると、鉄也は笑いだした。

歩は、鉄也がなぜ笑っているのかわからなかった。


「だって、歩がオレなんていうから」鉄也はいった。歩は、すこし不機嫌になった。

鉄也の笑い声を聞いて、長谷川大輔はせがわだいすけは、ふたりによってくると、歩にいった。


「鉄也のいうとおり。歩には、オレという男言葉がにあってないじゃん」大輔はいった。

「ひでぇ、大輔まで…」歩はすねた顔をした。だが、歩のすねた顔が、逆にかわいらしい顔をしているのだった。


「なあ鉄也に歩。今日ヒマかい。だったら、付き合ってほしいんだけど……」


「ああいいけど……。そうかぁ。大輔、できたんだなあ」鉄也はいった。


「そうなんだ……」大輔は照れながらいった。


「大輔、ガンバレよ」


「ありがとう、鉄也」


「ねぇ鉄也、大輔がどうしたの」歩はいった。鉄也と大輔の話に、歩は意味がわからなかったからだ。


「それはな、歩、オレに彼女ができたんだよ。だから……、お子ちゃまの歩にはまだわからないか」大輔はいった。


「そうそう。でもそれが、歩のかわいいとこなんだけどな」鉄也はいうと、歩の頭をなでた。


「や、やめろよ……」歩は抵抗した。



「タイヘンだあー」

いきなり、教室のドアがいきよいよく開いた。はいってきたのは、関口則夫せきぐちのりおだった。

則夫は、教室にはいってくるなり、鉄也のところにきていった。

「どうしよう。俺の携帯ゲーム機とられたよ」


「ゲームをだれにとられたんだ」鉄也はいった。


「章子先生に……」則夫はいった。則夫は、理科室で則夫のテニス部の友達と、ゲームで対戦しているところを章子に見られ、ゲーム機を没収された。

「それは……。あきらめるんだな」大輔はいった。

「じつは……、大輔、おまえにも関係しているんだ」

「なんでだよ」


「ゲーム機の中のソフト、大輔……、じつはあれ、おまえのなんだ」則夫がいった。


則夫は、大輔に借りていたゲームソフトをだれもいない理科室で、則夫のテニス部の友達といっしょにあそんでいた。

最初は静かにゲームをしていた則夫たちだった。それが、ゲームに熱中してきて騒いでしまった。

理科の担当で理科室の責任者である章子が、だれもいない理科室がうるさかったので見に来たら、則夫たちがゲームをしていた……。「それで、そのゲームを没収されたんだ」則夫はいった。


「どうするんだよ。あのゲーム、オレの彼女が、弟から借りてきたんだ。今度の休み明けにかえさなくてはいけないんだ」大輔は則夫に抗議した。「どうするんだよ。もしかえさなかったら……。そうだ、いいこと考えた」大輔は歩を見た。

「歩、頼みがある。女の子になってくれ」


「な、なにいってんだよ」歩は、大輔のいった意味がわからなかった。


「大輔、いくらなんでも歩が女の子になれるわけないだろう」鉄也がいった。


「ちがうよ。歩に、女子の制服を着て……」


「イヤだよ。オレ、そんなの着たくないよ」歩はいった。「それに、だれが服を貸してくれるんだよ」


「そうだけど……。ちょうどいいところにいた」大輔は、ちかくにいた男子演劇部員を見つけた。

大輔は、演劇部員にちかくまできて、何かはなしていた。


「貸してくれるそうだ」大輔はいった。




演劇部から女子の制服を借りてきた大輔は、歩に着るようにたのんだ。

もちろん歩はことわった。

「大丈夫だって、バレないから」


「大輔のいうとおり、歩とはわからないよ。とりあえず、服を着てみろよ」


「ふたりとも、なんでオレが、女子の服を着なくちゃいけないんだよ」歩はいった。


「それはだなぁ……」則夫は説明した。

章子は、ほとんど理科室のとなりの理科準備室にいていて、職員室には朝と放課後にしかいていない。

放課後のときに、章子は理科準備室から職員室にもどる。章子のいない理科準備室には、没収されたゲーム機がどこかにある。

そこで、歩の出番だ。歩が女子の制服を着て理科準備室の中にはいり、ゲーム機を取りかえす。

男の子の歩が、女子の制服を着て変装してるから、だれも歩だとはわからない。

「……という作戦なんだけど、鉄也はどう思う」


「いいんじゃないか」


「そんな。鉄也まで……、もしバレたらどうするの……」歩はいった。


「バレないよ。だから歩、はやく着替えた」大輔はいった。




教室の奥で歩は着替えた。そして、女子の制服に着替えた歩を見て、鉄也はもちろん、大輔や則夫、それと教室にのこっていた二、三人の男子生徒は歓声をあげた。それは、歩が女子の制服が似合っていたからだった。


「おかしくない……」歩は不安げにいった。


「全然おかしくないよ」歩の女子の制服姿を見た鉄也はいった。


「ほんとうに…」歩は顔が真っ赤になった。


「それじゃいこうか」大輔はいった。


「いってらっしゃい」則夫はいった。


「おいおい、則夫、おまえもだよ。こうなったのは則夫のせいだから」鉄也はいうと、則夫も仲間にくわわった。




この日が、歩が男の子として生活する最後だった。

中編をおわり、次こそ後編になります。本当にごめんなさい。

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