最終話「君が目覚めるまでのクエスト」
お読みいただきありがとうございます。
ついに完結です。
長きにわたる戦いの果てに、彼らが見つけた「秘密」とは。
そして、二人の関係はどこへ向かうのか。
最後まで、どうぞお楽しみください。
季節は巡り、4月。
校庭の桜が満開を迎える頃、私たちの日常は驚くほど穏やかに過ぎていた。
「おい二階堂! 早くしないと遅刻するぞ!」
「待ってよ九条! 走るの速すぎ!」
通学路。
新しい制服に身を包んだ九条が、先を歩いて振り返る。
その表情は、以前のような刺々しさはなく、年相応の少年の明るさを帯びていた。
あのアーカーシャ事件の後、組織は壊滅。
関連データは有馬の手ですべて消去され、私たちは「ただの高校生」に戻った。
……まあ、「ただの」とは言い難いけれど。
【賑やかな日常】
「おーい! 玲奈、ソウイチ!」
校門の前で、高木が手を振っていた。
その隣には、不機嫌そうな顔をした小柄な美少女が立っている。
「もう、うるさいわね高木。朝からテンション高すぎ」
「いいじゃんシノちゃん! ほら、笑顔笑顔!」
四宮詩乃。
身寄りのなかった彼女は、高木の実家に居候しながら、この高校に転入してきた。
運動神経は抜群だが、勉強は壊滅的。今は高木と私がつきっきりで教えている。
「おはようございます、皆さん」
生徒会長の腕章をつけた有馬が、校門で一礼した。
「遅刻ギリギリですよ。……まったく、平和ボケもいい加減にしてください」
「有馬くん厳しい~!」
私たちは笑い合いながら、校舎へと駆け込んだ。
戦場でのヒリついた空気はない。
でも、この賑やかで温かい時間こそが、私たちが命がけで守り抜いたものだ。
【放課後の屋上】
放課後。
私は九条に呼び出されて、屋上にいた。
夕焼けが街をオレンジ色に染めている。
フェンスに寄りかかり、九条が遠くを眺めていた。
「……平和だな」
「うん」
私は彼の隣に並んだ。
「ねえ、九条。覚えてる?」
「何をだ」
「このゲームには秘密がある、って話」
私は胸元の、新しいロケット(通販で買った安物だけど、お気に入りだ)に触れた。
あの日、砕け散ったお祖父ちゃんのロケット。
その中に隠されていたのは、世界を止めるための鍵と、私を守るための愛だった。
「このゲームには秘密があった。……残酷な実験、悲しい被験体たち、お祖父ちゃんたちの因縁」
私は空を見上げる。
「でも、一番の秘密は……私たちが、変われたことだと思う」
空っぽだった私。
孤独だった九条。
傷ついていたシノ、正しさに縛られていた有馬。
この理不尽なゲームがなければ、私たちは出会わなかったし、本当の自分を知ることもなかった。
【目覚めるまでのクエスト】
「……ああ」
九条が私の方を向いた。
「俺はずっと、眠っていたのかもしれない」
彼は自分の手を見つめる。
「『強さ』という鎧の中に閉じこもって、弱さを切り捨てて……本当の自分を見ないようにしていた」
九条の目が、優しく私を捉える。
「俺を目覚めさせてくれたのは、お前だ」
「……」
「お前が泣いて、怒って、俺の弱さを肯定してくれたから……俺は『九条蓮』として目覚めることができた」
九条の手が、私の手に重ねられる。
温かい。
もう、あの冷たい雨の日のような冷たさはない。
「ありがとう、玲奈」
「……うん」
私は涙をこらえて、微笑んだ。
「私こそ、ありがとう。……九条がいたから、私は自分が好きになれたよ」
「君が目覚めるまでのクエスト」。
それは、九条を救うための旅だと思っていた。
でも違った。
これは、私自身が「空っぽの自分」から目覚め、満たされた私になるための旅だったんだ。
そして九条もまた、私によって目覚めてくれた。
互いに響き合い、救い合う。
それが、私たちの「攻略法」だった。
【未来へのログイン】
「さて、と」
九条が手を離し(少し名残惜しかったけど)、背伸びをした。
「そろそろ行くか。みんな待ってる」
「うん!」
今日はシノの歓迎会を兼ねて、みんなで焼肉に行く約束だ。
もちろん、お会計は有馬(の株取引の利益)持ちで。
「行こう、パートナー」
九条がニカッと笑って、手を差し出した。
「うん、パートナー!」
私はその手をしっかりと握り返した。
ゲームは終わった。
でも、私たちの物語は終わらない。
この手の中にある温もりと、確かな絆を胸に。
私たちは、明日という新しいステージへログインする。
(完)
『このゲームには秘密がある』、これにて完結です!
長い間、玲奈と九条の冒険にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
ダメダメだった玲奈が成長し、最強の九条が人間らしさを取り戻す。
「ボーイ・ミーツ・ガール」の王道を、全力で駆け抜けることができました。
二人の未来が、これからも温かいものであることを願って。
そして、読んでくださった皆様の日常にも、素敵な「強運」が訪れますように!
最後まで応援、本当にありがとうございました!!




