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第23話 午後の追憶

 今、私は完全に湯船にリラックスして浸かってた。


 和泉くん……間違いなく彼と真昼ちゃんは、いい (カップル) になるだろうな……


 そんなこと想像するたびに、胸の奥が変に痛む。何かに締め付けられるみたいな感覚。あの日、二人が手を繋いでるのを見てから初めて感じたやつだ。


 もしかして慧翔くんのことが……?


 考えただけで顔が赤くなった。


「違う違う違う……そんな風に見るわけないし。絶対ただの心配だから……そう、心配なんだ」


 ……………………


 誰に言い訳してるんだろう。


 私……私、和泉くんのこと (好き) なのかも。


 でも、それでも二人の間に割り込むべきじゃない。この気持ちがただの思い込みだとしても。


 まだ確信はない。この気持ちが本物か確かめたかったら……もっと時間が必要だ。


 今はどうすればいいかわからない。


 もう……真昼ちゃんが今日あんなこと言わなければよかったのに。


 * * *


「真希ちゃん、本当にビックリしたよ。まさか二人で住んでるなんて思わなかった。なんかもう、真希ちゃんは私の (ライバル) って感じだね、ははは」


 彼女の声はなんか切なくて、考え込んでるみたいだった。言葉は軽く装ってたけど、目は全然違ってた。


「違うよ、ライバルなんかじゃないってわかってるでしょ。私はあなたの友達だよ。必要な時はそばにいるから……ごめん、初めての友達だから、こんな時何て言えばいいのかわかんない」


 私は純粋にそう答えた。それを聞いて彼女は嬉しそうだった。


「ありがとう。時々、私たち本当に生き別れの (姉妹) みたいだよね……でもそれは置いといて、私より真希ちゃんの方が彼に好かれる確率高いと思うよ」


 その時、初めて心臓がドキッてなった気がする。


 想像するだけで、胸の奥が変に熱くて苦しかった……特に真昼ちゃんが私と彼が付き合ってるとこ見てる姿を想像すると。


 でもすぐに別の質問が来た。今度はからかうような口調で。


「ふふ〜、もしかして好きになっちゃう? やだよ、許さないからね。ははは」


 私も一緒に笑った。


「それは無理だよ……」自分にだけ聞こえるように呟いた。


 * * *


 思い出して疲れたようにため息ついた。でも時間を戻して避けることもできないし。


 湯船から出た。まだ湯気が空気中に漂ってる中で、髪を乾かした。頭がちょっとスッキリしたら、真昼ちゃんが持ってきてくれた今日の授業の (コピー) に集中できるかも。


 キッチンを通りかかったら、和泉くんがボーッとしてた。また何か考え込んでるみたいに。


 これ、真昼ちゃんに言うべきかな?


「和泉くん?――」


 あ……やばい。


 うっかり名前で呼んじゃった。


 彼はゆっくりこっち向いて、明らかに驚いてた。


「今何て言った、黒川さん? 俺の名前、呼んだ気がしたんだけど」


「忘れて忘れて忘れて!」


 恥ずかしすぎて、両手で顔隠した。そしたら彼が笑い始めた。


「気にすんなよ。ちょっと驚いただけだから」


 それを聞いてちょっと安心した。黙ってうなずいて、自分の部屋に向かった。


 絶対、私すごく変だって思われたよね……


 落ち着かないと。


 きっと一時的なものだ。


 たぶん気のせい。


 そう、そうに決まってる。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 冷静に思い返してみても、 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう思うと少しずつ落ち着いてきて、いつもの自分に戻れた。


 部屋に行って着替えた。もう恥ずかしがることなんて何もない。今は真昼ちゃんが集めてくれた (課題) に集中しなきゃ。


 その後はずっと机に向かって、静かに課題を解いてた。慧翔くんが優しくドアをノックするまで。


 その時にはもう数時間経ってて、どうやら夕食の時間だった。


「黒川さん、夕食できたけど……起きてるよね?」


 彼の声はカジュアルだった。でも、なんかちょっと不安そう。


「うん、ごめんね、約束なのに作らせちゃって。すぐ行く」


 それから彼はドアから離れていった。私は片付け終わって、部屋出て食堂に向かった。


 夕食は…… (カレー) だった。


 今ならこれくらい食べられそう。だってもう結構良くなったし……辛すぎなければいいけど。


「もう大丈夫なのか?」


 俺を見て、最初にそれ言った。

 今日、本当に心配させちゃったみたい。


「うん、もうだいぶ良くなったよ。看病してくれてありがとう。それに、迷惑かけちゃってごめん」


 お辞儀してお礼言った。彼、本当にいろいろしてくれたし。


「礼なんていいよ。俺がやろうと思ってやっただけだし。それに、一人で全部なんて無理だっただろ」


「────………」


 否定できなかった。

 だって、その通りだから。


「ほら、冷めないうちに食べようぜ」


 彼が待ってるテーブルに向かって歩いて、結局二人で黙って夕食食べた。


 ◇◆◇◆◇


 黒川さんと夕食食べてから、何時間も経ってた。坂本さんが俺を誘ってから、ずいぶん経った後で。


 まだ今日あったこと、全然整理できてない。まるで夢の中にいるみたい……それがいい夢なのか悪い夢なのかも、まだ決められない。


 ノックの音で、ベッドから起き上がった。


 黒川さんが、もう起きる時間だって知らせてるみたいだった。


 まだ半分寝ぼけたまま、ドアに向かって歩いた。


 開けたら、いつもの黒川さんがいた。


 なんか安心した。また普通に戻ったんだなって。でも俺の方は……


 めっちゃ眠かった。


 昨日の宿題終わらせて、やっと数時間しか寝れてなかったし。


 彼女はもう学校行く準備できてた。昨日の夜よりずっと元気そう。エプロンつけてて、右手に (おたま) 持ってた。


「おはよう、和泉くん。もう起きないと遅刻するよ」


 目こすって、眠気飛ばそうとした。


「おはよう、黒川さん。もう大丈夫そうだな」


 彼女は軽くうなずいて、何も言わずにキッチンに戻った。


 あんまり深く考えないほうがいいな。


 気にせず、学校行く準備しに行った。


 昨日の夜、彼女ちょっと変だったけど……熱のせいだったのかも。


 まあ、元気になったならそれでいいや。


 朝ごはん食べて、学校に向かって出発した。


 あんまり時間なかった。ていうか、時間通り着くために急いで部屋出なきゃいけなかった。


 今のところまだ間に合いそうだけど……彼女が本当に気にしてるのか疑問。全然そう見えないし。


 黒川さんは隣をゆっくり歩いてた。完全に自分の世界に入ってて、頭の中で答えの出ない問題解こうとしてるみたいに。


 歩くの遅すぎて、ちょっと近づいて何か聞こうかと思ったけど、結局声かけるだけにしといた。


「そんな遅かったら遅刻するぞ。考え事する時間、今じゃなくていいんじゃないか?」


 彼女、急に現実に戻って、驚いた顔で俺見た。でもすぐにちょっとバカにしたような表情に変わった。


「そんな簡単なことじゃないし――…まあいいや、後で考える。急がないとね」


 そう言って、すぐに歩くの速めた。


 最後には俺を追い越した。まるで俺が道端のカタツムリみたいに。


 ………………

 …………


 長い道のりだったけど、ギリギリ間に合った。


 でも、何人かの生徒が俺たちが一緒に来るの見て、ヒソヒソし始めた。


 黒川さん、全然気にしてないみたいだった。周りに誰もいないみたいに、普通に歩き続けた。


 結局、何もなく教室に入った。


 授業は普通に進んだ。いつもと変わらない感じで。でもなぜか、今日はなんか違う予感がしてた。


 ただの思い込みかもしんないけど。


 そう長く待たずに、昼休みになった。


 そして……坂本さんが現れた。輝くような笑顔で。


 三人で集まって昼ごはん食べた。不思議と誰も気まずそうじゃなかったけど……


「和泉くん、真希ちゃん、昨日話したことなんだけどね――…後で話すね、いい?」


 黒川さんと俺は、坂本さんの優しい笑顔にうなずいた。


 それから彼女は黒川さんの隣に座った。


「で? 今日は何作ってきたの? 味見していい?」


「え? あ、うん、いいよ。でも私も真昼ちゃんの (おかず) 味見してみたいな…すごく美味しそう」


 黒川さんの口調、急に変わった。


 なんか柔らかくて……自然で。


 まるで、普段の態度は俺といる時だけしか変わらないみたいに。


 なんか俺、彼女を怒らせるようなことしたのか?


 いや……何もしてないはず。


 もししたとしても、ちょっと寝坊したくらいだけだし。でも多分大丈夫だったはず…


 少なくとも、俺はそう思ってた。


 その間、クラスの他の奴らの視線が、いつの間にか俺たちのテーブルに集中してた。


 だって、学校で一番冷たいって言われてる女子二人が、昔からの友達みたいに話してるんだもん。そりゃ珍しい (ショー) だわ。


 たくさんの生徒が、彼女たちが笑ってるの見て驚いてた。


 一方で、俺は二人に一番近い存在でラッキーだなって思った。


 でも同時に……


 二人が放ってる変な雰囲気に、なんかちょっと孤立感も感じてた。

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