第33話「始まりの場所、そして残酷な真実」
お読みいただきありがとうございます。
8つの鍵を揃え、ついに最終エリアへの扉が開きました。
そこに待っていたのは、九条の祖父・厳。
そして明かされる、玲奈の祖父との意外な関係。
二人の孫の出会いは、決して偶然ではありませんでした。
『Login Complete』
光の渦を抜けた先に広がっていたのは、「無」だった。
空も地面もない。
ただ、どこまでも広がる真っ白な空間。
「……何もないですね」
有馬が周囲を見渡す。
「いえ。……ある」
九条が真っ直ぐに前を見据えた。
白一色の世界に、ぽつんと一つだけ存在する木造の建物。
古びた道場だ。
九条の精神世界で見たものと同じ。いや、こちらが「オリジナル」だ。
「……やはり、ここか」
九条が迷わず歩き出す。私たちも後に続いた。
【最強の老人】
道場の縁側に、一人の老人が座っていた。
粗末な道着を纏い、目を閉じて腕を組んでいる。
武器は持っていない。ただの枯れ木のような老人に見える。
しかし。
「……ッ」
シノが小さく呻いて後ずさった。
「何よ、これ……近づけない」
肌を刺すような重圧。
そこに「在る」だけで、周囲の空間が歪んでいるような錯覚を覚える。
「……久しぶりだな、爺さん」
九条が静かに呼びかける。
老人がゆっくりと目を開けた。
「……遅かったな、蓮。だが、合格点だ」
被験体No.1。コードネーム『The Origin』。
九条厳。
このアーカーシャ・システムを作り上げた元凶にして、最強の武人。
【二人の祖父】
厳の視線が、九条の隣にいる私に向けられた。
鋭い眼光に射抜かれ、私は動けなくなる。
「……ふむ。二階堂の孫か」
「えっ……?」
「その首のロケット。……懐かしいな。幸一の遺品か」
「お祖父ちゃんの名前、知ってるの……?」
厳は鼻を鳴らした。
「知っているも何も。……私と二階堂幸一は、かつてこのシステムを共同開発した盟友だ」
「ええっ!?」
私が驚愕の声を上げる。
「私は『人間の限界を超える強さ』を求めてシステムを設計した。だが、幸一は違った。彼はシステムの暴走を恐れ、安全装置を組み込もうとした」
厳が私のロケットを指差す。
「それが『管理者権限』へのアクセスキー。そして、システムを完全停止させるための『停止鍵』だ」
「停止、キー……」
私はロケットを握りしめた。
お祖父ちゃんは、ただのお守りとしてこれをくれたんじゃなかった。
いつかこのシステムが間違った方向へ進んだ時、それを止める力を私に託してくれていたんだ。
「幸一は組織と決裂し、鍵を持って姿を消した。……まさか、その孫と私の孫がこうして出会い、ここまで辿り着くとはな」
厳の口元に、微かな笑みが浮かぶ。
「皮肉なものだ。だが……これも運命か」
【卒業試験】
「……爺さん」
九条が一歩前に出る。
「思い出話は終わりだ。……俺たちは、ここを終わらせに来た」
「ああ、分かっている」
厳が立ち上がった。
それだけで、ビリビリと大気が震える。
有馬のPCから警告音が鳴り響く。
『エラー! 測定不能! ……数値が桁違いです!』
「組織は腐った」
厳が吐き捨てるように言う。
「私の求めた進化ではなく、金儲けと殺戮の道具に成り下がった。……だが、私はシステムの中核となってしまった。自ら死ぬことも、壊すこともできん」
厳が九条を見据える。
「蓮よ。……私を超えろ」
「……!」
「私を殺し、この呪われたシステムごと破壊してみせろ。……それが、最後の試練だ」
悪役としての言葉ではない。
それは、弟子に引導を渡す師としての、命がけの願いだった。
【次元の違い】
「……上等だ」
九条がアサルトライフルを捨て、腰のナイフ――いや、いつの間にか具現化した「日本刀」を抜いた。
ここからは、純粋な武の領域だ。
「二階堂、有馬、シノ。……手出しは無用だ」
九条が低く告げる。
「これは、俺と爺さんの問題だ」
「……分かった」
私たちは下がるしかなかった。二人の間に割って入る隙間なんて、どこにもない。
「行くぞッ!!」
九条が地面を蹴る。
速い。シノに匹敵する速度で間合いを詰め、渾身の一撃を振り下ろす。
キィィン!!
金属音が響き、九条の体が吹き飛ばされた。
「がはっ……!?」
厳は、一歩も動いていなかった。
刀を抜いてすらいない。
ただの「裏拳」で、九条の全力の斬撃を弾き飛ばしたのだ。
「軽い」
厳が冷徹に見下ろす。
「迷いを捨てた程度で、私に届くと思ったか。……死ぬ気で来い、蓮。でなければ」
ドォォォン!!
厳が軽く足を踏み鳴らすと、衝撃波で道場の床が爆ぜた。
「本当に、死ぬぞ」
ついに始まった最終決戦。
玲奈と九条の出会いは、祖父の代から続く因縁であり、託された希望でした。
しかし、No.1の強さは絶望的。
「私を殺せ」という願いに応えるためには、九条は神の領域に達しなければなりません。
次回、九条が倒れる!?
圧倒的な力の前に、玲奈たちはどう立ち向かうのか。
物語はクライマックスへ加速します!
「お祖父ちゃん同士の関係アツい!」「ラスボス強すぎ……」と思っていただけたら、
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