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ホーロー看板

作者: dawase86

以前、勤めていた会社で建設機械営業をやっていたとき

地方の出張がやたらと多かった。大体、週に1回ぐらい。

中国・四国地方が多くて、場所によっては一日に数本しか

電車が来ないという所もあって、スケジューリングに随分と

苦労したものだった。

自然豊かといえば聞こえはいいが、本当に自然以外は

何もないというところもあって、公共事業頼みという地域が

何と多いことかと、今でいう地方格差をしみじみと感じた

ものだった。


いつしか、電車待ちの間、街の雰囲気を楽しむかのように

ぶらぶらと駅周辺を歩くのが好きになっていた。

風が運んできてくれる季節の匂いを心地よく感じながらの

散策は一人旅のようで、いつか来たことがあるんじゃないかと

いう既視感覚とともに少年の日に還ったような懐かしさが

胸の奥から、こみあげてくるのだった。


地方でよく見たのが、廃墟となった木造の家屋にかかった

ホーロー看板だ。長い間、雨露に晒されたせいか、色あせ

さび付いた看板が、いつ来るとも知れぬ人を待ち続けていた。


アース製薬のホーロー看板は水原弘さんと由美かおるさん。

昭和45年に制作されたらしい。そのころは、きっと人が住んでいた

であろう家屋。楽しくて笑いが絶えない家族の夕食時間が

ぼんやりと頭に浮かぶ。列島改造論で日本国中、何となく浮かれて

いたら、突然の石油ショック。そして、高度経済成長の終焉。

地方で生活することが難しくなった人たちが都会へ出て、やがて

故郷のことを思う余裕もなくなって、廃墟となりはててしまったのか。

ホーロー看板は、街の移ろい、人々の生活を見続けてきたのだろう。


先日、近くのリサイクルショップで松山容子さんのボンカレー看板を

目にした。非売品だった。こういう場所で見るホーロー看板には

不思議と何も感じない。

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