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第十九話:唯の複雑な気持ち。

駅前にあるハンバーガー屋は、昼過ぎだったためか、すこし空いていた。

唯は、友達に文句をいおうと電話をだした。唯が電話をかけようとしたとき、唯の電話にメールがきた。


『どうだった、あの店のオムライス。とてもまずいでしょ』


「知ってて教えたのね」メールを見た唯は怒った。


「どうしたの、唯お姉ちゃん」 歩が恐る恐る、心配そうにいった。


「ううん、なんでもないわよ。それにしても、とんでもない店だったわね。そうでしょ、歩ちゃん」


「でもね唯お姉ちゃん」歩はいった。「お店の人にお嬢様と呼ばれたとき、とてもうれしかったの。だって歩は、ほんとうは男の子だから……」


唯は、うれしそうにいう歩を見た。


「歩ちゃんがよろこんでくれたからよかったけど、もうあの店は、二度といかない」唯はきっぱりいった。

「そうだね唯お姉ちゃん。それにしても、ハンバーガーがこんなにおいしいとは思わなかったね」


「ほんとね歩ちゃん。この代わり映えしないチェーン店なのに、あの店よりおいしいんだから。冷めないうちに、はやく食べましょうね歩ちゃん」 歩と唯はハンバーガーを食べた。


「歩ちゃん。今日はほんとにゴメンね」唯は突然、歩にあやまった。


「どうしたの、唯お姉ちゃん」


「だって、歩ちゃんが服を買いにいくのを楽しみにしていたのに、わたしのせいでだいなしにして」


「そんなことないよ唯お姉ちゃん。だって、唯お姉ちゃんといっしょに買い物にいくのがね、歩はとてもうれしくて……」


「でも、買った服を友達の滝沢さんや山口さん、それに柴咲くん、鉄也お兄ちゃんに服を見せられなくて残念でしょ」


唯が、鉄也お兄ちゃんといったのを聞いた歩は、びっくりして飲みかけのジュースを吹きだした。

なぜ唯が知ってたのか。歩は不思議に思うと、唯はその訳を話した。


「歩ちゃんの担任の章子先生が、電話をしてきたの。たしか、三年生に絡まれまのを柴咲くんに助けてもらったと章子先生がいってたわ。歩ちゃん、柴咲くんてどんな子なの」


「そんなこといわれても……」顔を赤くなる歩。


「照れることないわよ歩ちゃん。歩ちゃんは柴咲くんが好きなの」


「そうじゃなくて。鉄也お兄ちゃんは、歩の憧れみたいなの。歩も、ああいうカッコイイ男の子になれたらいいなあと……」歩は、いつものように鉄也お兄ちゃんといった。


「歩ちゃんは、柴咲くんのことを、鉄也お兄ちゃんとよぶの。あんなことを、歩ちゃんにさせた張本人なのに」唯は、歩がいったことを聞き逃さなかった。そのことを、唯は、歩に厳しく聞いた。「それに、歩ちゃんが女の子にされたのも、鉄也お兄ちゃんのせいでしょ」


「それはそうだけど……、でも……、でもね唯お姉ちゃん、鉄也お兄ちゃんは、歩にあやまってくれたの。だから……」


唯は鉄也に嫉妬していた。歩が自分以外に、赤の他人である鉄也のことが慕うのが気にいらなかったからである。だから唯は、歩にきつくいったのである。


「それにね唯お姉ちゃん。歩が女の子にされてから、鉄也お兄ちゃんは、歩がイジメられないように、歩をまもってくれるから。唯お姉ちゃん、そんなことをいわないで……」最後のほうになると、歩は泣きながらいった。 

「歩ちゃん、わたしが悪かったから泣かないで。ちょっと柴咲くんに嫉妬したから、ちょっとイジワルをいってしまったの。だからゴメンね歩ちゃん」唯は歩にあやまった。歩は泣くのをやめた。歩の顔は、ナミダで化粧が落ちていた。唯は、歩の顔をハンカチで拭いてから、化粧をなおした。


「歩ちゃんがこんなに泣くなんて、柴咲くんが見たらどう思うかしら」歩の化粧をなおしながら、唯はいった。

「柴咲くんは、歩ちゃんのことが好きになるのではないかしら」


「そんなことないよ。だって、歩も鉄也お兄ちゃんも男の子なんだから……」


それを聞いた唯は、おもわず笑ってしまった。歩は、なぜ唯が笑っているのかわからなかった。


「だって歩ちゃんの姿は女の子なのよ。歩ちゃんのことを知らない人が見たら、誰も男の子とは思わないから」


「そうなの、唯お姉ちゃん……」


「そうよ歩ちゃん。それから章子先生に聞いたけど、柴咲くんが歩ちゃんのことをカワイイといってたんだって」


「唯お姉ちゃん、それほんとなの。鉄也お兄ちゃんが歩のことをカワイイといってたの」歩の顔は明るくなった。

歩の顔は、それは恋する女の子の顔だった。


「やっぱり、嫉妬しちゃうなぁ……」


「唯お姉ちゃん、なにかいった」


「ううん、なんでもないわよ歩ちゃん」




楽しかった時間は、あっという間にすぎた。

歩と唯は、家に帰るためバスに乗った。

帰りのバスの中は、ほとんど人がいてなく、座ることができた。歩のとなりでは唯が座っていたが、唯は寝ていた。

服を買えなかったが、唯といっしょに遊んだことに、歩は楽しかった。唯の寝顔を見た歩は、唯にありがとうといった。

第十九話を読んでくれてありがとうございます。やっと話の半分ぐらいまでいったのですけど、今の仕事が忙しくて更新が遅れるかもしれません。感想/評価の返事が遅れるかもしれません。でも、かならず返事を書きます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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