第二十二話:歩が女の子になった訳。《前編》
話がまとめられなくて、前編と後編に分けました。
歩と鉄也が、なかよく手をつないでいる。
歩は、鉄也とこんな関係になるとは思わなかった。
鉄也は、体つきは男らしくて、反対に歩は背は小さく童顔だったため、いつも小学生にまちがわれた。性格も、鉄也は明るくて、社交的な性格。まわりから慕われていて、リーダー的な存在。歩は内気で人見知り。
体格も性格もちがうふたりが出会ったのは、中学の入学式だった。
まだ制服に着慣れていない新一年生たち。
一年生たちの見ている掲示板には、自分たちが一年の何組にはいるのかを見ていた。一年生たちが、掲示板を見て、どのクラスにはいるかわかった。
「クラスがわかった一年生は、体育館にいくこと」掲示板を貼った上級生がいった。
クラスがわかった一年生たちは、上級生の案内で体育館に集まった。
歩も体育館に入っていったが、歩は心細げだった。歩が知っている人が、ほとんどいなかったからだ。
歩の家は、歩が以前通っていた小学校の地区が、中学校ではちがう地区なのだった。
小学校のクラスメイトたちは、歩が頼りないので、それが原因でイジメにあったりしないか心配した。
小学校の卒業式のとき。クラスメイトたちは、新しい中学校で、もしイジメられたら、相談にのってあげると歩にいった。
体育館に来た歩は、歩のクラスの列をさがし、うろうろしていたら、歩は人にぶつかり、床にたおれた。
「イッテェー、てめぇ、なに見てんだ」
「ご、ごめんなさい……」
歩は、ぶつかった相手にあやまった。
だが相手は、歩に因縁をふきかけた。
「オマエがぶつかったからよー、オレの新しい制服がヨゴレたじゃねえかよー。オマエ、制服のクリーニング代を払えよなー」
「そんな……」
相手は、歩に理不尽なことをいった。ぶつかった相手の制服より、床にたおれた歩のほうが汚れていた。
「テメェよー、いまもっているカネをダセよー」相手は、歩を脅した。
歩は、こんなことが今までなかったので、怖くてなにもいえなかった。
「オイオイ、おまえ、いい加減にしろよ」歩と、歩に脅した相手のあいだに、ひとりの男の子がはいっていった。
「モトはといえば、オマエが、わざとこの子にぶつかったんだろうが。オマエがあやまれよ」
男の子が、歩にあやまるよう相手にいった。だが相手は、なにもいわずにその場からはなれた。
歩は起き上がろうとした。だが今のが怖かったのだろう、足が震えて立てなかった。
「もう怖がらなくいいからな」男の子は、歩の手をとって、歩を立たせた。
「ありがとう……」歩は礼をいい、名前を聞こうとした。
「オーイ鉄也、いったいなにしてんだよ」男の子の友達だろう。友達は男の子の名前をいった。
「この子が、からまれたから、助けにきたんだよ。オレの名前は柴咲鉄也」
「ぼくは……桜坂歩です……。たすけてくれて、ありがとう……」
「いいよそんなこと。ところで歩は、何組」
「……三組」
「ナンダ、おなじじゃあねか。歩、ヨロシクな」鉄也は歩の手をとると、いっしょに三組の列にならんだ。
そのことがきっかけで、歩と鉄也は友達になった。歩は、鉄也のことを尊敬の目で見ていた。
鉄也は男らしくて、スポーツ万能。クラスのみんなを引っ張る行動力で、クラスの人気者になった。
小学校のころの歩は、友達やクラスメイトたちからは年下扱いをされていたが、鉄也は、歩をおなじ男の子としてあつかってくれた。歩には、それがとてもうれしかった。
だから、歩は鉄也のことをココロの中では、兄のように慕う思うようになった。
鉄也も、歩には特別な感情をもっていた。
歩を見ていると、なんだか守ってあげたいように見えてきた。歩はクラスの中では一番背が小さくて、頼りなさそうだった。
だから、一部のクラスメイトは、歩をクラスのマスコットのように扱った。
でも鉄也は、歩をひとりの男の子として扱った。
たとえば昼休み、鉄也は、いっしょにあそぶよう歩に誘ったり、クラブ活動のときも、いっしょにバスケット部にはいるように誘い、ほかにも、鉄也は、歩にいろいろなことを面倒を見てあげていた。(余談だが、バスケット部は二年生と三年生の仲が悪く、歩たち一年生がはいって一ヶ月後には、二年生と三年生が乱闘を起こし、バスケット部は廃部になる)
鉄也は歩のことを、実の弟のようにかわいがった。
歩と鉄也の関係は、本当の兄弟みたいだった。
ただ、歩があんなことをするまでは……。
話がちょっと中途半端になりましたが、後編に続きます。感想/評価があればよろしくお願いします。