7.第一試験
試験会場の前で、レインは思わず足を止めた。目の前に現れたのは、赤髪の少女。その髪は長く、まるで燃えるような深い赤色で、美しく流れている。彼女の姿はどこか高貴で、周囲とは違ったオーラを放っていた。
レインは思わず声をかけてしまった。「あ、君も試験を受けるのか?」
少女はゆっくりとレインを見て、少し不思議そうな顔をした。「ええ、受けますけど…。あなたは?」
「僕も。」と、レインは少し恥ずかしそうに答えると、ふとその少女のことが気になり、思わず名前を口にしてしまった。「リリス・ヴィント伯爵令嬢だよね?」
その名前を口にした瞬間、少女の目が一瞬鋭く光った。「あなた、どうして私の名前を?」
レインはその反応に驚きながらも、少し照れくさそうに言った。「あ、いや、たまたま…。君の受験票が落ちていて、それを拾ったんだ。」と、レインはリリスの受験票を手渡した。
「これ、あなたが?」リリスは驚いた様子で受験票を手に取り、それから少し考え込み、レインを見つめた。「ふむ、なるほど…。あなた、なかなか面白い人ね。」
「ほんと、すみません…」と、レインは少し頭を下げた。
リリスは微笑んで言った。「気にしなくていいわ。むしろ、助かったわね。」そして、軽く礼をしてから言った。「じゃあ、また試験会場で。」
リリスはそのまま歩き去ろうとしたが、レインは少しその背を見送った。何か引っかかる気がしたが、それ以上のことは考えずに試験の受付に向かった。
試験会場の受付で、レインは列に並んでいると、受付の担当者が冷たく言った。「平民のあなたが、この場所に来るのか…。」
その言葉にレインは少し不愉快な気分になりながらも、冷静に領主からの推薦状を取り出し、それを試験官に差し出した。
試験官はそれを受け取り、書かれている内容を確認した後、目を見開いた。「こ、これは…領主からの推薦状!?」
試験官は急に態度を変え、驚きの表情を浮かべながら「失礼しました。推薦状があるのであれば、試験を受けることができます。」と、慌てて頭を下げた。
レインは少し面食らいながらも、「ありがとうございます。」と答え、試験の準備を整える。
その後、試験のスキル測定が始まった。リリスは最初に測定器に手をかけると、そのスキル測定器がすぐに反応し、表示されたスキル名は「韋駄天」と「炎神」だった。周りの受験生たちが驚き、ささやき声が上がる。「すごい! あの子、炎系とスピード系のスキルを両方持ってるなんて!」
レインは心の中で「2つ持ってるのか…すごいな。」と感心しながらも、ふと自分のスキルのことを思う。彼にはもっと多くのスキルがあり、彼女のスキルも持っていた。そのことを他の誰かに知られるのは少し恥ずかしかった。
そして、次にレインがスキル測定を受ける番となった。手をかけた瞬間、測定器が急激に反応し、予想以上のスキル数が表示された。レインのスキルの数はあまりにも多すぎて、測定器は耐えられず、破裂してしまった。
試験官は驚愕した表情を浮かべて「こ、これは…一体どういうことだ?」とつぶやき、周りの受験生たちも驚きと興奮の入り混じった表情でレインを見つめていた。
レインは少し照れくさそうに笑いながら、「すみません、ちょっと力加えすぎちゃいましたかね?」と軽く言ったが、試験会場は一瞬、静まり返った。