おばあちゃん
掲載日:2026/02/07
「おい、ババア!さっさとしろよ!」
顔に入れ墨。大きな身体。鼻にピアスのお兄さんが私の背後でそう言った。
まあ、怖い。現金払いだから少しもたもたしただけじゃない。
「ごめんなさいね」と、私は言いながら手の内の五円玉を指で弾く。
パンっ、という空気が弾ける音がした。
指弾。
バチんっと音がして、五円玉が鼻ピアスのお兄さんの眉間に突き刺さる。
「ぎゃっ」と言い、お兄さんはのけぞり床に座りこんだ。
「あらあら、どうしたのかしら」と、私はオロオロとしながらお兄さんに手を差し出す。
お兄さんは、何が起こったかわからないようだ。
「大丈夫かしら?」と、私がこわごわとお兄さんに手を差し伸べると「うるせぇ!ババア!」とお兄さんは私の手を払いのけた。
お兄さんの手は手首の関節を外され、ぷらんっとしている。
「ぎゃあぁ」
可哀想に。迂闊に私に触れるなんて。わざとじゃないのよ。鍛錬による反射なの。
お兄さん。弱い者いじめなんて100年早いわよ。




