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第十二話:放課後。章子先生の質問。

恭子は職員室につくと、歩が三年生たちにかこまれていじめらるて鉄也に助けられたことを章子にいった。

「それで歩ちゃんは、鉄也に離れようとしないの」


「そうなのよ先生」


「放課後、歩ちゃんと柴咲くんにくわしく聞かなくてはいけないわねぇ……。滝沢さんもいっしょに放課後残ってね」


「エッ、わたしも残るのですか」


「当然でしょ。もとはといえば、滝沢さんが原因なのよ。山口さんも残るようにいっといてね」




放課後になって、歩と鉄也と恭子と志保は、教室で章子がくるのをまっていた。

「先生おそいわねぇ」


「イッタイ、なにをしてるんだ」


「恭子さんに柴咲くん。そんないいかたしなくてもいいのでは……」


「でも、なんで、山口も残るよう先生もいったのかなぁ」


「それは……、わたしも歩ちゃんを守ってあげなかったから……」


「そうだったのか……」鉄也がいった。

鉄也は歩を見た。歩は、章子に、また罰を受けるのではないかと、心の中でビクビクしていた。


「ここにいるみんなが、歩を守ってあげるから。心配するなよ」


「ほんとに……、ほんとに……、みんな、まもってくれるの……」歩は弱々しくいった。


「歩ちゃん、本当よ」


「そんな声を出さなくていいからね」


「ありがとう……。滝沢さんに山口さん……」


歩にあんなことをさせたばかりに、歩を女の子にさせた。

だから、罪悪感からか、鉄也はなにもいえなかった。


教室のドアが開いて、章子が入ってきた。章子のあとから、沙織と、歩に肩をぶつかりからんできた三年生も入ってきた。


「ごめんね桜坂さん。うちのまことが、迷惑かけて」沙織は頭をさげて歩にあやまった。


「私も倉本さんのお兄さんとはしらなかったわ」章子はいった。


「まさか、妹の知り合いとは知らず……」


「ちゃんとあやまるのよ。ほんと、うちのバカアニキときたら……」


どうやら真は、妹の沙織には頭があがらないようであった。

怒っている沙織を、なだめている真を見て、歩たちはあっけにとられた。


「お兄さんも反省しているし、倉本さんも許してあげたらどうかしら」


「まあ、先生がそういうなら……」沙織は、不満げだが、章子にしたがった。


「次は、滝沢さんと山口さんのことだけど……。あなたたちは、どうして桜坂さんから離れたの」


「それは、歩ちゃ、桜坂さんが、すぐに追い付くと思って……」恭子はいった。

「でも、桜坂さんは、倉本さんのお兄さんたちのグループに、イジメられたでしょ」


「イジメなんて、そんなことは……」


「真はだまってて」


いいわけをしようとした真に、沙織はきつくいった。章子は、沙織と真の兄妹を見た。ふたりは、章子を怒らせたらヤバイと思い、だまった。


「滝沢さんと山口さんは、明日まで反省文をレポート用紙に十枚かくこと」


「ゲッ、十枚も……」


「恭子さん、しかたないわね。だってわたしたちが悪いもの」


章子にいわれて恭子と志保は、落ち込んでいた。章子は歩を見た。歩は、今度はどんな罰をあたえられるのか、心の中でビクビクしていた。


「桜坂さん。男の子にもどりたくない」


歩は、章子がいったことに耳を疑った。


「どうなの」


「もどりたいです」


「そうよねぇ。でも、あんなことをしたのは、ほかにいるでしょう。だから、私に教えたら男の子にもどしてあげるから」章子は、そういって鉄也を見た。


「それは……」


「いったい、だれなの」


「それは……、やっぱりいえません」歩はいった。


「なんでいわないの。いわなかったら、男の子にもどれないのよ」章子は、なぜいわないのかわからなかった。


「だって、仲間を売るなんて、そんな卑怯なまねをしたくないから……」


「エライ。オマエはすごくエライぜ」真は、おもわず大声でいってしまった。

章子は、真を睨んだ。となりで沙織が、真の足を踏んだ。


「もう一度聞くけど、あなたのほかにだれかいたのでしょ。たとえば、柴咲くんとか……」


「鉄也じゃありません」歩はいった。

「鉄也は関係ないです」


「わかったわ。すべての責任は桜坂さんのしたことなのね。明日から、桜坂さんを、もっと女の子よりも女の子らしくするから」


そういって、章子は教室から出ていった。そして、鉄也は歩に詰め寄った。


「歩、なんでいわなかったんだよ。だれも恨まないから……」鉄也は、泣きながらいった。


「でもよう、あの子の気持ちを、オマエもわかってあげてもいいんじゃねえか」真は、鉄也にいった。「あの子は、どんな理由かしらねえが、自分を犠牲にしてまでオマエを売らなかったんだ。その気持ちをわかってあげてやれよ」


鉄也は、真のいった意味はわかっていた。でも、あんなことをしたことを歩だけが犠牲になるのが、鉄也はいやだった。


「だったらオレは、どうしたらいいんだ」鉄也はいった。

鉄也の問いに、答えたのは沙織だった。


「そんなのカンタンよ。今度は、あなたが桜坂さんをまもってあげればいいじゃない」

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