表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/38

第26話「砕かれた隠れ家と、震えるスピードスター」

お読みいただきありがとうございます。

精神攻撃を仕掛けてくるNo.8との決着。

そして、ついに現実世界で「組織」の暴力が牙を剥きます。

『……玲奈。置いていかないで……』

鏡の中の私が、母の声で、娘の声で、私を責め立てる。

『あなたが弱かったから』

『愛する資格なんてない』

私は耳を塞ぐのをやめた。

涙を流しながら、鏡の中の自分を真っ直ぐに見据える。

「……そうだよ。私は弱かった。空っぽだった」

認めるのは怖かった。でも、もう逃げない。

「でも、今は違う。……私を信じてくれるパートナーがいるから!」

私はロケットを握りしめ、鏡に向かって拳を叩きつけた。

「だから、あんたの幻覚には負けない!!」

パリィィィン!!

鏡が粉々に砕け散る。

同時に、私の心の迷いも霧散した。


【小さな迷子】


鏡が割れた向こう側に、黒いモヤのような影がうずくまっていた。

恐怖心を糧にしていた怪物の正体。

モヤが晴れると、そこには体育座りをして震える、小さな子供の姿があった。

『……こわかった……』

子供が掠れた声で呟く。

『……ずっと、ひとりで……こわかった……』

人を怖がらせていた彼自身もまた、暗闇の中で怯えていたのだ。

「……あなたも、怖かったんだね」

私はそっと手を差し伸べた。

「もう大丈夫。おやすみ」

子供が顔を上げる。その目には、安堵の色が浮かんでいた。

『……ありがと……』

子供は微かに笑い、光の粒子となって消えていった。

後に残されたのは、4つ目のカードキーだけ。

「……行こう」

私はキーを拾い上げようとした。

その時。


【現実の崩壊】


『――強制ログアウトを実行します!』

有馬の切迫した声と共に、視界がブラックアウトした。

「えっ、ちょっ……!?」

感覚が浮遊し、ガバッと目を開ける。

そこは、薄暗い隠れ家の天井だった。

ヘッドギアを外すと、有馬が血相を変えて叫んでいた。

「来ます! ドアから離れて!」

「え?」

ドォォォォォン!!

凄まじい爆音が鼓膜を叩いた。

隠れ家の分厚い鉄扉が、外側からの爆破で吹き飛んだのだ。

もうもうと立ち込める黒煙。

そこから、ガスマスクをつけた武装部隊が雪崩れ込んでくる。

そして、悠然と歩いてくる一人の男。

スーツ姿の巨漢。スキンヘッドに走る大きな傷跡。

「……ゲホッ、ゲホッ。……見つけたぞ、ネズミども」

保安部長、黒田。

モニター越しに見た「絶対悪」が、すぐそこに立っていた。


【最強の少女の崩壊】


「あ……」

私の隣で、シノが小さく息を呑んだ。

彼女の顔から、血の気が引いていく。

黒田がシノを見つけ、嗜虐的に口元を歪めた。

「よう、No.4。……いい子にしてたか?」

その声を聞いた瞬間。

「……ひっ!?」

シノがガタガタと震え出した。

彼女の脳裏に、忘れたい記憶がフラッシュバックする。

暗い独房。冷たい床。

『お前は犬だ。主人に逆らう犬は、躾けてやる』

殴られる痛み。蹴られる痛み。

『泣いて許しを請え。そうすれば、今日の分は許してやる』

何度も、何度も、繰り返された地獄。

「……あ、ぅ……」

シノの膝が折れ、その場に崩れ落ちた。

「ごめんなさ……い……ごめんなさい……」

あの最強のスピードスターが、ただの怯える子供に戻っていた。

「ハッ、相変わらず無様だな」

黒田が大股で近づき、シノの髪を掴もうと手を伸ばす。

「教育し直してやるよ」


【守るための拳】


ガシッ!

黒田の太い腕が、空中で止まった。

「……その汚い手を離せ」

割り込んだのは、九条だった。

「あぁ? 病み上がりのガキが」

黒田が鼻で笑い、腕を振り払おうとする。

しかし、九条は引かない。

「逃げるぞ、有馬! 二階堂!」

九条が叫びながら、黒田の鳩尾に膝蹴りを叩き込む。

「ぐっ……!」

黒田が一瞬怯むが、すぐに九条の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。

ドゴッ!!

「がはっ……!」

「九条!?」

体重差と、病み上がりの体。正面から勝てる相手じゃない。

「俺に構うな! 走れッ!!」

九条が消火器のピンを抜き、黒田の顔面に噴射した。

辺り一面が白い煙に包まれる。

「ちっ、小賢しい真似を!」

「今です!」

有馬が裏口のドアを蹴破った。

私はへたり込むシノに駆け寄った。

「立つんだ、シノ! 行くよ!」

「……無理……私……怖い……」

「私がついてる! あんたは私の友達でしょ!?」

私はシノの手を強引に引き、背負うようにして走り出した。


【狂気のドライバー】


「ハァ、ハァ……!」

裏路地に停めてあった有馬のワンボックスカーに飛び乗る。

「出します!」

タイヤを軋ませて急発進。

隠れ家から遠ざかる風景を見て、ようやく息をついた。

「……逃げ切れた?」

シノはまだ私の腕の中で震えている。

九条も口元から血を流して荒い息をしている。

ギリギリだった。

だが、安堵したのも束の間。


ヴォォォォォォン……!!


背後から、鼓膜をつんざくような重低音が響いてきた。

「……なんだ?」

振り返ると、漆黒のスポーツカーが猛スピードで迫ってきていた。

装甲車のように改造されたボディ。ボンネットからはみ出す巨大なエンジン。

「嘘でしょ……あんなの公道走っていいの!?」

運転席が見えた。

ハンドルを握っているのは、顔中を包帯で巻いた異様な男だった。

彼は私たちを見つけると、包帯の隙間から狂気じみた目を光らせた。

『ヒャッハァァァ!! 逃げろ逃げろォ! 潰し甲斐があるぜェ!!』

車のスピーカーから、割れた声が響く。

有馬がバックミラーを見て絶叫した。

「あれは……被験体No.6! コードネーム『Driverドライバー』です!」

「なんでゲームのボスが現実で車運転してんのよぉぉぉ!!」


隠れ家崩壊。

そしてシノちゃんの心が折れてしまいました。

黒田の暴力性と、現実世界での追跡。

物語のステージは、夜の公道へと移ります。


次回、No.6とのカーチェイス!

そして、震えるシノは再び立ち上がれるのか?


「シノちゃん可哀想すぎる……」「黒田絶対倒す」と思っていただけたら、

下にある【☆☆☆☆☆】マークで応援をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ