第17話「即席チームと、見えない死神の攻略法」
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かつての敵、No.4との共闘。
凸凹な即席チームが、姿なきスナイパーに挑みます。
そして、その戦いの果てに見たものは……。
「勘違いしないでよね」
瓦礫の陰で、No.4が腕を組み、私をジロリと睨みつけた。
「あいつ(No.5)は私の獲物。あんた達が邪魔で、囮としてなら『使える』から手を組むだけ」
「うわぁ……」
私はドン引きした。典型的なツンデレだ。教科書に載せたいレベルだ。
「……いいだろう。利害は一致している」
九条は淡々とアサルトライフルのマガジンを交換した。
「でもさー、この子、絶対あとで裏切るタイプじゃない?」
私がヒソヒソと九条に耳打ちすると、No.4の猫耳のような飾りがピクリと動いた。
「聞こえてるわよ! あんた、動きはトロいくせに運だけはいいのね」
「それ褒めてる? 貶してる?」
「……『使える』って言ってんのよ」
「素直じゃないなぁ」
「う、うるさい! 次バカなこと言ったら撃つから!」
顔を赤くして怒るNo.4。
九条が呆れたようにため息をついた。
「……お前ら、仲良いな」
「「良くない!!」」
私とNo.4の声が綺麗に重なった。
【三方向作戦】
『……作戦を伝えます』
インカムから有馬の冷静な声が響く。
『No.5は射撃後、必ず3秒以内に狙撃ポイントを変えています。正面から近づくのは不可能です』
『ですが、射撃の瞬間だけは位置が固定されます』
「つまり?」
「お前が走って撃たせろ」
九条が私を指差した。
「また囮!? 私の命、軽すぎない!?」
「大丈夫だ。お前なら当たらない」
九条の謎の信頼が重い。
「作戦はこうだ。二階堂が走って射撃を誘発。俺が弾道から位置を特定し、制圧射撃で足止めする。その隙に……」
「私が突っ込む」
No.4が不敵に笑い、巨大なガントレットをガシャンと鳴らした。
「私の速度なら、2秒で懐に入れるわ」
「決まりだな。……行くぞ」
【強運のショートカット】
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
私は再び、蛍光ピンクのジャケットを翻して大通りを爆走した。
「こっちよヘボ砂ァ! 当ててみなさいよー!」
ヒュンッ!
即座に風切り音が耳元を掠める。
「ひいっ!?」
「2時の方向、ビルの4階!」
九条が叫び、アサルトライフルを連射する。
ビルの窓ガラスが粉砕され、土煙が上がる。
「遅い!」
その隙を見逃さず、No.4が赤い残像となって疾走した。
速い。目にも留まらぬ速さだ。
しかし。
ダァァァン!!
No.4の進路上の地面が爆発した。
「チッ、弾幕が厚い!」
No.4が舌打ちして急停止する。
敵もさるもの、接近を許さない正確無比な連射だ。
「嘘でしょ、あのチビちゃんでも近づけないの!?」
私は焦って足をもつれさせた。
「あっ」
ガレキに足を取られ、体が宙に浮く。
また転ぶ!
私は身構えたが、衝撃は来なかった。
ズボッ!!
「え?」
私の体は、地面にぽっかりと空いていたマンホール(あるいは崩落した穴)に吸い込まれていった。
「に、二階堂!?」
九条の叫び声が遠ざかる。
【地下からの奇襲】
ドスンッ!
「いったぁ……」
私はお尻をさすりながら起き上がった。
そこは、埃っぽいコンクリートの通路だった。
「……地下鉄の跡?」
薄暗い通路が奥へと続いている。
『部長! 無事ですか!』
有馬の声が響く。
「うん、なんとか。また転んじゃったけど」
『いえ、お手柄です! マップデータを確認しました。その通路、敵が潜伏しているビルの真下に繋がっています!』
「……マジ?」
私は天井を見上げた。
「ここを通れば、撃たれない?」
『はい! 完全な死角から、敵の背後を取れます!』
「っしゃ! ラッキー!」
私は通路を猛ダッシュした。
これこそが私の真骨頂。強運という名のショートカットだ。
地上では、激しい銃撃戦が続いていた。
No.4と九条が釘付けにされている。
No.5の注意は完全に二人に向いている。
私はビルの地下から階段を駆け上がり、4階のフロアに躍り出た。
そこには、窓際で巨大なライフルを構えるギリースーツの背中があった。
「……ばぁ! お待たせ!」
私は瓦礫を拾って投げつけた。
カコン。
「!?」
No.5が驚愕して振り返る。
スナイパーにとって、背後を取られるのは致命的な隙だ。
その一瞬の動揺を見逃す仲間たちじゃない。
「今だ! 行けッ!!」
九条の怒号が響く。
【小さな死神】
ドォォォン!!
窓を突き破って、赤い閃光が飛び込んできた。
「これで……終わりよッ!!」
No.4の全体重を乗せた飛び蹴りが、No.5の鳩尾に炸裂する。
「ガハッ……!?」
No.5の体が吹き飛び、コンクリートの壁に叩きつけられた。
HPバーが一気にゼロになる。
決着だ。
「ふん、手こずらせて……」
No.4が鼻を鳴らした、その時だった。
衝撃で、No.5のギリースーツのフードとマスクが外れた。
「……あ」
露わになったその顔を見て、私は息を呑んだ。
そこにあったのは、冷徹な兵士の顔でも、怪物の顔でもなかった。
まだ10歳にも満たない、あどけない少年の顔だった。
「……嘘。こんな小さい子が……?」
少年は力なく床に崩れ落ち、虚ろな瞳で私たちを見つめた。
その瞳に、一瞬だけ光が宿ったように見えた。
『……アリ、ガト……』
カサリ、と音がして、少年の体が光の粒子となって崩れ始めた。
「待って……!」
私は手を伸ばしたが、掴めたのは虚空だけだった。
少年は消滅し、あとには一枚のカードキーだけが残された。
静寂が戻った廃墟で、私は立ち尽くしていた。
「……救えなかった」
倒すことしか、できなかった。
カードキーを拾い上げる私の手が、微かに震えている。
(この子は、何年こうして戦わされていたの……?)
やりきれない思いが胸を締め付ける。
でも、最後の「ありがとう」という言葉が、彼にとっての解放だったと信じたい。
「……私も、同じだったかもしれない」
背後で、No.4がポツリと呟いた。
「え?」
振り返ると、彼女は寂しげな目で、少年が消えた場所を見つめていた。
「……なんでもない。行くわよ」
No.4はすぐにいつもの強気な表情に戻り、背を向けた。
「キーは手に入った。……さっさと次に行くわよ」
その背中は、どこか震えているように見えた。
FPS編、決着です。
玲奈の「強運」による奇襲が勝利の鍵でしたが、その結末はほろ苦いものでした。
被験体たちの正体。
それは、組織の非道さを物語っています。
しかし、これで「アクセスキー」の一つを手に入れました。
そしてNo.4との関係にも変化が……?
次回、No.4が正式に仲間に!
そして彼女の本名と、意外な「デレ」が見られるかも?
「悲しいけど熱かった!」「No.4ちゃん……」と思っていただけたら、
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