第十八話:とても変わった店。
「歩ちゃんごめんね。ちょっと五階で、その……もめちゃて……」唯は歩にあやまった。
迷子センターからでた歩と唯は、唯が騒ぎを起こしたのでデパートを出た。
「でも、歩ちゃんはわるくないから。歩ちゃんがお姉ちゃんを心配してさがしたのに、逆に迷子になったけど……」いいわけをしてる唯に、歩はもういいよといった。
「だって唯お姉ちゃんは、歩のためにしてくれたのだから……。お姉ちゃんはわるくないよ」逆に、歩は唯をなぐさめた。
「歩ちゃんにそういってもらえて、お姉ちゃん、うれしいわ。ありがとう歩ちゃん」
歩と唯が、駅前のほうにいくと、駅前のからくり時計が正午の時間を告げた。
「そうだ。ねえ歩ちゃん、おなか空かない」
「もうお昼だからね。唯お姉ちゃんは、この辺りは詳しいの」
「そうでもないけど……。友達が、おもしろい店が駅前のうら通りにある、と聞いたことがのよ。そこでお昼ごはんにしましょう」
ふたりは、駅前のうら通りに来たが、店はなかなか見つけられなかった。
「えっと、どこだったかなぁ……。ちょっとまってね歩ちゃん。電話で聞いて見るから」唯は友達に目当ての店を電話で聞いた。「……なに、コンビニを左に曲がり、郵便ポストが見えたら、ちょっと古い感じの店があるのね。……わかったありがとう。じゃまたね」
電話を切ると、ふたりはコンビニをさがした。
ふたりは教えられたとおりにいくと、コンビニが見つかった。
「このコンビニを左にまがると、あの郵便ポストの……」唯は、教えられた店を見た。声がでなかった。
「唯お姉ちゃん……、これって……、ほんとにお店なの……」歩も声がでなかった。
その店は、今にも崩れ落ちそうだった。唯は道を間違えたと思ったが、友達に教えられたのは、どうやらこの店のようだ。
「たしかに、おもしろい店よね……。開いてるかどうかは知らないけどね」唯は店のドアを開けた。
「お帰りなさいませ。お嬢様」メイド服のウェートレスの出むかえに、目が点になる歩と唯。
唯が、友達に教えられた店はメイド喫茶だった。
「お嬢様、こちらのお席にどうぞ」ウェートレスは席を案内した。
ふたりが席につくと、唯の電話が鳴った。唯は電話をとる。
「もしもし、……びっくりしたわよ。はいるなり、お嬢様だもの。……エッ、なに、オムライスがオススメだから、それを頼むのね……、わかったわ。じゃあまたね」唯が電話を切ると、ちょうどタイミングよくウェートレスがメニューをもってきた。
「お嬢様。お決まりになりましたら、このベルを鳴らしてください」ウェートレスが去っていくと、ふたりはメニューを見た。
唯はオムライスを、歩は野菜カレーを食べることにして、ウェートレスに注文をした。
「あのう……、当店のカレーは、大人ようになっていまして……」ウェートレスはいった。
「そうなの。歩ちゃん、どうする」
「でしたら、お子様ランチはいかがでしょうか」
「じゃあ、それをお願いします」
「お嬢様。オムライスとお子様ランチでよろしいですね」ウェートレスは、注文を繰り返すと、厨房にはいった。
「どうしたの、歩ちゃん」
「唯お姉ちゃん。だって……、なんでお子様ランチをたのむのよ」歩は、不機嫌そうにいった。
「それは、ウェートレスさんに、歩ちゃんが小さな女の子に見られたからよ。それに、歩ちゃんが迷子センターにいたとき、そのパンダのぬいぐるみに話しかけたんだって」
「なんで、唯お姉ちゃんは知ってるの」
「デパートの店員さんに教えてもらったからよ。ぬいぐるみに話しかける歩ちゃんを見て、かわいかったと店員さんがいってたわよ」
「そんなぁ……、はずかしいとこ、見られたなんて……」
「そんなことないわ。歩ちゃんは、女の子になりきっているのよ」
「そうかしら……」歩はしおらしくいった。
その仕種が、歩をますます女の子らしく見えるのだった。
「お子様ランチのお嬢様。お待たせしました」ウェートレスが、歩が頼んだお子様ランチをもってきた。
「ワアー、かわいいー」お子様ランチを見て、歩はおもわず声をだした。
「これが、お子様ランチのオマケでございます」ウェートレスの人形をもってきた。オマケの人形を見て、歩は困った顔をした。その人形は、あまりにもかわいくない顔をした人形であった。
「ありがとうございます……」とりあえず、歩はウェートレスに礼をした。
ウェートレスが席を離れると、歩は唯に、これどうしようといった。
「とりあえず、家にもって帰りましょ。この人形、棄てたら呪われそうだわ」オマケの人形を見て唯はいった。
「お嬢様、お待たせいたしました。当店ご自慢のオムライスでございます。以上でよろしかったですか」ウェートレスがオムライスをもってきたが、オムライスの上には、ケチャップがかかっていなかった。
「ちょっと、オムライスになにもかかってないけど……」
「お嬢様。ケチャップでしたら、お嬢様の目のまえでおかけしますので」ウェートレスがいった。エッ、と唯はいった。
「当店では、オムライスの上でケチャップでイラストを描くサービスをしております。イラストはどのようにいたしましょうか」
「どのように、といわれてもね……。じゃあ、あなたにお任せするわ」
「お嬢様わかりました。では、私のイチ押しのイラストで……」ウェートレスはオムライスにイラストを書いたが、そのイラストはヘンなイラストだった。
「お嬢様、いかがでしょうか」ウェートレスが万遍の笑みをうかべていった。
「……ウウン、いいんじゃないかなァ……。歩ちゃんはどうおもう」
「……歩も、ウェートレスのお姉さんのイラストは、個性的だとおもうよ」
「ありがとうございます。ではお嬢様。ごゆっくり召し上がるください」
ウェートレスが去っていくと、唯はオムライスを一口食べた。それから、唯はひとこももしゃべらなった。
「オムライスとお子様ランチで、合計は二千三百円でございます。ありがとうございました。お嬢様のお出かけです」ウェートレスに見送りされた歩と唯。店から離れると、唯は歩にいった。
「口直しに、駅前にあるハンバーガーを食べましょ」
これを書くために、初めてメイド喫茶というのに行きました。本文のとおり、ほんとにお嬢様や旦那様といってましたよ。感想/評価があればよろしくお願いします。