表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/38

第20話「鋼鉄の棺桶と、優しい巨人」

お読みいただきありがとうございます。

暴走する巨人を止める方法はただ一つ。

ステージギミック「巨大プレス機」の罠に誘い込むこと。

玲奈、九条、シノの連携プレーが始まります。

「作戦開始だ。……失敗したらミンチになるぞ」

九条の低い声がインカムに響く。

「分かってる! 私を誰だと思ってるの!」

私は蛍光ピンクのジャケットをなびかせて走り出した。

「最強の囮、二階堂玲奈よ!」

「誇らしげに言うことじゃないけどね!」

シノ(No.4)が呆れつつも、私の対角線上に展開する。


【死の誘導】


「こっちよ、筋肉ダルマ!」

私は瓦礫を拾い、巨人の頭に投げつけた。

カコン。

硬質な音がして、巨人がゆっくりとこちらを向く。

「■■■■■――――!!」

白濁した瞳が怒りに染まり、蒸気機関車のような突進が始まった。

ドシン! ドシン!

地面が揺れる。速い。あの巨体で、戦車のような速度だ。

「ひぃぃぃっ!?」

私はプレス機の真下――「処刑台」に向かって全力疾走した。

「九条! 援護!」

「任せろ!」

九条がアサルトライフルを連射する。

狙うのは巨人の目だ。

ババババッ!

「グゥッ……!?」

さすがの巨人も視界を塞がれては走れない。一瞬、足が止まる。

「シノちゃん、今!」

「遅い!」

赤い閃光が走る。

シノは巨人の懐に潜り込むと、その膝関節にガントレットを叩き込んだ。

「倒れなさいッ!!」

ドゴォォォン!!

ダメージは通らない。でも、物理的な衝撃は伝わる。

巨人の片膝がガクンと折れ、体勢が崩れた。

そこは、ちょうど巨大プレス機の真下だった。


【鋼鉄の重圧】


「二階堂ッ!!」

「いっけえぇぇぇぇッ!!」

私は操作盤の赤いボタンを、全体重をかけて叩いた。

ウィィィィン……ガシャンッ!!

安全装置が解除され、天井から数トンの鉄塊が落下を始める。

「■■……!?」

巨人が頭上の異変に気づき、立ち上がろうとする。

しかし、折られた膝が言うことを聞かない。

ズズズズズ……!

プレス機が巨人の背中に接触する。

「ガァァァァァァッ!!」

巨人が両腕を掲げ、落ちてくる鉄塊を支えようとする。

凄まじい力だ。油圧シリンダーが悲鳴を上げ、プレス機の降下が止まる。

「嘘……止めた!?」

私は戦慄した。数トンの圧力を、腕力だけで押し返している。

「■■■■■……!!」

巨人の全身から血管が浮き上がり、鉄骨のような筋肉が軋む。

彼は耐えているんじゃない。

生きようとしている。

その必死な形相は、怪物のそれではなく――ただの生への執着だった。


【パパの記憶】


その時。

極限の負荷の中で、巨人のポケットから何かが落ちた。

ヒラリ、と舞ったそれは、一枚の古びた写真だった。

「……あれ」

私は目を凝らした。

泥と油にまみれた写真。

そこに写っていたのは、作業着姿の優しそうな大男と、肩車された小さな女の子だった。

満面の笑みでピースサインをする親子。

『……解析完了しました』

有馬の沈痛な声が聞こえる。

『被験体No.2。本名、大山おおやまつよし。元・建設作業員です』

『難病の娘の治療費を稼ぐために、高額報酬の治験バイトに応募して……そのまま帰らぬ人となりました』

「……っ」

息が止まりそうになった。

彼は怪物なんかじゃない。

ただ、娘のために生きたかった、優しいお父さんだったんだ。

「ウゥ……アァ……」

プレス機を支える大山の口から、微かな声が漏れる。

視線の先にあるのは、床に落ちた写真だ。

「……マ……リ……」

娘の名前だろうか。

彼の白濁した瞳から、一筋の涙が伝い落ちる。

もう限界だった。彼の腕がプルプルと震え、膝が砕ける音がする。

これ以上は、苦しませるだけだ。

私は叫んだ。

「もういいよ! もう頑張らなくていいよ、お父さん!」

その言葉が届いたのか。

大山が、ふっと力を抜いた。

彼は最後に、写真に向かって優しく微笑んだように見えた。


ズドォォォォォン!!


轟音と共に、プレス機が完全に接地した。

工場の床が抜け、土煙が舞い上がる。

HPゲージが消滅し、システム的な電子音が鳴り響いた。

『TARGET DESTROYED』


【二つ目の鍵】


プレス機が上がり、そこには何も残っていなかった。

ただ、光の粒子と共に、一枚のカードキーと、あの写真だけが残されていた。

私は歩み寄り、写真を拾い上げた。

「……ごめんなさい」

私は写真を胸に抱き、深く頭を下げた。

「……行くわよ」

シノが背を向けたまま言う。

その声は少し震えていた。

「ここにいたら、また気が滅入るわ」

「……うん」

九条が私の肩に手を置く。

「進むぞ、二階堂。……終わらせるために」

「うん」

私は涙を拭い、顔を上げた。

これで鍵は二つ。

でも、その重みは物理的な重さの何倍もあった。

私たちは、彼らの無念も背負って戦っているんだ。

「おやすみなさい、お父さん」

私は瓦礫の山に一礼して、廃工場を後にした。


No.2『バーサーク』編、完結です。

言葉も通じない怪物でしたが、その心には最期まで家族への愛がありました。

玲奈にとって「親子」というテーマは、30歳編を経た今、より深く刺さるものになっています。


さて、これで2つの鍵を入手しました。

次に待ち受けるのは、打って変わって「頭脳戦」の世界。

パズルとハッキングが支配する、電子の迷宮です。

いよいよ、参謀・有馬の見せ場がやってきます!


「辛いけど良い話だった……」「有馬回、期待!」と思っていただけたら、

下にある【☆☆☆☆☆】マークで応援をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ